有線式ウィッチーズ ヘラります! 作:impossible
ブリタニアの南端に位置する島。
中世の城のような場所こそが、501統合航空戦闘団の基地だ。
その基地の指令室では、指令のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ以下3人のウィッチが向かい合っていた。
「えっ、新しいウィッチが来るんですか!?」
やや大げさに反応を示すのは宮藤芳佳。最近501に入った新人だ。
「そうよ。輸送機で来るらしいのだけど、ここに来るのは初めてみたいでね。2人には基地への誘導を頼みたいの」
「それでしたら私たちより坂本少佐やバルクホルン大尉の方が適任だと思いますけど……いいんですか?」
遠慮がちに問うのはリネット・ビショップ。宮藤よりも先に501へ配属されたが、彼女もまた新人である。
「ええ、2人もそろそろ飛行に慣れてきたでしょ?」
「はい! 飛ぶのって楽しいです!」
「もう、芳佳ちゃんったら……。私も慣れては来ました」
明るく笑う宮藤に苦笑するミーナとリネット。
「ならよかった。それで質問の答えだけどね、昨日の戦闘で予想以上に魔法力を消費してしまっているのよ。私もここを離れるわけに行かないから、頼れるのは2人だけなの。昨日の今日だからネウロイも出ないと思うけど、一応武装は揃えておいてね」
「はい、わかりました!」
「理由はわかりました。装備を整えてから出撃します」
「ありがとう。お願いね」
時は流れて空。
「リーネちゃん、まだ何も見えないよねー?」
「ええ、もう少しのはずなんだけど……」
合流地点付近にたどり着いた2人は周囲を探す。
晴れてはいるが雲は多く、肉眼での索敵は少々難しい。
それでも首を前後左右に振って目を配り続ける。
そうして捜索することしばし。
「あっ、今雲の向こうに何か見えたよ!」
「ほんと? 芳佳ちゃん」
「うん、あっちの方だと思う」
何かを見つけたらしい宮藤の示す方向、2人は空の一点を見つめる。
「んー、確かに何か動いているみたい。えーっと」
リネットは目に意識を集中する。魔法力を応用して双眼鏡のような効果を得るのだ。
「輸送型のJu 52? もしかしてあれがそうなのかも」
「ほんと? よかった~、無事に合流できそうだね」
対象を見つけたことで安堵の息を吐く宮藤。
しかし、その態度は直後のリーネがした報告で破られる。
「まって、芳佳ちゃん! 今レーザーが……やっぱり、ネウロイに襲われてる!」
「ええっ!? なら速く助けなきゃ!」
「そうだね……でも、私たち2人に出来るかな……?」
思わず弱音を出してしまうリネット。先日ネウロイを無事に撃破したとはいえ、今まで育ててきた自分への不信感が消えるわけでもない。
だが、そんなリネットの手を宮藤が包み込む。
「大丈夫! 私たちなら、2人なら出来るよ!」
「……そう、だよね。うん、行こう芳佳ちゃん!」
基地に援軍要請をした後、2人のウィッチは空を羽ばたいた。
◇ ◇ ◇
「うぐぅー! このビーム結構重いー!」
「頑張って芳佳ちゃん! このっ!」
私が芳佳ちゃんと輸送機の近くに駆け付けた時、まだ輸送機は大きな損傷を受けていないようでした。
パイロットの方がお上手で、ネウロイのビームを巧みに避けていたんです。
「輸送機のパイロットさん、こちらは501ストライクウィッチーズです! これより援護しますから、進路はそのままで現空域から離脱してください!」
私がオープンチャンネルで呼びかければ、向こうの方も返事をくれました。
『助かる、501のウィッチさんよ。こちらコールサインメビウスだ。ありがたい申し出だが、あのネウロイを2人でやれるかい?』
「それは……」
言われてネウロイに目を向けます。
輸送機を襲っていたネウロイは中型の翼竜タイプでしょう。コアを砕けば倒せるはずです。
でも……私たちには決定打が欠けています。
私のボーイズMk.Ⅰ対装甲ライフルでは手数が。芳佳ちゃんの九九式二号二型改13mm機銃では火力が足りないんです。
そもそもネウロイは数人のウィッチで飽和攻撃を行うもの。エースと呼ばれる人ならいざ知らず、ただのウィッチには倒せないものなんです。
それに芳佳ちゃんはシールドの展開に手いっぱいで。
私もネウロイに射撃はしていますけど、コアを撃ちぬけていないからすぐ再生されてしまっています。
でも。でも……!
