ハジカオいいですね…無性に書きたくなった。
感想、評価をお待ちしています!
第0話 運命のハジマリ
少女の眼前では大きな歓声の中で戦う、四本角のロボットの姿があった。
『さあ始まりました!ガンプラバトルVR、南陽バトルトーナメント決勝戦!』
広大な宇宙空間を飛び回るのは、金色のボディを持ち、肩に『百』と描かれたモビルスーツ『百式』を改良したもの。
『前大会優勝者、四十万選手の操る『百式・ジェット』に対抗するは…』
百式・ジェットを追いかけるのはメタリックブルーと白が目立つボディに、ボディと同じ青…そして黄色の2種のV字アンテナを持ったモビルスーツ。
その背中には赤と白の翼状のスラスターユニットがくっついていた。
『初出場ながら決勝戦まで上り詰めたルーキー、南雲選手!その相棒であるインパルスガンダムは元のカラーリングをベースに塗装されており、試合の都度使うバックパックを交換!その姿はさながらオリジナルの持つ『シルエットシステム』を思わせるギミックだ!!そしてこの赤と白の翼を持った名は………』
『セイバーインパルスガンダム!!』
「セイバー…インパルス…」
アナウンスの言葉を小さな声で復唱するのは、長い黒髪の少女。
「くっそ!このスピードに食らいつくとか、ほんとにこいつ初心者かよ!?」
百式・ジェットはビームライフルで攻撃するもセイバーインパルスは左腕のシールドで防ぎ、右手に握っていた剣をビームライフルに変形、応戦する。
「………次は、これ!」
セイバーインパルスは胸部に搭載されている2門の機関砲『MMi-GAU25A 20ミリCIWS』で百式・ジェットを牽制すると右手に持っていた実体剣を逆手に持ってすれ違いざまに切り裂く。
「これで…終わり!」
実体剣を左手に持ち変えると、セイバーインパルスは左腰に下げていた刀…『シロガネ』を引き抜き、スラスターが開く。
スラスターが開いたことで加速力が引き上げられ、セイバーインパルスは百式・ジェットを追い抜き…
次の瞬間、百式・ジェットは真っ二つになって爆発。
画面いっぱいに『YOU WIN!!』の文字が大きく表示される。
「………よおおおっし!!」
コックピット内部でセイバーインパルスのパイロット…『南雲ハジメ』は大いに叫んだのだった。
――――――――――
ガンプラバトル。
『機動戦士ガンダム』シリーズに登場するメカ『モビルスーツ』のプラモデルである通称『ガンプラ』を実際に操作して対戦するシステム。
かつてはプラネットコーティングと呼ばれる特殊な技術をガンプラに浸透させて現実のガンプラを操る『GPデュエル』が主流となっていたが、ガンプラそのものの破損などの問題を解決するために仮想空間にガンプラを出現させ、自分のガンプラを本来のモビルスーツの大きさにして乗り込むことができる『ガンプラバトル・ネクサス・オンライン』…通称『GBN』がガンプラバトルにおける主流となった。
しかし…ネットゲームというやや閉鎖的な環境になっていることが新規プレイヤー達の確保を難しくしてしまうといった問題も同時に発生してしまう。
それを解決するべく、かつてのGPDのように多くの人達にガンプラバトルを知ってほしいという願いから作られたもの…それが双方の長所をとった『ガンプラバトルVR』だった。
―――――――――
優勝の証とも言えるメダルと、ガンプラをしまうケースを持ちながら歩くハジメ。
「ふう…まさか優勝できるなんてね……ありがと、インパルス」
相棒に声をかけ、家まで帰るべく歩むが…
「あの、南雲ハジメ君…ですよね?」
「は、はい?」
後ろから声をかけると、一人の少女が立っていた。
長い艶のある黒髪に少し垂れ気味の優しげな瞳。
まだ幼さが残るため第一印象は『可愛らしい』だが、数年もすれば美しいという印象が強くなるであろう少女がそこにいた。
見る限り自分と同じ中学生のようだが、着ている制服は少なくともハジメの通う学校ではない。
「えっと…僕のこと、知ってるんですか?」
ハジメはこの少女と面識は無く、突然のことに困惑してしまう。
「あ…す、すいません!私、自己紹介もまだで………えっと…名前は『白崎香織』です」
黒髪の少女…香織は挨拶を交わす。
――――――――――
「そっか…こないだのあれ、見てたんだね…うわぁ………!!」
ハジメは近くの喫茶店で香織と改めて話をして、そこで彼女が自分を知るまでの経緯を聞くと顔を覆った。
