デート・ア・ライブ 士道リバーション   作:サッドライプ

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 saDripeのアナグラムを知っている読者がいて愕然。
 一回か二回しかどっかで語った覚えないのに………。
 そういえばリアル中二の時に考えてそのまま変える機会もなくここまで来ちゃったんだよなあ………執筆する度に黒歴史を曝し続けている訳で、慣れって怖い。

 うわあああああああ(ごろごろごろごろ




狂三アフタースクール

 

 入学より数日。

 

 特に七罪達には慣れないものの繰り返しによってだんだんリズムを掴めてくる学校生活。

 その昼休みの教室、皆で学食組の机を借りてくっつけ、一緒に話をしながら昼食を取るグループのうちの一つ、士道達も例に漏れず仲良く環を作っていた。

 美九もわざわざ下級生のクラスに来て奇異の目に曝されながらも、少しも動じた様子もなくさらりとその環に加わっている。

 

「提供。士道、七罪、お弁当です。今日は夕弦の担当でした」

 

「ありがと」

 

「助かる………おお、今日も美味しそう」

 

 自分達二人と美九の分と一緒に士道と七罪の弁当も作ってくれると言う夕弦や耶倶矢の好意に甘え、毎日女の子の手作り弁当という贅沢を享受する士道。

 箱の蓋を開けると、彩りの豊かなおかずの詰まった見事な弁当がお目見えする。

 やっぱりスペックの高いメイドさんであった。

 

 そんなご馳走を前に手をつけようとしたところで、士道の後ろに影が掛かった。

 

「士道さん、少しよろしいですか?」

 

「狂三?」

 

 今現在、士道いわくの“どこからどう見ても美少女”達に囲まれてランチタイムとしゃれ込んでいるのも含め、色々な理由で触れるべからず(アンタッチャブル)筆頭となってしまった彼と唯一話すクラスメート。

 席が隣なのもあってどうでもいい雑談などはまず彼女と話しているというくらい、高校に入って新しく一番仲良くなったのは誰かと問われれば、その時崎狂三と答えるだろう。

 

…………清楚とミステリアスの同期した、タイプは違えど皆に劣らぬ美少女である狂三と仲良くすることで『まだ増やすのか』と事態を悪化させている気がしなくもないが。

 

 そんな彼女は、深みのある微笑を湛えながら、士道達を見回しては一礼する。

 

「わたくしも昼食をご一緒したいですわ。お許しいただけませんこと?」

 

「「…………」」

 

 購買で買ったと思しき菓子パンを胸元で掲げ、こてり、と小首を傾げる。

 一方それを聞いて、何故か押し黙って体を硬直させる夕弦と耶倶矢。

 

「えーと、いいよな。みんな?」

 

「だーりんは大物さんですねぇ。あ、くるみ?さんはどうぞー、歓迎しますよぉ?」

 

(美九………ちょ、ちょっと!?)

 

(耶倶矢さん、人見知りですかぁ?だめですよー、折角学校に入ったんですから)

 

(疑義。たしかに若干ヘタレの耶倶矢はその気がありますが、それだけでもないことは分かっている筈です)

 

(それこそ、なるようにしかならないわよ。色々とね)

 

 四人でひそひそ話す―――何故か七罪と美九は悟ったような笑顔―――中、狂三は美九の誘いに乗って椅子を近くから確保してきて、士道のすぐ隣に座った。

 明らかに自分を対象とした内緒話に気分を害した様子もなく、はむはむと袋を空けたパンを少しずつ齧り始める。

 

 それでも、表に出さないだけで機嫌を損ねていたら申し訳ないし、食事時に雰囲気をまずくするのもなんなので、士道は狂三に話を振った。

 

「それで狂三、今日はどうしたんだ?」

 

「士道さんが楽しそうでしたので、羨ましくなってしまいましたの。それで、折角ですから皆様にも紹介をと」

 

 そう言うと、にこやかに七罪を、美九を、夕弦と耶倶矢を、一人ずつ順番に顔を見つめ………なぜかその順番に彼女達の表情が一瞬固くなったように見えた。

 

 

