デート・ア・ライブ 士道リバーション   作:サッドライプ

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 ひゃっはー、ここまできてやっとこの小説はじめての本格的な戦闘シーンだ!!

 中二全開で参ります。
 特に能力関連で独自設定という名のこじつけが入る可能性があります。

 さあ、ついてこれるか?




狂三バトルフィールド

 

 羨ましかった。

 

 精霊なのに、お互いを理解し合い、全幅の信頼を預けられる相手のいる七罪が。

 精霊なのに、自分の何もかもを委ね、甘え切ることのできる相手のいる美九が。

 精霊なのに、気ままな戯れに、仕方ないと付き合ってくれる相手のいる耶倶矢が。

 精霊なのに、無思慮に危険を犯せば、心配して叱ってくれる相手のいる夕弦が。

 

 

――――士道さんが楽しそうでしたので、羨ましくなってしまいました

 

――――なかなか羨ましいですわ。士道さんに愛されているのですね

 

 

 そう、羨ましかった。

 見ているだけで幸せになれる、そんな光景だったから。

 自分だって、あるいは………“目的”も忘れてそんな風に思うほどに、狂三はその輝きに憧れた。

 

 同時に、それを認めることも出来なかったけれど。

 素直になるにはあまりに、歳月も、絶望も、宿業も、重ね過ぎていたから、幸せを享受するその集まりに、嫉妬すらしていたのかもしれない。

 

 だから、そんな複雑に絡み合った気持ちが士道に対するあの回りくどい振る舞いだ。

 

 

 だが。

 士道はそれに真剣に応えた。

 正面から向き合ってくれた。

 

 

 応え過ぎたのだ。

 

 痛いところを突かれたとはいえ狂三の心が揺れ、士道の手を取ってしまいそうになった程に。

 

 だから“狂三”は粛清に踏み切った。

 

 士道の前にいた狂三は、本当の“狂三”が時間を操る彼女の天使の能力で生み出した、彼女の過去の一部分を切り取った分身だった。

 再現した当時相応の自我があり、知悉はしても思うがままに操ることができる訳ではない。

 作った時に込めたものに応じた一定時間が経てば消えるとはいえ、絆されて本体の理念から外れてしまった個体は“狂三”―――時崎狂三の目的に反する以上は、積極的に消さねばならない。

 

………それを士道が庇い、代わりに命を落とすなど、思いもしなかったが。

 

「士道さん、本当に馬鹿なひと」

 

 

 

「……っ、ああああああああっっっ!!!」

 

 

 

 その言葉に対して激発する、士道に庇われた方の狂三。

 錯乱と、そして本体たる狂三への確かな憎悪と殺意に塗れ瓜二つの霊装を展開する。

 一分身などと誰も信じないような感情の昂ぶりに応えるように、漏れ出した霊力に世界が軋み、空間震警報が喚き散らす。

 慌てて蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う街を尻目に、分身の狂三はどこからともなく手に取った洋式銃を本体に向け、引き金を引いた―――――――。

 

 そして、まるで傷の入ったフィルムのようにその姿がぶれ、そのまま断線したかのように、分身はその姿を消失させた。

 

 矛盾。

 親殺しのパラドクスにより、狂三の分身体は本体を傷つけることが出来ない。

 それでも無理に歯向かえば、この通りにその存在そのものを保てなくなる。

 

 そんなものを命を捨てて庇うなんて、なんて愚か―――――。

 

 だが。

 

「痛い、いたい、…………ああ、“過去の自分”に殺意を向けられることが、こんなにも」

 

 発射されなかった弾丸は、しかし確かに狂三の胸を射貫く。

 

 昨日の自分に負けないように、明日の自分に恥じないように――――――とは何のフレーズだっただろうか。

 どこかで聞いたその言い回しは、これ以上ないほどに狂三にとって皮肉だった。

 過去の自分にとって今の自分が認められないくらいに変質していたのだと突きつけられ、振り払っても振り払っても纏わりつくぬるい霧のようだ。

 

「士道さん、本当に馬鹿なひと」

 

 再び発されたその言葉は、今度は責めるようで、どこか拠りかかっているようで。

 

 

 そして狂三は士道の血に塗れた亡骸を、そっと自分の影に重なるように横たえる。

 狂三の影はまた不自然にその面積を拡げ、士道をすっぽりと覆える大きさになった。

 

……………影が現実のものを下から覆うという表現の違和。

 

 だが、その光景を見ればそう表現するしかなかった。

 音も無く、沼に沈めるように士道の亡骸は狂三の影に飲み込まれていく。

 蒼白となった肌も、赤みを失った唇も、血に染まった服も、その色彩を闇に溶かすように。

 

