森近霖之助は魔法の森に佇む古道具屋、香霖堂の店主だ。彼の性格は彼自身の店、香霖堂に現れている。
まず香霖堂自体は瓦屋根の和風建築だが里の家々と造りが違う。きっと外来の建物か彼が妖怪に工事を頼んだのだろう少なくとも里の大工の仕事ではない。
里の人はこれだけでも違和感を感じるがさらに店に入りきらなかった商品と思わしきものがガサッっと並べられている。
焼き物の大きな狸、一ヶ所にまとめられた大量の番傘、本来の用途と違い水が貯まった火鉢などまだまだガラクタが並べられている。
中に入れば外と違い一応は陳列がなされているが用途や形状に法則性が見いだせない。それどころか私物か商品かも本人に問わなければわからないのである。
一応、弁護するならば品揃えがいいことだ。イナゴについて詳しかったあの知識人によればこの店には外の道具はもちろん、妖怪の道具、果ては冥界の道具まであるそうだ。
彼の種族は人間と妖怪のハーフであり人間と妖怪、両方から襲われないという幻想郷では珍しい立場にいる。
きっとハーフであることを最大限に活用して幻想郷中の道具を集めているのだろう。さすが生粋の道具オタクである。
....まあ、そのせいで彼が気にいった道具は売ってくれないと欠点があるが。
店に入って飽きるということはない良い店だとは個人的には思う。
彼の性格?....つまり、商売に向かないということだ。
「....なるほど、雑草が生い茂っていると。」
「ああ最近は里からも通う人も多くて道自体は無事だったけれどその分、草花の栄養が増えてる。何者か潜むにはピッタリだ。」
「例えば妖怪達とか?君が半妖半人にそんな心配するのかい?」
「....いや蛇とか、動物には襲われるだろ。」
自分は今、不服ながら香霖堂でお茶をいただいてる。
いつもどうり店は商品で埋め尽くされている、いや人が通れるスペースはあるのだが商品一個の個性が強いのだ。
そのせいで今座っている椅子も、湯飲みをのせている机も小さく感じられる。
「まあ、盆の無縁塚はいつもどうりで良さそうだ。で、何を拾ったんだい?」
うえ、やっぱりバレていたか。
森近霖之助にはあらゆる道具の名称と用途がわかる能力がある。彼はその能力を活かすため香霖堂を開いた。
だけではないのは誰でもわかるだろう。
活かすだけなら彼が前に修行していた道具店でも良かっただろうし、なんなら里で店を開けばいいのだ。
では何故こんな魔法の森に店を構えているのか。それは彼が道具オタクだからだと言うしかない。
道具オタクだから外来物の多い無縁塚の近く、里からも遠くないこの場所に店を。
道具オタクだから商品が売れないように普通の人間がこれないような場所に店を。
彼も自分の能力を道具に対する深い愛情によるもの、と語ったとき自分も道具屋の娘も唖然としたものだ。
ともかくそれぐらい彼は道具が欲しいのだ。
外来物なら特に。さて、どうしたものか。
「....まあ、バレているならしょうがない、これだよ。」
机のしたに置いといたリュックモドキから黒い小さな箱型テレビのような物を机の上に置いた。
霖之助はこの機械をジッ....と視たあと何かわかったようにこう言った。
「これは....光速船、ゲーム機の一種だね。」
「そう、これは外の世界で少し昔に使われていたゲーム機だ。」
光速船。自分も前世で少し覚えているだけだが確か外国の家庭用ゲーム機で本体と画面が一緒になっているのが特徴だ。
意気揚々と日本の企業が売り出したが値段が高く、思ったよりも売れなかったはず。
「その売れなかった時期に忘れ去られた機体が幻想郷に迷い混んだと。」
自分が持ちうる限りの情報を吐き出したあと考察が纏まったのか彼は話だした。
「見る限りこの前についている君が言う所の
コントローラ?を操作してゲームをするようだね。」
そういうと光速船をさらっと手元近くに置きコントローラを調べている。
「....やらんぞ。」
無言でこちらに返して来てなに知らぬ顔で。
「だけれど、どのボタンを押しても反応がない壊れているなこれは。」
「知ってる、拾った時に調べたからな。だいたい店のゲーム機だって動かないだろう。」
そう、香林堂には数は少ないがゲーム機がある。あるだけだ、幻想郷にある、つまり忘れ去られた時点でどこかおかしいゲーム機なのだろうほとんどオブジェと変わらない扱いだ。