「時崎狂三ですわ。同級のお三方は改めまして、そちらの美九先輩に関しては以後よしなに――――士道さんとは、“よろしく”させていただいています」

 

 

 気のせいだろうか、狂三の笑みの口の端が、いつもより少しだけ吊り上がった風で。

 頭を下げたことで角度が変わったせいだろうと、その時は思ったのだった。

 

 

 

 

 

 放課後。

 

 どんなに設備のいい学校だろうが掃除当番というものはあるもので、ア行で始まる五河姓の士道はその最初のグループに割り当てられることが殆どだった。

 待たせるのは―――特にメイド仕事があって部活動に入れない八舞姉妹を拘束するよりはと、掃除当番や今後あるかも知れない居残りなどは待たないとお互い決めている為、教室の掃除を終えた士道は一人で帰り仕度をする。

 他の当番達とだらだら駄弁っているグループくらいが残った教室で、鞄に教科書などを詰め込んだ士道に、声を掛ける女子が一人。

 昼休み、あの後如才なくなんてことのない会話を交わしながら士道達と昼食を共に過ごした、狂三の静かな微笑がそこにある。

 

「お時間よろしいですか、士道さん?二人きりで話したいことがありますの」

 

「いいけど、どうしたんだ改まって」

 

「ふふっ」

 

 意味深に微笑んだまま唇に指を当てる仕草をすると、そのまま振り返って歩き出す狂三。

 教室を出て、どうやら校舎の階段を上がり切ってその裏、死角となる暗がりまで先導するつもりらしかった。

 存外狂三の歩く速度は速く、慌ててついて行く士道と一定の距離を保って、…………階段を上る。

 

「うわああっ!?」

 

「あらあら、どうしたんですの、士道さん?」

 

「な、なんでもない!」

 

 狂三を視線で追っていると見上げる姿勢になって――――歩き方の問題か、腕の振れのせいか、狂三のスカートが翻り一瞬“中身”が見えそうになった。

 慌てて士道は階段を駆け上がり、狂三の横に並ぶ。

 

 すぐに階段を全て昇り切り、狂三は振り返ってくすり、と息混じりの軽い笑い声を出した。

 

「士道さんたら、微笑ましいですわ。スカートの中身、気になってしまったんですの?」

 

「っ…!!?」

 

 ぴら、と少しだけ制服のスカートの裾を持ち上げる狂三を、わざとやっていたと悟った士道は大慌てで止めた。

 

「か、からかうなよ!!」

 

「あら、あら」

 

 楽しそうな狂三の様子に、士道は嫌が応にも意識してしまった。

 

 学校、人気のない場所に呼び出され、異性と二人きり。

 ある意味青春イベントの王道中の王道とも呼ぶべきシチュエーションに、急に落ち着かない気分になってしまう。

 

 そんな士道の内心も見透かしているのかどうなのか、狂三はそこで雑談の延長のような話題を振ってくる。

 

「お昼はありがとうございました。楽しかったですわ」

 

「礼を言うようなことじゃないだろ。ただ、これで七罪達と友達になってくれれば嬉しいけどな」

 

 嘘偽りない気持ちを表に出す。

 精霊達の交友関係は、美九を除けば決して広くはない――――特に八舞姉妹と話すのは、美九の家に集まる面々だけだろうと思う。

 折角学校に通うのだから、そういう人との付き合いを増やすのもいいのではないか。

 

 そんなことを考えながら狂三に言うと、彼女は一瞬ぽかんとした後、

 

「友達ですか?………友達、ですか。うふふ、ええ、ええ、士道さんの頼みなら吝かでもないですわよ?でもわたくし、それには気になっていることがございまして」

 

「なんだ?」

 

「あの可愛らしい方々の内、士道さんの本命はいらっしゃるのですか?」

 

「うっ…………」

 

 特に痛いところでもないが、突かれた。

 そう感じたが、改めて隠すことではないので、士道はその問いに真摯に答えた。

 

「本命……っていうと、なんか違うとしか言えない。あいつら皆、大好きで、失いたくなくて、とびきり可愛くて――――とかって言葉を字面にしたり、周りから俺達の関係を見たらなんだよそれって言われるのも無理ないっていうのはわかってるよ。

