「……その姿になってもやっぱり大きいなお前は」
何もかもが燃え盛り、生命の息吹が微かとなった大地に男は立っていた。とは言え、男は今を生きる生者ではない。かつて、この世界に生きていたかもしれない陰法師。汎人類史に置いては英霊と呼ばれる存在だ。だが、此処は異聞帯であり、人類史の介入を許していない妖精郷。座が存在しないこの世界に何故、英霊が立っているのか。
「バーゲスト。この馬鹿真面目が。妖精が許せないからって、何もお前が其方に堕ちる理由はないだろうに」
その剣はただの鉄で錬成されたもの。星が生み出したものでも、星に引けも劣らない伝承がある訳でもないただの剣。けれど、男の手には馴染む無二の相棒にして、彼女との思い出が宿った一振り。
「それがバーゲストの良いところでしょ?」
姿亡き声が響く。それに同意する様に、男の身体に宿る数多の騎士達が声なき声を上げる。男はそれに笑みを浮かべ、剣を天に掲げる。
「あぁ、そうだな!そうだとも!アドニスの言う通りだ。だから、我らはこうして集い一つとなったのだからな!獣の厄災、いや妖精騎士ガウェイン。そして、我らが愛しきバーゲスト!!この声が届いているかは分からないが、一つ問うぞ。助けは必要か!!!」
眼前に迫る黒き獣に男は問いかける。燃え盛る大地を歩き、全てを破壊していくその姿に理性が宿っているとはとても思えない。言語を理解するだけの知性が宿っているとはとても思えない。現に獣は足を止める事なく、大地を踏み締め進み続ける。
『ガァァァァァァ!!!』
立ち塞がる小さき騎士に獣は吼える。その叫びを聞きながら騎士は高らかに宣言する。一切の迷いなく、獣の眼を見ながら。
「分かった。騎士として、これ以上の蛮行は見逃せない。故に、お前を殺してでも止めるぞ!!我が名は、妖精騎士マシュー!!バーゲストに愛された騎士達の集合体の代表者にして、汎人類史で君が認めた騎士と同じ名を持つ者!いざ、参る!!!」
何故、彼がこの場にいるのか。それは、バーゲストに喰われてなお彼女が心配で留まっていた過保護な恋人達の魂と、愛しい妖精の叫びを聞いて大人しくしていられなかったから。奇しくも、汎人類史の者たちが英霊召喚なる下地を作ってくれていたから。英霊が居ない妖精郷でも、騎士の概念は存在していた事。そして、その騎士としてバーゲストが認めた者の名前がマシュであった事。それらの軌跡が極々細い可能性を辿り、彼をサーヴァントとして現界させるに値する結果となったのだ。
「うぉぉぉぉぉ!!」
ただ、愛しい者が泣く光景をこれ以上見たくない。そんな
そして、それは遥か遠い星見の天文台で。
「いたたっ!!バーゲスト、痛いって!」
「その程度ですか!もっと鍛え直す必要がありますね」
厄災も何もない、世界で隣で笑い合う。そんなありふれた当たり前の幸福な光景に繋がる……のかもしれない。
「私が食事を用意して差し上げます。それで力を付けてくださいね」
「ははっ、そりゃ楽しみだ」
サーヴァント:マシュー。クラス:セイバー。星1
妖精騎士バーゲストが愛した騎士達の集合体。人格として表に出ているのはマシュー、姿亡き声としてアドニスがいる。バーゲストが心配だからという理由で、カルデアまで来た愛のあるサーヴァント。