そこで目を覚ます事は、今まで何度もあった。
何せ物こごろついた時からそこで育ってきたのだ。
ついで言うとそこで居たならば起きるのは当然である。
そこに目覚まし代わりになるものなど幾らでもある。銃撃音、駆動音、液体が飛び散る音…もっとも本来それ等が鳴ってから起きるのでは到底生き残れ無いが…
故に伊丹キョウジは意識が覚醒するより先に体が条件反射を起こし近くの廃墟に飛び込んだ。
そして次第に意識が覚醒していくと、今の状況に疑問を抱き始める。
ー何故俺はこんな所にいる?ー
世界中の軍事データを集めた『アンダーバランス』を巡るワールドセイバーと神威大門生徒達との争いを利用し、セレディに復讐するために戦い、あっけなく返り討ちにあった。
そして奴がゲームのオマケとして仕込んだ毒ガスで、確かに死んだ筈だ。
あの毒ガス宣言は嘘だった?いや、セレディが嘘を吐いたという事はないだろう、あいつにそんな容赦が残っていたら、それこそ拍子抜けだ。
「ハッ、だったらここは地獄か?噂に聞いてたよりもえらく現代的なもんだ」
若干自棄になりながら呟く。
そこに突如として銃撃音が鳴り響いた。
「チッ、一体考えんのはやめだ!」
例えここが地獄だとしても本能が死ぬ事を拒否している以上、生き延びねばならない。
とはいえ、今の彼は丸腰である。
残念ながら彼の周りには現在、倒れている兵士もいないため装備を奪う事も出来無い。
となれば、今この戦場にいるどちらかに正規の軍隊がいる事を願って、降伏して捕虜にでもなるか、なんとかしてこの場から離れるしかない。
そもそも装備が揃っていたとしても、結局はこの二つしか選択肢が無いのだからする事は同じである。
そして周りに民間人の姿が無い辺り、捕虜になる事などまず不可能だろう。ならば残った選択肢はひとつ。
「取り敢えずは逃げるか」
そう言って移動を開始しようとした時、腰の辺りに違和感を感じた。感じた、というより腰のベルトに何かポーチのような物が掛かっていることにやっと気づいたのである。
ゆっくりと手を伸ばし、ポーチの中身を確認した。
同時に彼の頭の中は一層混乱した。それは本来有る筈も無いものだった。
「グルゼオン!?何故俺が持って、いや、そもそもなんで有る?!」
それは、彼と共に死んだ筈のかつての愛機であった。
(どういうこった…こいつは確かにロストした筈、そもそもなんで改造した筈の腕が戻ってる?なんでセカンドワールドの中にあったコイツが俺の手元にある?)
彼の頭の中を幾つもの疑問が埋めつくす。
が、すぐに先程と同じく銃撃音で我に戻る。
(何故コイツがあるのかは分からねぇが、確実にこの状況を脱するのに役に立つ)
伊丹キョウジはグルゼオンを起動させるとCCMで操作し、上空へと飛ばした。
本来は手の平サイズの玩具用機械だったLBXだが、その基本性能の高さ、また技術発展により短時間ならば単独飛行も可能なのだ。
上空から周辺の状況を確認すると、現在地の北西数百メートルの位置に2機の戦車と随伴歩兵を確認した。が、装備が不揃いな辺りから正規の軍隊では無いと判断する。その周辺に恐らくは正規軍と思わしき軍服の揃った人間を複数人確認した。
恐らく先程までの銃撃音はこの戦闘の物だったのだろう。
更に索敵を続けると、先程の戦車隊よりも奥に幾つもの煙があがっている事に気がつく。
「何だ?別の戦車か?…にしても何故これほどまでに部隊が少ない、だいたいこいつらは何と戦ってやがる……」
その時グルゼオンが新たに熱源を感知した。
同時に上空から先程の戦車に向けて弾丸の雨が降り注ぐ。
「なんだ!?ッチィ!」
突然の事態に混乱するも、急ぎグルゼオンを降下させ、自分のいる建物へと隠す。
そのまま彼は屋上まで駆け上がった。途中爆音が何度か聞こえるも無視して駆け上る。屋上ではなく直に回収しても良かったが現状の確認をこの目でしたかったのだ。
彼は自覚こそしていなかったが、自身が置かれた状況に非常に混乱していた。
故にこのような、普段の彼ならば愚行だと笑う行為を行ってしまった。
屋上に着いたとき、彼の目の前にはグルゼオンで確認したときより更に二つ煙が増えていた。
しかし何よりも目に入ったのは、空中に浮遊する人型のナニカだった。
「何だこりゃ…一体どうなってやがる…」
あまりに理解し難い状況に思わず呆然と立ちすくむキョウジに気づいたのか、そのナニカはこちらを振り向き、
右手のライフルと思わしき物を向けた。
更新遅れて申し訳ありませんでした
ただ、いまちょうどテスト前でまた更新送れるかもしれません。
一体本編開始はいつになるやら…