 そうして狂三は、その返り血を清めもせずに、五河士道を自らのものとして、その死体を収める。

 

 

 

 丁度その場面を、空間震警報に士道の身を案じ、駆けつけた彼女達は見ていた。

 

 

 

「士道……………?」

 

「だーりん………っ!!?」

 

 

 七罪の現実を理解出来ないといった茫然とした表情。

 美九の悲痛に染まる呼び声。

 

 

 彼女達が狂三の影に完全に飲み込まれる前に見えた士道は、胴を深く抉られ、血を撒き散らし、そして動きを完全に止めていた。

 すぐ傍には返り血に濡れた狂三、そして元の色も分からないまでに血に染まった右腕。

 起こった事象を、見誤る筈もなかった。

 その結果を、信じられたかどうかは別にしても――――、

 

 

――――五河士道は、時崎狂三に殺された。

 

 

「「き、さまあああぁぁぁーーーーッッッッ!!!!」」

 

 

 夕弦が、耶倶矢が、拘束服の霊装を展開し、狂三に一直線に殴りかかる、その疾走は、目にも止まらぬ一瞬。

 それを狂三は上空に飛び上がって躱すと、その手を大きく広げた。

 

 狂三は二人と対峙しながら、表情を消して語る。

 

「士道さん、死んでしまいましたわ。わたくしが殺してしまいましたわ。

…………憎いでしょうね。さぞわたくしを殺したいでしょうね。分かりますわ、ええ“分かりますわ”」

 

「赫怒。滅殺………必誓。夕弦と耶倶矢は、お前を絶対に赦さない!」

 

「受けて立ちましょう。――――あるいはそれが、士道さんへの。〈刻々帝【ザァァァァフキエル】〉、“わたくしたち”!」

 

 霊装のヘッドセットで前髪がアップになったことで見えやすくなった時計盤の左目が、黄金の輝きを放ちながらその時刻を進める。

 人間から、士道から、吸収した“時間”――――それを消費し、狂三の背後に巨大な機械時計が、そして周囲に無数の分身体が現れた。

 

 同じ顔の、同じ姿の、同じ精霊が一気に時計の天使がなければ本体が分からなくなりそうな程視界を埋め尽くす数の狂三が、空を占領する。

 その異様な光景に、耶倶矢達は――――ただ殺したくて仕方のない仇の顔が増えた不快感だけを憎しみに歪んだ顔に足すのみであった。

 

「「ただし、」「あなた達が」「勝てるとは」「限りませんわ」……心して掛かって来なさいませ」

 

「能書きはいい。死ね、いいから死ね、さっさと死ね―――――――――――殺す」

 

 常の口調を彼方へと投げ捨て、耶倶矢が冷たく言い放つ。

 だが、その瞳は煌々と内に冷たい光を宿し、浅く早い息のリズムが、黒く染まった内心を覗かせる。

 そして、逆にぎらつく光を放つ眼を限界まで吊り上げた夕弦と同時に、士道に封じられていたその異能の枷を破り、ほぼ全開の状態で起動する。

 

 其は、嵐。

 天より来たる、災いなるもの。

 御子の嘆きと怒りが呼応し合い荒れ狂う、圧で肌を切り裂く程に凶暴な風を纏い、二匹の暴虐の獣と為す。

 

 

「「〈颶風騎士【ラファエル】〉―――――――ッ!!」」

 

 

 ただ、展開した。

 突撃槍を、ペンデュラムを、鉄甲と共にその腕に天使を顕現させた、それだけで火と熱を伴わない爆発とでも呼ぶべき強大な“それ”が、数十の狂三を千々に吹き飛ばした。

 その空気の圧力を、もはや風と呼んでいいのであろうか。

 知ったことかとその結果をいとも容易く置き去りにし、なおも健在な狂三の群れへと吶喊する彼女達。

 

「よくも、よくも」「士道。我らが共に生を歩む、ただ一人の人間だった、その彼を」

 

 

「「死んで償え、時崎狂三!!!」」

 

 

「残念ですけど」「聞けませんわ」「ええ、本当に」「残念ですけど」

「きひ、きひひひひ……………」

 

 

 そして展開されたのは、嵐を司る精霊二と時を司る精霊数百、その“戦争”――――――――。

 

 

 耶倶矢の突撃は、重く鋭く、何をもってしても遮ることなど出来ない。

 夕弦の機動は、空間の走る線としか認識することが出来ず、振り回されるワイヤーなどより遥かに強靭な糸が視認不可能な刃となって切り刻む。

 