数日前、香織は修羅場とも言える場所に遭遇した。
ある老婆とその孫と思わしき子供が不良に絡まれており、周囲は手を出せずにいたのだ。
その原因は子供が不良とぶつかった際に服を汚してしまい、それに対して激怒した不良が恐喝まがいの行動を子供と老婆に行っていた。
香織はその剣幕に怯えてしまい、動けなかったが…
偶然そこにいたハジメが『土下座』で不良達を止め、いたたまれなくなった不良達は大人しく帰っていったのだ。
「それは…お見苦しいところでした………」
ハジメにとって、美少女(しかも好みドストライク)に自分の土下座を見られてしまうという今すぐにでも月光蝶で消し去りたいクラスの黒歴史に悶絶していると…
「ううん。あの時の南雲君の行動を見て私、むしろ凄いと思ったよ」
「え…?」
香織は真剣な顔になって語る。
「私の幼馴染に、こういうトラブルに首を突っ込んでいく人が二人いるんだけどね…私、あの二人ほど喧嘩できるわけじゃないから、正直止めなきゃと思っても自分に言い訳してた。『どうせ誰かが解決してくれる』って…」
でも…と一度言葉を区切る。
「南雲君は喧嘩とか得意じゃない…そうでしょ?」
「う、うん…」
「それでも、見知らぬ人のためにちゃんと行動できた南雲君を見て、私は自分が恥ずかしくなった。言い訳をして逃げるんじゃなく、何があってもすぐ行動したいって思えるようになったんだ」
コーヒーカップを一度テーブルに置く香織。
「それを気づかせてくれた南雲君とお話したくて…でも、名前も何もわからなかったからね。それで、思い出したんだ…南雲君が『THE GANDAM BASE』の袋とガンプラの箱を持ってたこと」
そう。あの日ハジメがあの現場に遭遇したのは行きつけの模型店で入荷したばかりの最新ガンプラ『HGCE バスターガンダム』を購入するためだった。
「それで次の日にお店行ったら、南雲君の顔写真が今日のトーナメントの参加メンバーにあって…」
「それで、終わるまで待っててくれた…ってこと?」
香織は小さく頷く。
「あと…凄い綺麗だったよ。南雲君の………えっと、インパルス…だっけ?」
「う、うん…」
ハジメはケースをテーブルに置くと、そのロックを外して中に入っていたインパルスガンダムを見せる。
「これ…僕が最初に買った二つのガンプラのうちの一個なんだ…だから、勝ちたくて…色も塗り替えたり、色々工夫して…本当、勝ってよかった」
「うん…私、プラモのことはわからないけど、一つだけわかることがある」
香織はインパルスを壊れないようそっと手に取る。
「南雲君が、このガンプラにあったかい思いを込めたってことだけは…素人の私にも何となくわかる。それくらい綺麗にできてるよ」
その言葉にハジメは嬉しくもあり、そしてその優しい笑顔に胸の奥が一瞬だが強く鼓動を刻んだ気がした…
――――――――――
その夜。
ハジメは両親の用意してくれた祝勝会の料理を食べ終わったあとも上の空だった。
『南雲君が、このガンプラにあったかい思いを込めたってことだけは…素人の私にも何となくわかる』
あの時の言葉も、笑顔も、ずっとハジメの頭から離れない。
「…白崎…香織さんか」
自分のスマホに表示された連絡先を見て、ハジメは呟いた…
すると、メッセージアプリから通知が鳴ってハジメは驚きからスマホを落としそうになる。
「うわっ!?…って、白崎さんから?」
恐る恐るメッセージを確認すると…
『夜遅くにごめんね。良かったら今週の金曜日、私にも南雲君のやってるガンプラについて教えてくれない?』
「え………?」
突然の連絡に驚くハジメだが、ガンプラに興味を持ってくれた女の子ができたこと、そして出会ったばかりでこうして誘ってくれた香織にハジメは少しだけ嬉しく感じていた………
ガンプラ解説1 インパルスガンダム(ハジメ機)
ハジメの扱うインパルスガンダムのガンプラ。
オリジナルのインパルスと異なりボディ、肩の青部分と赤部分がそれぞれメタリックカラーに変更されている他、4本のアンテナは外側2本がメタリックブルーに塗装されている。
また、リアスカートの代わりに大型スタビライザーが取り付けられており、タイプの異なる装備を使っても安定して扱えるようになった。
その反面、従来のように腰にビームライフルを装備することが困難になってしまったもののハジメは特に気にしてない。