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「ぐっ………あ…!」
真っ暗な空間。他に生者の気配がない暗闇の中で南雲ハジメは完全に見えなくなった左目の痛みと骨がむき出しになった左腕の痛みに呻きながら倒れていた。
(どうして…)
全ては、数時間前に遡る…
――――――――――
橋の崩落の中でハジメは地面に叩きつけられるより先に、横穴から吹き出していた水の流れに飲み込まれた。
本来ならば地面に激突して転落死するはずが、その水流によってウォータースライダーの要領で流され、気が付くと真っ暗な川の中で目を覚ましたのだ。
「僕は………生きてるのか…?」
何とか川から出たハジメは体の節々の痛みと左目の激痛に顔をしかめながらも焚き火をして服を乾かし、衣服の一部を破いて左目部分に眼帯のように巻きつけるなどの応急処置を行い、脱出経路を探していた。
しかし…そこはハジメが想像していたよりも遥かに危険な魔境。
ハジメは偶然にも出会ってしまった白いウサギのような魔物(ただし、その大きさは中型犬並であり太い脚がその異常な脚力を現している)の襲撃を受け、左腕を骨折。
だが、彼の悲劇はこれだけに留まらなかった。
「っ…!!」
自分を圧倒したウサギの魔物『蹴りウサギ』が一瞬にして肉塊になり、眼前に現れた白い毛皮の怪物…この階層のボスである『爪熊』によって捕食。
ハジメはすぐに逃げようとするが、一瞬だけ脳内に『左腕を切断される未来』が見え、咄嗟に右に跳ぶ。
「ぐぅ………あああああ!?」
切断こそされなかったものの、ハジメの左腕は二の腕部分の骨が剥き出しになっており、ハジメは過去に味わったことのない激痛にパニック状態になる。
「く、来るな!来るなああああ!!!」
ハジメは無我夢中で拳銃を取り出し、残った2発の弾丸を放つも爪熊の皮膚に小さな傷を与える程度で大したダメージにはならない。
「う………うわあああああああ!?」
咄嗟にハジメは近くの岩壁に手を当て、逃げ道を作るべく錬成を発動。
「れ、錬成!!」
頼みの綱の武器のうちクロスボウは流されてしまい、拳銃も弾丸を全て撃ち尽くした。
残されたのは唯一まともに使える魔法ただ一つ。
「錬成!錬成!錬成!」
ひたすらに魔法を使い、ハジメは奥深くまで穴を作りながら後ろに壁を作り、逃げ続ける。
今彼の頭の中にあったのは、あの恐ろしい咆哮をあげる爪熊から逃げることだけ。
それだけを必死に考え………やがて魔力が尽きたのか、ハジメの意識は闇に消えた…
――――――――――
それからどれほどの時が経ったのか…
痛みに呻くハジメは気が付くと腕の痛みと出血が止まったことに気が付く。
「僕………生きてるの…?」
ハジメは辺りを見回して、ギョッとする。
何故なら、周囲には自分の血がベッタリと付着しておりどう考えても致死量の出血だったからだ。
どうして自分が生きているのか考えるハジメは、ここでもう一つの違和感に気が付いた。
「腕の傷が…治ってる」
骨が見えるほどの深い傷が跡も残らず治っていたのだ。
どうしてなのか気になったハジメは周囲を見ると、天井から垂れてくる小さな水滴に注目した。
「これが…?」
水源を調べようとハジメは錬成をかけ続け…そこから出てきたのはある二つの鉱石。
一つはサッカーボールより一回り大きいサイズの水晶のように透き通った鉱石で、どうやら水の出処はこの鉱石らしい。
「鑑定にも感知しない…でもこれ、前に図鑑で見た…」
ハジメの脳裏によぎったのは幻の鉱石と言われる『神結晶』。
歴史的に見ても最大級とされる秘宝で、自然界の魔力が数千年に及ぶ魔力を蓄積して誕生する鉱石。
その力は魔力貯蔵であり、その魔力が長い時間をかけて自然に液体化して流れる。
ハジメが先程から口にしていた水こそその魔力の液体であり、『神水』と呼ばれている。欠損部位を再生することはできないが、これを飲めば怪我も病も治癒出来る上、飢え死にすることもないと言われるものだ。
「でも…この鉱石は…?」
もう一つの鉱石はビー玉ほどの大きさしかないが、その石から溢れる底知れない力にハジメは引き寄せられていた。
しかし、ハジメの知識を持ってしてもこの鉱石の正体はわからず、彼はその鉱石を一度保管することにした………
その時
『グウウゥルルルル…』
「っ!?」
穴の向こうから聞こえる獣の唸り声。
あの爪熊が外にいる以上、ハジメはこの空間から出ることができなくなっていた。
(外に出たら…今度こそ殺される!)
