引退してお先真っ暗のライスシャワーを買った。

農閑期と雪とライスシャワー

たくさんの閲覧ありがとうございます。がんばります。

今回は雪とライスシャワーです。

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私の家がある地域はど田舎である。そのお陰で馬一頭飼っていても文句を言われないばかりか運動会に呼んでいただけたりするのだが、ど田舎故の問題というものもある。

私が住む集落には県道が通っているのだが、まともに整備されていないのでアスファルトの割れ目からかなりの草丈の雑草が生えていたり、竹が飛び出ていたり、一部崩落していたりする。ひとつだけトンネルがあるのだが、めちゃくちゃ硬いところを掘ったのでたった60メートルのために8年もかかり、予算不足でコンクリートで壁を作れず岩盤むき出しである。さらに舗装をあきらめて砂利が敷いてある区間もある。行政はこの道路を忘れてしまったのだろうか。

よってこの集落の住民は我々家族の所有する私有道路を通る他ないのだ。

しかしその道も冬になると雪に閉ざされがちになる。なぜならうちの機械は年代物と粗製乱造品と整備不良がいっぱい(車も例外ではない※即席馬運車を除く)。除雪用ブルドーザー(2トン)も例外ではなく、一昨年に酷寒であるにも関わらずオーバーヒートでエンジンが逝って以来倉庫で埃を被っている。昨年使おうとしたところ整備していなかったことが発覚、美浦トレセンで体調を整えてうちに来るライスシャワーが乗った馬運車が通れないかも知れないと大慌てしたものだ。(幸いにもあまり積もっていなかったので気合いで何とか除雪した)

そのライスシャワーであるが、ことしの冬は他の馬同様に放牧して雪遊び…とはいかなかった。

直したはずのブルドーザー、今シーズン八回目の使用で今度はドーザが外れたのである。

外れたならつけ直せばいいじゃない、そう思われた方に悪いお知らせです。

金属疲労と腐蝕で溶接部分が見事に崩壊しました。凍った路面で見事に滑って川にポチャンです。もう隣町の自動車屋は信用しません。

こんな整備不良のせいでライスシャワーは除雪に出動することになった。本来輓馬の仕事である。サラブレッドがする仕事ではない。しかしライスシャワーしかいなかったのだ…

とりあえずブルドーザーを修理に出すためにも除雪することにした。通れないと困るからね。仕方ないね。

なお使っているのは唐鋤を魔改造した除雪器具である。道の片側に雪を寄せるタイプである。

ライスシャワーはゆっくり、ゆっくり歩く。私はライスシャワーに過度な負担がかからぬよう、角度を変えたり深さを調整したりしている。…まあ調整するような深さではないのだが…

最近のクルマは床が低くなってきて、ちょっとの雪でもバンパーにつかえるようだ。だからこの程度でも除雪しなければならない。クルマといえばトヨタ勤めの中学の同期が「来年新しいクルマを出すんだがモーターというのはよくわからんな…」と言っていた。雪や雨でバッテリーが逝って大変なんだろうか…(のちの初代プリウスである)

たまクロスたちねこ一個小隊はこたつでまるくなっている。この前は肉食動物であることを忘れて蜜柑を食べていた。あの蜜柑は祖父がライスシャワーのために奮発して買ってきたお高い蜜柑だったような…。まあいいか。

昼過ぎにやっと迂回路、旧道含めて除雪を終えたのでライスシャワーにはご褒美に雪に埋められて糖度が高くなって「こんなのキャベツじゃねえ！」ってくらい甘いキャベツをあげた。見知らぬものだったのか最初は少し警戒している様子だったが、一枚葉をちぎって食べさせてみるとこれが気に入ったのかみるみるうちに一玉全部腹に納めてしまった。やっぱり馬の世界でも甘いものは正義なのだろうか。

午後はとりあえずブルドーザーを隣町のさらに隣町の自動車屋に持っていって修理を依頼した。なお自走してもらった。トレーラーがないのだ。許せアスファルト。

そして気づいた。帰る手段がない。ここから自宅まで40km。現在時刻午後五時。日が暮れるとたまーに鹿や猪が出る。熊は出てきたら困る。(冬に出てきたらそれは穴持たずと言ってとても狂暴なので困る。出てきたらライスシャワーと一緒に逃げる。尚ライスシャワーは先行馬…)

仕方がないのでポケベルを使って迎えを呼ぶことにした。しかし数字の語呂合わせでは理解して貰えなかったため、上杉暗号を使ったところ何とか理解して貰えた。私はこの時初めて携帯電話の必要性を感じた。お手頃なモデルが発売されたら買おう、そう決意した。幸いにも年収は給料、チキン投資あわせて3000万くらいある(チキン投資がうまく行ってる。)

1996年も終わりに近づいたとき、祝うべきことがあった。第一子誕生である。予定日は12月28日であったのだが、予定日から3日遅れての産声であった。3890gの比較的大きい男の子であった。

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