IS 箱の外の成層圏   作:サカナの鱗

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所謂導入編です


箱の中の戦争

世界中の人々がLBX(Little Battler eXperience )と呼ばれる玩具に魅了され、はや数年が経った。

当初はその過剰なまでの性能から一時発売禁止にされていたそれ等も、『強化ダンボール』の登場により、再び人々の手に取られるようになり、遂にはその専門学校までもが設立されるほどの人気を博していた。

しかしそこは世界の安寧を謳った代理戦争の舞台でもあった。しかし、あくまで『擬似』の舞台であった筈のその場所は今、悲鳴飛び交う『本物の戦場』となっていた。

 

 

 

日本の本土から僅かに離れた離島の地下、『セカンドワールド』と呼ばれる第二の世界.、その中枢へと繋がる巨大な縦穴を二つの光が凄まじい速さで駆けて行く。

それ等は激しく交差し、火花を散らした。先行する赤と青のやや大きめの機体が背後から撃たれるレーザーを一切の無駄の無い動作で避ける。その隙とも言えない様な、僅かな減速を後続の黒い機体は見逃さずに一気に距離を詰め右腕と一体化した大鎌で先行する機体を弾き前へと出る。

そんな攻防がもう何度となく繰り返しされていた。

「しつけぇんだよ!」

黒い機体のパイロットが放たれたミサイルを迎撃しながら叫ぶ。

とうとう縦穴を駆け抜け、無数の柱に囲まれながら開けた場所へ到達した二機の戦闘はより激しさを増していたが、お互いに相手に致命傷を与えられないままだった。互いに撃ち、避け、斬りかかり、受け止め、駆け抜ける。殺意の篭ったそれ等の動作が延々と繰り返される。

 

しかし、その終わりは唐突に来た。

もう何度目かも分からない鍔迫り合いの最中、突如として二機の間を高熱のレーザーが駆けて行く。

二機が射点へと視線を移すとそこには、何処か無機質的で、まるで宇宙人かのような姿をした機体が、複数の自律兵器を従え佇んでいた。

瞬間、黒い機体のパイロットの男の口角が大きく上がり、興奮で声が震える。

「待ってたぜぇ…!セェェディィィィィィィ!!」

先程までの戦闘などまるで無かったかのように、黒い機体は目の前の機体を置きざりにして新たに現れた何処か異常な雰囲気を持つ機体へと急接近する。

宇宙人のような機体は自分の周りに展開していた自律兵器の内幾つかを黒い機体へと突撃させる。黒い機体はそれ等を弾きつつ両腕を合わせ大出力のレーザーを放つ。しかし残った自律兵器が正三角状に展開、主たる機体を守るバリアを展開してそれを防いだ。

「クソッ!」

思わず悪態をつくも悔しがっている様な暇はない、ここは自分が幼いときからずっといた、あの戦場なのだ、一秒、一瞬の隙すら命取りになる。

そう、頭では理解できているものの、自分の中に抑える事など出来ない怒りが煮え繰り返っているのを黒い機体の男は感じていた。何はともあれ、まずは一旦距離を取り、再度攻撃の機会を伺おうとした瞬間、さっきまでとは比較になら無いほどの速さで例の自律兵器が黒い機体を襲った。

体勢を立て直す暇もない程の連撃に、不完全な環境での整備しか出来なかった黒い機体は遂に悲鳴を上げ、腰のブースターが破損した。そのまま地面へ叩きつけられた時、見計らったかの様に天は彼を完全に見放した。今迄紅く光っていた男の目が、黒くなっていった。と言っても死んだのではない、普段の状態に戻ったのである。まさに『最悪』のタイミングで。

「しまった…!」

男は声にして悔やむが、もう遅い。地に落ちてなお続く自律兵器の連撃に黒い機体はなす術無く、徐々に破壊されていく。左腕が、右腕の大鎌が、足が破損して行く中、唯一残った武装である右腕のレーザーキャノンを庇いつつ、男は機体の全てのエネルギーを集中されていく。

「セレディ…テメェだけは…」やや自嘲めいた笑いを浮かべながら男は言う。

「地獄に道連れだ…!」

とうに限界を迎えている機体を奮い立たせ、右腕を大きく前に突き出す。そこには限界までエネルギーをチャージさせたレーザーの光が機体の割れ目から漏れたしていた。このまま放てばまず砲身は保たないだろう。だが、これでいい。これほどの出力なら確実にあのバリアごと貫く事が出来る。

奴さえ殺せれば…他がどうなったって知っちゃこったねぇ…!

「くらいやがれぇぇぇぇぇ!!!!」

極大の光が伸びていく。が、やはり天は彼を救おうとはしなかった。レーザーが発射される寸前、ホンの僅かに脚部の関節が限界を迎えた。そして機体全体が僅かに体勢を崩し、結果として、彼が全てを犠牲に放った一撃は目標をそれ、その後ろの大型パイプを切断したに過ぎなかった。

「畜生!!」

その言葉と同時に機体の右腕は砕け散り、完全に限界を突破した機体はゆっくりと膝を着き、爆散した。

 

同時に黒い機体を遠隔操作していたコントロールポッドに紫色のガスが充満していく。薄れいく意識の中、、顔中を憎悪で染め、全てを捨てた復讐を果たせなかった彼は血走った目で憎き相手の名を叫んだ。

 

 

これが、伊丹キョウジが最後にこの世界で確認された瞬間である。

 

 

 

 

 

 

 

そして、生まれてからずっと戦争の中に生きて来た彼は

「なんだ…こりゃ…」

新たなる世界を見る事になる

「一体…どうなってやがる…!」

それはあまりに愚かで、あまりに狂っていて、彼にとってあまりに優し過ぎる世界

 

 

 

 

 




さて、いかかでしたでしょうか。
知ってる人からしたら単なる分かりにくいダンボール戦機ウォーズ36話だったんですけども次回あたりからISとも絡んでくる予定です
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