あの時はなんとなく動きがわかったから切断こそされなかったが、次は腕一本で済むとは思えない。
あの魔物から感じた自分を『餌』としてしか見ていない目を思い出し、ハジメは壁に寄りかかって座る。
もはや、彼に戦う意思など残っていなかった。
(誰か………助けて…)
口にすら出す気力がない。
ハジメの思いは誰にも届くことはなかった。
――――――――――
あれから7日。
ハジメが持ち込んでいた食糧はとうに底を尽き、神水を飲むことで命を繋いでいた。
しかし、あくまでも神水の効果は服用したものの命を繋ぐだけで、空腹感を満たす力はない。死なない分、彼が感じる苦痛もより長く辛いものになっていた。
(どうして…どうして僕がこんな目に…?)
誰とも会話をすることのない空間で過ぎっていた疑問。
『このヲタ野郎が!お前なんか学校来たって何の意味もねえ癖によ!』
神水の力で鮮明になった頭が、より辛い過去を思い出させる。
『南雲。君が無理に香織達を模型部に勧誘なんかするから2人とも迷惑しているんだ!』
(うるさい………君に何の関係もないじゃないか)
過去の記憶の幻影に苛立ちの篭った視線を向けるハジメ。
そんな状態を抜けようと、ハジメは神水の服用をやめて死のうとする。
(もういい…こんなことなら、死んだほうが…)
――――――――――
それから三日。
飢餓感と目の傷の疼きに心を削られ続けてなお死ねないハジメ。
発狂すらできない苦しさに彼は必死にもがき苦しんでいた。
(まだ………死ねない………早く…死にたい……………死にたく…ない…?)
死を望む心と望まない心。
その二つがハジメの心の中でせめぎ合い、彼の考えももはや普通ではありえないものになっていく。
ハジメが奈落に落ちてから12日。
死にたいと思いながらも微々たる量の神水を口にしていたハジメだが、それでも到底効果が見込めないほどの量しか飲んでいない。
だが、その中でハジメの心に変化が訪れる。
生と死。二つを望む矛盾した心の中に真っ暗な感情が湧き上がってきた。
(なんで…なんで僕がこんなところで死ななきゃならない…?)
(神は…エヒトは僕達を理不尽に誘拐した)
(ウサギは僕を殺そうとした…)
(熊は僕を食おうとした…)
(…クラスメイトは、僕を裏切った…見捨てた…)
(やったのは誰だ………きっと、あいつしかいない…)
多くの憎しみの感情が止まることなく溢れ、ハジメの心をどんどん漆黒に染め上げる。
13日目。
(誰も来てくれない…)
(助けなんて求めても無駄だ…なら、どうする?)
(痛みも苦しみも、どうすれば消える?)
苦痛から解放されたいと望む思いが、全ての感情を壊していく。
憎悪に心を支配しているより、生き残ることを…それ以外のものを削ぎ落そうと考えるようになる。
「…『俺』はなにを望んでる?」
――――俺は生きることを望む――――
「それを邪魔するのは…誰?」
―――それは敵。俺にとって邪魔をする存在―――
「邪魔者…敵…理不尽を押し付ける全て…」
――なら、俺は何をするべきだ?――
「僕は………俺は…」
―「そんなの、決まっている」―
14日。
ハジメの心から余計な感情が消えていく。
神の理不尽に対する怒りも―――クラスメイトや魔物への憎悪も…
一緒に笑い合っていた仲間の顔も…
大切に思っていたはずの誰かの笑顔も…もう、どうでもいい。
俺は…生きたい。生きて元の世界に帰る。
それを邪魔する奴らは全て敵だ。
「敵は………全て殺す」
敵は殺す。
その明確な意思がハジメの頭を支配しようとしたとき―――――
ハジメのカバンから落ちたのは、小さな二つのケース。
何らかの拍子に落ちたのか、そのケースに視線を送ったハジメの脳裏に『あの日の記憶』が蘇る。
『不安な時、いつもこのエクシアをケースに入れて運んでたんだ。これさえあれば、ハジメ君の勇気を少しだけ分けてもらえる気がして』
月光の光に照らされた少女の笑顔が彼の記憶の中から蘇る。
「………ぁ…」
ハジメは無意識にケースを掴み、その中身を開いていた。
『お守り。明日の訓練、もし私が間に合わなくても、ハジメ君が無事に帰ってこれるように…』
「エクシア…フリューゲル…」
それは、少女との約束の証。
二人の絆のきっかけでもあった。
その中でハジメはケースの中から一通の手紙が落ちたことに気が付く。
[ハジメ君。この手紙に気づいてくれたかな?実は………直前までハジメ君が迷宮に行くのを止めようかずっと迷ってました]