「やってみせます、私たちはウィッチですから!」
「そうだよリーネちゃん!」
輸送機から私たちにネウロイのターゲットが移ったようで、こちらに攻撃を仕掛けてきました。
それを避けながら私たちは反撃します。
「私たちはみんなを守る! そのためにウィッチになったんだから!」
「はい、芳佳ちゃん!」
『なるほど、こりゃ将来有望なわけだ』
将来有望だなんて、そんな……。
心なしか輸送機の、メビウスさんは笑っているようでした。
『それなら尚の事30秒耐えて欲しいな。出来るかい?』
「出来ますけど……基地からの援軍はまだ時間がかかりますよ!?」
『心配なさんな。あたしだってウィッチなんだから』
「あっ……」
確かにミーナさんは新しいメンバーと言っていました。つまりウィッチが来るということで……でも、ウィッチの方が輸送機を操縦してるなんて思わないじゃないですか!
『とにかく、頼んだよ。お嬢さんたち』
メビウスさんはそう言って輸送機を飛ばし始めました。
「どうするの? リーネちゃん」
芳佳ちゃんが問いかけてきます。
メビウスさんがどれくらい戦えるのかわかりませんが……私たちがすることは変わりません。
「メビウスさんが来るにしろ、ミーナ中佐たちが来るにしろ今は耐える時です!」
「わかった、私はリーネちゃんを守るよ!」
やっぱり芳佳ちゃんのシールドはすごい。
あんなにたくさんのレーザーを受けてびくともしてないんだもん。
「大丈夫? 芳佳ちゃん」
「このくらいへーきだよっ」
「ありがとう、無理はしないでね」
それにしても、なんで昨日の今日でネウロイが来たんだろう?
ミーナ中佐は確かに最近ネウロイ襲撃の間隔が狭まっているって言ってましたし、これも何か訳があるのかな……。
今回の翼竜タイプのネウロイは大して珍しくないって聞いたことがあります。
でも私が今まで見てきたのはもっとこう……角ばった形のネウロイ。
もしかしたらメビウスさんを追いかけて別の場所から?
ううん……私にはこれ以上わからない。
ともかく、今は目の前のネウロイを!
「芳佳ちゃん、もうすぐ!」
「わかった!」
「28……29……30!」
30秒きっかり。
ネウロイの片翼が根元から吹き飛びました。
【■■■■■――――!】
甲高い悲鳴のような音。ネウロイの声。
「すっごぉい……」
「これ、メビウスさんが……?」
『その通り。よく耐えたな、ちびっ子! ここからは反撃と行こうじゃないか』
飛行機はもう豆粒くらいの大きさになっています。あの距離から狙撃を?
なんて射程距離……私より長い。
確実にバルクホルン大尉みたいなエースの腕です。
「あっ、でも再生してる!」
『コアを撃てなかったから仕方ないな。あのタイプは胸元にコアがある。あたしが削るから、2人はコアを撃って欲しい』
メビウスさんが言う間にも、ネウロイに何かの攻撃がされているようでした。
ネウロイはめったやたらにレーザーを撃っていて……あ、いえ。何か飛んでいますね。
ストライカー? なんでストライカーだけが?
ストライカーはウィッチが履かないと動かないはずです。単独で動いて、まして攻撃なんてできないはずですが……。
「メビウスさん、何か飛んでるんですけど……」
『気にしなくていいよ、こっちの武器だからな。それで頼めるかい?』
なるほど。
不思議も不思議ですが、とりあえずメビウスさんの言葉を信じます。
それに。
私たちに足りなかった決定打。メビウスさんが持っているなら、やれます!
「わかりました。芳佳ちゃん!」
「うん!」
胸のコアを撃つには下側に回りこまなくちゃなりません。
ネウロイも自分のコアが狙われているのをわかっているのか、翼と頭部からレーザーを放って来ます。
「リーネちゃんはぁ!」
芳佳ちゃんはそれを難なく受け止めて、むしろ押し返しています。
「ありがと、芳佳ちゃん!」
私も負けじと胸部目掛けて撃ちました。
1発、2発、3発。
そして。
「芳佳ちゃん、コアだよ!」
メビウスさんの言う通り胸部にコアが隠れていました。
「よーし、行こう!」
「うん!」
【■■■■――――!】
ネウロイも私たちを近づけたくないからか、抵抗が強まります。
頭と翼がより一層赤く輝きだして。
「ッ、芳佳ちゃん!」
今までよりも強い一撃が来る!
