引退してお先真っ暗のライスシャワーを買った。 作:エタノールの神様
競技が始まった。私とライスシャワーは馬であることから500メートル後ろからのスタート。なんと合計4500メートル。G1を3勝、3000メートル以上では負けなしのステイヤーとはいえ、引退馬にそれはきつかろう。ゆっくり、ゆっくり詰め寄ることにした。
小学生軍団はというと、白組が遅れている以外はおおむね飛ばしている。赤組青組はいかにもパワーが取り柄です!と言わん限りの親子がおそらくもっとも重いギアを回しているのだろう。スピードのわりに回転数が少ない。先頭をいく黄組は…あれはお父さんか?お兄さんじゃないか?
後で知ったのだが、黄組はたまたま自転車好きの4人が選ばれたらしい。その兄や姉も自転車好きらしく、第一走者から順番に保護者は高校自転車競技部部長→大学院女子自転車競技部副部長→前年度インターハイ覇者→最強の帰宅部だそうだ(自宅好きが含まれている気がしないでもない)。これを先に聞いておけばよかったと私は後悔した。
さて、競技の展開である。私としては第二走者にわたる前に先頭と60メートルくらいまで詰めておきたいと考えている。幸い小学生と保護者は35km/hほどしか出ていない。いや35km/hも出ていると考えるべきか。親の力があるとはいえ、小学生でそのスピードはすごい。なお競馬で言うところの大逃げの作戦をとる黄組…(ただ速いだけ)
ここでグラウンドの状態を確認する。少し湿っているところもあれば完全に緩んでいるところもある。前日にやっと雨が止み、これ以上延期できないので強行開催といったところもありとてもサラブレッドを招待する気があるとは思えない状態である。ついでに言うと自転車もきつかろう。
追いかけていくと白組が先頭の黄組と並んだり後ろに下がって青組赤組と並んだりしていたが、何やら話しかけているようだった。私は前に行きたがるライスシャワーに「今日は4500メートルあるからゆっくりいこう」と話しかけてみた。ハミを引くことも考えたが鞍下はレース経験豊富な元競走馬である。G1馬である。おいそれと素人がハミを引くわけには行かない。
すると何を思ったかライスシャワーは少し外に進路を変えた。よくみると内側はタイヤ痕で少々荒れている。なるほどそういうことかと納得して少し乱れた騎乗フォームを修正した。
第二走者へのバトンタッチ。それを後ろ100メートルほどから眺め、もう少し差を詰められるように祈る。
しかしライスシャワーは差をつめるどころか少しずつスピードを落とし始めた。怪我だろうか?私は少し不安になった。
しかしそんなことはなく差が200メートルまで開いたところで速度を持ち直した。その間に白組は先頭まで進み、競技、黄組と競り合っている。小学生なりに考えたのだろうか。保護者と話をしている様子が伺える。
レースは少しずつペースが上がっている。
第三走者に変わる。少しずつ黄組が大きく差をつけ始めた。これは不味い。さすがの素人でもこのままでは負けることが目に見えている。向こう正面、家族テントの目の前で、私はライスシャワーの首を押した。そろそろ仕掛けないと不味いぞ、と。
するとライスシャワーはじわじわと加速を始めた。ゆっくり、ゆっくりと差を詰めていく。黄組を見た。小学生の自主性皆無である。前の席の保護者が全力でこいでいる。
赤組、青組と抜かして白組と並ぶ。慈悲のない、大人げない加速で黄組に追い付かんとする。
しかし黄組は遠い。児童も漕いでいるが保護者が本気になっている。自転車があんなに速いわけがない。私はライスシャワーをさらに押した。
運動会終わって数日の後、教育委員会からある連絡があった。
「多数の保護者様から、『大人げない』『引退馬とはいえサラブレッドつれてくんな』というクレームが入っております。」
役場とは扱いの難しいものである。
ライスシャワーをみた。教頭先生からの差し入れのリンゴを咥えて自慢げに首をぶんぶん振っていた。
やったね、ライスシャワー。称号が一つ増えたよ。
PTA杯、一着。上がり3ハロン40.3秒。
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9月9日23:22、上がり3ハロンを38秒から40.3秒に修正。いろいろ脳内思考が足りませんでした。以後気をつけます。
今後のパートについて
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ライスシャワー(馬)パート
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ライスシャワー(ウマ娘)パート
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セイウンシャワー(ウマ娘)パート
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ヒトシオー(馬)パート
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