でも、だからってあいつらの中から一番を選んで他の皆に『俺、彼女を恋人にする。そういうことだから』は………やっぱりなんか違うんだって、思う」

 

「なかなか独特な考え方ですわね」

 

「一般的に褒められたものじゃないのは、十分理解してるよ」

 

 ある意味開き直っている士道に、狂三は首を振りつつ、しかし本当に愉しそうに士道との距離を一歩詰めた。

 

「いえ、いえ、彼女達もそれで納得………というよりむしろ、彼女達こそがそのような考えを積極的に歓迎して今の関係を築いておられるようでしたし、わたくしから野暮を申し上げる気はありませんわ」

 

 そして自然に士道の耳元にまで唇を近づけ、囁く。

 

 

「――――他の何者にも優先すべき、士道さんの最愛の人、という立場には惹かれますけれど」

 

 

「~~~ッッ!?」

 

 その柔らかい吐息と共に発せられた不意打ちに、先ほどの想像が蘇って士道は腰が砕けるかと思った。

 そんな士道の腰の辺りをやわやわと撫で擦りながら、熱を帯びた声で狂三は言葉を続ける。

 

「士道さん、実はわたくし、あなたという個人に興味を覚えていますの。まだ駄目まだ駄目と抑えながらも―――――つい欲望のままに今すぐあなたを………ってしまいそうなくらい」

 

「え……?」

 

 一部分途切れた言葉を聞き返そうとした士道を解放した狂三は、構わず次の話に移る。

 

「というわけで、デートのお誘いですわ、士道さん。次の休みの土曜日、天宮駅の改札前で、10時30分待ち合わせ。予定は空いていまして?」

 

「あ、ああ、うん、今のところは何も予定はないけど」

 

「では、決まりですわね。その日は是非よろしくお願いします」

 

「え?っていや、ちょっと待て―――、」

 

「あ、それと最後にもう一つだけ訊きたいことがあるんですの………」

 

 まだ士道の返事も受けない内から踵を返す狂三を呼び止めようとする士道。

 その足を、その手を。

 

 

 “士道の影から這い出た青白い腕”が、壁に磔にするように押し付けて拘束する。

 

 

「――――ッ、――――これ、は……!?」

 

「…………きひ、きひ、きひひひひひっっ!!士道さァん、精霊ってご存知?気分一つで人一人、街一つ、国も滅ぼせる化け物なのですけれど、そんな存在を四匹も周囲に侍らせて。おまけにこうしてあなたに惹かれてもう一匹。ほら、ほら!どんな気持ちでいるのでしょう?」

 

「狂三、まさかお前も精霊………!?」

 

 安いホラー映画のような光景だが、掴まれた拘束は人間の士道では振り払えないほどに力強い。

 口元を引き攣らせて笑う狂三に昼休み見た表情が見間違えでもなんでもないことを悟り、冷や汗が流れる。

 

 新しくできたクラスメート、親しくなりつつあった狂三が、精霊だった。

 それ自体を理解できぬと放り投げるほどに、こういう驚きへの耐性がないではなかったが、それでも急な事態に頭がパニックになりそうになる。

 それでもどう対処すればいいのか、と必死で考える士道に、しかし狂三はそれ以上のことをする気配はなかった。

 

「ふふ、折角学生ですし、この問いの答えは宿題ということにしておきます。それでは土曜日、楽しみにしていますわよ?」

 

 そう狂三が言い残して今度こそ去ったあと、暫くして腕の拘束が全て外れ、影はただの影に戻っていた。

 だが、痣になるほど強く掴まれていた場所が痛んで暫く立てない。

 

「……………返事を訊くまでもなかった、ってことか」

 

 土曜日のデートに、行かない訳にはいかなくなってしまった。

 仄めかす程度だが、狂三の突然の行動にはおそらく脅迫の意味も含まれていたから。

 

「また、厄介事か………」

 

 座り込んで、暗がりの天井をぼうっと見上げる。

 

 変色した掴まれた箇所の肌が、熱をもってじくじくと痛みを訴えていた。

 

 

 





 いやー至極平凡な繋ぎの回でしたなー。

………あれ、感覚がマヒしてたりする?


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