そう思って芳佳ちゃんに一旦止まるように叫ぼうとしますが……。
『恐れるな、進め!』
メビウスさんの声がインカムに響きました。
同時、ネウロイの頭と翼が白い欠片に散って。
一瞬のことで呆けちゃったけど、すぐメビウスさんの援護だって気づきました。
これで攻撃は発射されません!
「リーネちゃん、一緒に!」
「うん!」
芳佳ちゃんと顔を見合わせ。
考えていることは一緒だと思うと、ちょっと嬉しかったです。
そして芳佳ちゃんの有効射程まで近づいて、コア目掛けて2人で弾を撃ち込みました。
【■■■――――】
コアの砕ける音が響きます。
間もなくネウロイの黒い体は崩れ、白い欠片となりました。
数秒、その事実を受け止めきれずにいました。
でも、ネウロイを倒せたのは2回目です。
これはまぐれじゃなくて……芳佳ちゃんと一緒に上げた成果で。
わたし、ネウロイを倒せた……倒せたんだ。
芳佳ちゃんと一緒に……。
そう思うと、この嬉しさを表現せずにはいられなくて。
「やった……やったよ芳佳ちゃーん!」
「むぎゅっ……リーネちゃん、当たって……ふへへへ」
芳佳ちゃんと強く抱きしめあっちゃいました。
あの後、迎えに来てくださったバルクホルン大尉たちと無事に基地まで帰ることができました。
もちろん、メビウスさんの輸送機も。
「はっはっはっは! やるな宮藤、リネット! 護衛だけでなくネウロイも倒してしまうとは。2人も成長しているようで私は嬉しいぞ!」
「さっ、坂本さん! いた、痛いですよぉ!」
「お? そうかそうか。鍛え方が足りないのではないかな、はっはっはっは!」
「こ、今度は苦し……あ、でもこれはいいかも……」
「芳佳ちゃん……」
「むきーっ! 坂本少佐に抱きしめられるなんてけしからんですわ……!」
基地では坂本少佐に芳佳ちゃんがその……スキンシップをされたり。
そんな一幕もありました。
◇ ◇ ◇
基地の会議室。
501に所属するウィッチたちが集められていた。
眠そうな者、けだるそうな者、緊張する者、姿勢を正す者……各国から集められた少女たちは性格もさまざまだ。
「改めて紹介するわ」
そのウィッチたちを纏めるミーナの言葉を引き継いで、壇上のウィッチが一歩前に進む。
ややカールがかった栗色の髪を携えた少女。
身長は140cm弱と言ったところだろうか。ウィッチとしてはやや小柄だ。
ぶかぶかのカールスラント軍服を羽織り、ニーソックスと手袋で露出を隠している。
「ル=クルーゼ・ノア・マルセイユ大尉だ。マルセイユだと姉様と混ざるから、ルーかクルーゼと呼んで欲しい。それと、来る途中で護衛してくれた2人には感謝するよ。ありがとう」
「あ、ありがとうございます……?」
「こちらこそ助かりました、ありがとうございます……芳佳ちゃん、なんで疑問形なの……?」
「え? クルーゼさんちっちゃくて結構かわいらしい人なんだなって……」
「芳佳ちゃん!?」
「ふゥーははは! なかなか面白い子みたいだ。中佐殿、彼女たちは?」
「宮藤芳佳軍曹とリネット・ビショップ軍曹よ」
「軍曹であの腕か。中佐殿もなかなか鼻が高いのでは?」
「ええ、期待の2人だわ」
「なるほどね。ともかくよろしくお願いするよ。特にバルクホルン大尉」
「私か?」
宮藤が褒められて後方お姉ちゃん面をしていたバルクホルンは、突然水を向けられたことに困惑を示す。
「トゥルーデ、知り合いなの?」
そこにハルトマンは質問をするが。
「いや、知らんぞ。ハルトマンこそどうなんだ」
「トゥルーデが知らないのにわたしが知るわけないでしょ~」
「そりゃそうさ、あたしが一方的に憧れてるだけ。姉様からも話は聞いたけどね」
「……あの軍規違反、余計なことを喋ってそうだ」
「安心してほしいな、真偽は自分で確かめるから」
「
バルクホルンか意気消沈するのと入れ替えに、今度は坂本美緒が声をかけた。