初めてここに来たときも、彼はそれらが電気がないと動かないことすら知らなかったのだ。
「だから河童に頼んで直して貰うつもりだ。」
河童はこの幻想郷でも高い技術を持った妖怪だ。彼らは人間を川に引きずり込み人間の尻子玉を取るという恐ろしい習性を持つがこのゲーム機を直せるのは彼らしかいないだろう。
「....止めはしないが気をつけるんだぞ。」
「....?意外だ霖之助の性格なら絶対に止めると思っていたが。」
「心の声がそのまま出ているぞ。....そのカメラ、前は壊れていただろう、でも直ってる。
ということは何らかの方法で河童との繋がりができたんだろう?」
そこまでバレていたのか。よく視るのは商品だけじゃないか。
「ということでこれは売れないよ。」
「....そうか、ゲーム機の種類が増えると嬉しかったんだが。」
とため息をつき、明らかに落ち込んでいる。
「まあまあ、ゲーム機が直ったら遊びに来るから。元気出してよ。」
「....次はしっかり視せてくれよ?」
まだ視足りなかったのか。とは思いつつも、やんわりと約束をし香林堂を後にした。
店を出ると外はすっかり夜になり、もうすぐで満ちる月の独壇場となっていた。
暗がりの道を進みながら2つのことを考ええる。
ひとつは彼、森近霖之助が思ったよりも光速船の催促をしなかったことだ。
道具屋の頃ならどんな手を使ってもという印象があったが。ポラロイドカメラの時といい近頃はそんなことはなくなってきた。
いろんなことが理由として考えられるがしっくりくるのが。自分が大人に近づいたから。
まだ自分は二十歳にはなっていないが江戸時代なら十分大人と認めらてる年代だ。
実際自分は畑仕事を手伝い。ある友達は親の仕事の修行を初めて。また別の友達は自分の店を開いた。
父母が夜遅くの外出を認めてくれるのも。霖之助が客扱いしてくれるのも。大人に近づいたから。
そう思うと誇らしくもあり。寂しくもある。
....しんみりしてしまったが、ふたつめのことを考えよう。
それは。こんな時間に空いてる店があるのだろうか。もしかしたらなにも食べずに帰るかもしれない。
ヒューと風を切る音が上空で聞こえる。やはり夜の森は暗く怖い。さっさと移動してしまおう。
「....ゲーム機、惜しかったなあ....」
ガチャッ
「いらっしゃい....君か」
「君か、ってなんで残念そうなんだ。せっかく遊びに来てやったのに。」
「そろそろ店仕舞いかと考えていたら。遊びに来られて残念なんだよ。」
「良かったじゃないかお客さんが多くて。で、誰がさっきまでここにいたんだ?湯飲みにお茶がほとんど残ってるしもったいないじゃないか。」
「ああ....君も知ってる人物だよ。」
「霊夢か?珍しいな、じゃあお茶貰うぜ。」
「いや、君の王子様。」
ブブーッッ ガハッ ガハッ
「はははっ、君は彼が関わるとダメになるなあ。」
田守くん
しんみり系主人公。そうか、俺もう大人かと悟った。前世では大人になる前にいなくなったので今回が初めての大人だったりする。が腹が減った。
森近霖之助
道具オタク。酷い言われようだ。まあ古い付き合いだし....ね?半人半妖でもやっぱり苦労してるんやろうなあと作者は思うキャラ。妖怪に絶対襲われない訳じゃないだろうし。
主人公とは修行先の旦那の娘の友達という関係、その頃から変な子でなんやこいつと思っていたが後に前世の記憶があると知る。最近主人公が漂流物拾いをしてると知り同士だと思ってる。やっぱりオタクじゃないか!!
光速船
祝幻想入り。本文中の説明は嘘が混ざっている可能性がありますので詳しくは各自で。
わりとコアなファンが残ってるそうでたぶんこいつよりマイナーなゲーム機はいくらでもいる。でもこいつが脳から離れなくて....。
独自すぎるデザインが悪いんや。
道具屋の娘
人間ルートの定番ヒロイン。気が強く主人公気質も強いですが里の同世代なら可能性があります。主人公とは里で悪名高きズッコケ三人組みたいなことしてて、そこでガハッガハッ。
間に合わなかったよ。難産でしたから無理矢理やりたかった所まで行軍した。つまりメチャ疲れた。構成は脳内にあるけどストックがないので次回は駄目かもしれない。夏休み終われば絶対更新ペース不安定になるし。というわけでここまでありがとうございます。次回をお楽しみに。
2022:6/2 タイトルと香林堂を修整