[それでも、きっと君は戦うと思う…普段は大人しいけど、ハジメ君は一度決めたことは貫き通すってわかってるから]
そこに綴られていたのは、香織からのメッセージ。
[正直に書きますと、私はハジメ君のことがずっと前、最初に出会った時から気になってました。誰かの為に頑張れる、その強い心は私の憧れで…インパルスと空を飛ぶ姿が綺麗で、一緒にいるうちに、本当の気持ちに気づきました]
[文字にするだけじゃありません。何度だって言います。
私は、あなたが好きです。この世で一番、南雲ハジメ君が大好きです。もしこの手紙を読んだら、その返事は直接あなたの口から聞きたい…]
[いつだって待ってます。この手紙に気づいて、あなたの本当の気持ちを聞ける日まで…私はいつまでも待っています]
最初に出会った時、思えば既に好きになっていたのかもしれない。
一緒に学校に通うようになり、彼女の天然な性格に振り回されることもあった。
それでも、彼女と一緒に学校生活や部活をする日々は充実していた。きっと、あの日に会話をしなければこんな関係にはならなかったと思う。
「これ………」
ハジメは自分のケースの中に入れていた写真を取り出す。
去年、3年生が引退して新チームを結成したとき。
皆で撮った写真だった。
「大翔…」
小学生の頃からの友人。
GBNの世界に自分を連れ出してくれた、大切な親友。
「清水君…」
出会いはお世辞にも良いとは言えず、何度もぶつかりそうになった。
でも、今では大切な友達だと胸を張って言える。
「遠藤君…」
クラスの端で落ち込んでいた。
GVRでは正直やりすぎなくらい暴れて、でもそれが彼らしいと思えた。
「園部さん…」
弟のガンプラ作りを手伝って欲しいというところから始まった関係。
いつの間にか彼女もまた、仲間になっていた。
「八重樫さん…」
大翔が好きになった少女で、彼女の世話に何度なっただろうか?
その恩をまだ返せていない。
「香織…さん…」
写真の中の自分と腕を組むのは、誰より大切に思っている相手。
彼女の笑顔は何よりも力になり、彼女の悲しい涙はどんな痛みより辛かった。
――――――――――
気が付くとハジメの意識は真っ暗な空間の中にあった。
そして、目の前には鋭い目つきをした瓜二つの存在…もう一人の自分がいる。
『お前…正気か?なんで俺を受け入れない?敵は殺す。それが出来なきゃお前は破滅するだけだ』
もう一人の自分の言葉をハジメは真っ向から否定する。
「違う!例えそうしても、その先に何があるんだ!目の前の全てを壊して…大切な誰かの命も壊すだけだ!」
『それが甘いんだよ。その感情は必要か?情に絆されて戦う意思を切り捨てる…馬鹿のやることだ。この奈落で生き残るために俺を受け入れる。それが必要な変化だ』
もう一人の自分…まるで『魔王』のような雰囲気すら醸し出す自分に怯みながらもハジメは一歩も退かない意志を示す。
「そうかもしれない…でも、それで僕達は本当に幸せになれるのか?怒りも、苦しみも、喜びも、誰かを大切に思う心も!それを捨てて力だけ強くなるのなら、そんな力なんていらない…!」
「僕は…大翔や香織さん、みんなと一緒に地球に帰りたいんだ!!」
――――――――――
「うううああああああああ!!!」
ハジメは岩壁に頭を打ち付け、正気を取り戻す。
「そうだよ………忘れちゃいけない…」
思い出すのは、香織の最後の顔。
「泣かせたままで…いいはずないだろ!」
大切な少女の笑顔を見たい。
ただそれだけの思いが、少年の崩壊しかけた心をより強く、より強靭に、そしてより優しく造り変えた。
「僕は…必ずこの迷宮から脱出してやる!そして………」
ハジメは近くの岩壁に触れ、そこから一本の剣を錬成。
「もう一度…君のもとへ…!」
次回予告
悪夢を超えて強くなったハジメ。
極限の世界で彼の体もより強く生まれ変わり、そして…思いがけない力を手にする。
その力がもたらすのは幸福か、災いか…
次回、機動戦士ガンダムForce
第17話 力と種
新たな力で…突き進め、ガンダム!
ステータス紹介
園部優花 17歳 女 レベル:1
天職:投擲師
筋力:40
体力:40
耐性:35
敏捷:60
魔力:50
魔耐:50
技能:投擲術・短剣術・双剣術・暗視・先読・気配感知・水属性適性・火属性適性・火属性耐性・言語理解
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