「私はルーと呼ばせてもらおうか。貴官の豪快な笑い方、いい話ができそうだ。こちらこそよろしく頼むぞ!」
「ええ、少佐殿にそう言ってもらえるならあたしも嬉しいですよ」
「なぁっ!?」
「どうかしたか? ペリーヌ」
「い、いえ。なんでもありませんわ……」
「なぁー、大尉殿はそこの堅物と同じカールスラント人なんだろ? その割には結構緩そうだよな~」
バルクホルンの険しい目線を流しながら、崩した格好で問いかけるのはシャーロット・E・イエーガー。
「そう見えるかい? 確かに貴官の恰好について言う気はないし、規則も最低限守っていればいいとは思うかな。それに
「へ~、そういうことなら仲良くできそうだ」
勝ち誇った顔でバルクホルンを見やるシャーロット。
一方のバルクホルンはぐぬぬ顔をしていた。
「はい、挨拶はこのくらいでいいでしょう。皆さんも新しい仲間と仲良くしてくださいね。ルーさんは空き部屋を使っていただきます。荷物もそこへ」
「了解」
そうして顔合わせは済み、解散となる……のだが。
501のウィッチたちは口にせず、しかしあることを気にしていた。
(なんで変な仮面をつけているんだ……?)
小柄な体躯も相まってその存在は目立つ。
これは結構クセの強い子が来たようね……。
部隊の調整役であるミーナは内心、頭を抱えるのだった。
「見るからに残念賞だよぉ……」
まぁ約一名、まったく別のことを考えていたが。
■■■■■
案内された部屋。
荷物を置いてベッドに座る。
来たばかりだから当たり前だけど何もないなぁ。
まあそんなことはどうでもいいや。
「あはっ」
表情が崩れるのがわかる。
やっと会えた。
やっと会えたね、姉さん。
実に3年ぶりだ。
いきなり飛びつかなかった自分をほめてやりたいよ。
美人に成長しちゃってまぁ……。
でもいいんだ、これから時間はたくさんある。ゆっくり仲良くすればいい。
ル=クルーゼ・ノア・マルセイユとして。
そう、思ってたのにさ。
姉さんがいけないんだよ? 裏切るから。
エーリカはいい。ミーナさんも許すよ。ねぇねだってもちろんさ。
あたしは懐が広いからね。
でもさ。
でもさ!
ミヤフジは違うだろ! カールスラント人ですらない! 扶桑の人間だ!
なんでミヤフジを追っかけてるんだよ!
なんでミヤフジが姉さんの中にいるんだよ……。
知識でそうなるだろうとは思ったけどさぁ。
こんな、こんなポッと出の奴が姉さんを!
あたしの、あたしとねぇねのお姉ちゃんだぞ!
お前のじゃない! お前のじゃないんだ!
この。
こ、こ、こ。
「ぐふっ」
クソッ、今かよ。
ポケットに薬入れといて正解だった。
喉が熱いし頭も痛ぇ。吐き気もする。最悪だ。
フリスクみたいな箱から片手に薬をぶちまけて、口に突っ込む。
一個一個確かめてるのは面倒だからな。
「ふぅぅ……はぁぁ……」
数秒もすれば落ち着いてきた。
ベッドに寝転がって天井を見つめる。
「それにしても姉さんは腑抜けたかぁ?」
カールスラントの戦闘詳報は正確だ。誰がいつ弾を撃ったか、何発使ったか、どの方角からなどなど細かいところまで書かなきゃいけない。
ミヤフジやリネットだかの新米にそんな細かく書くことはできない。
だからあたしが書いた。もちろん、
それなのにあたしの正体に気が付かないのか?
確かに固有魔法は
こんなチビ、世界を探してもあたし位しかいないだろ!
姉さんなら気づけると思ったんだけどなぁ。
それで死人が目の前に現れた時の顔を見てやろうと思ったのに!
ま、それは後々に取っておくか。
今はそれよりも。
「ミヤフジ……」
オリ主、割とクズ
・ガンバレル
オリ主の使用機材、および武装。
端的に言えばSeedのあれ。
ストライカーにガンポッドをくっつけたゲテモノ兵器。
自分で飛びながらもガンバレルの空中制御をしなければならないので頭がおかしくなる。
曰く
「そもそも手足をなくしても戦えるようにするやつなんだから、人間はほぼおまけ」