 そして、怒りのままに後先考えずにその力を振るう二人は―――魂の双子の本能か、それでも尚連携を保つ。

 苛烈さ故に、対処のし辛さで考えればむしろ二人が冷静な場合よりも遥かに上であっただろう。

 

 ただ嵐に翻弄され、数を減らすばかりの狂三達。

 

 本当なら、八舞姉妹が時崎狂三相手にこうは行かなかった筈だった。

 速さで言うなら時間を操る狂三相手に単純な物理的な意味での速さでは一つの壁がある。

 連携で言うなら狂三は全員が同じ狂三であるが故に、数百倍の数の優位を、その驚異的な意思疎通を以て更にその何倍にも効果を高める筈だった。

 

 彼女の“精神”に、その余裕があればの話だが。

 

 

 

――――あのひとが死んだ

 何故死んだ?

――――殺された。

 誰に?

――――あいつだ。

 あいつだ。

――――あのひとはもうわらってくれない、ふれあえない。

 もううたを、きいてくれない。

――――許さない。

 許せない。

――――ならば。

 このうらみ、はらさでおくべきか

――――この怨み晴らさで、おくべきか

 

 

 

「〈破軍歌姫【ガブリエル】〉――――――“挽歌【エレジー】”」

 

 

 

 戦場に、歌が響く。

 呪いの歌だ、嘆きの歌だ、怨みの歌だ。

 

 

 ドレス衣装の霊装を纏い、歌い上げる美九。

 その歌に、士道が好きになった明るさもひたむきさもありはしない。

 

 負の感情だけを、聴衆全てに叩きこむ。

 

 

 そんな美九の歌を聞いた狂三は、己の精神に酷く負荷が掛かっていることを自覚する。

 

 無性に自分のこめかみを銃で撃ち抜きたくて仕方ない。

 自分で自分の首を締めあげ、へし折りたくて仕方ない。

 己が心臓を抉り出し、遠くに放り投げたくて仕方ない。

 

 その歌は、狂三でなければ聴くだけで発狂するか、それを厭って自死を選ぶしかない、そんな破滅の歌だった。

 否、それぞれが個我を持っていることが災いして、すでに自滅した分身もいくらか出ていた。

 

 故に、そのまま行けば狂三達は壊滅に追いやられ、力尽きた本体は無残に嬲られ襤褸となるまで痛めつけられた挙句に尊厳の欠片も残さぬ死を迎えるだろう。

 

 

 

「凄まじいものですわね、執念………………でェ、もォ。勝つのはわたくしでしてよ?〈刻々帝【ザフキエル】〉、“一の弾【アレフ】”!」

 

 

 

 狂三の機械時計型の天使の能力、時間を操る力を秘めた弾丸を対応する文字盤から狂三の銃に装填する。

 “加速”の弾丸を本体の狂三は自分に撃ち込み、駆けるは標的、美九。

 

 怒りに任せて暴走している夕弦達に、貴重な後衛補助をガードする余裕までは、流石に無かった。

 

「ひとつ」

 

 時間加速状態からゼロ距離で数十発の通常弾丸を美九に連射。

 肉体的には精霊として弱い部類の美九を沈める。

 

 そして、次の狙いは、夕弦。

 

 美九の歌が止まり、わずかながらも持ち直した好機を逃さない。

 “七の弾【ザイン】”―――これまで温存してきたとっておきの“停止”の弾丸を放つ。

 防御しても効果を発揮する凶悪なその効果に、夕弦は完全に空中で静止。

 耶倶矢を残った分身に特攻をさせて動きを阻み、その隙に美九同様あらん限りの銃弾を叩きこんで、落とす。

 八舞姉妹は、素の霊装のみの防御力で言えば美九と大差はなかった。

 

「ふたつ」

 

 そして、残ったのは耶倶矢だけならば、いくらでもいなしようはあり。

 

「――――――――みっつ」

 

「……畜生………ちく、しょォ………………っ!!」

 

 霊装がぼろぼろになるまで奮戦した耶倶矢も、あえなく敗北となった。

 

 

 

 

 

「……………これで、よかったのでしょうか」

 

 激戦を終えた狂三が、暴風と流れ弾で惨憺たる有様の地面に降り立つ。

 肉体的な傷こそ己のみに使える時間逆行の再生で回復しているが、消耗は否めないし分身の数も残り一割を切っている。

 

 辛勝ではあった。

 仮に次が、もしがあれば勝敗は分からない。

 だが狂三はそんな三人を殺さず、止めも刺さないまま一か所に気絶した彼女らを纏めると、残りの一人のもとへ向かう。

 

 七罪は―――――士道の死んだ場所、その乾き始めた血だまりに両手をつき、力を失ったまま座りこんでいる。

 今しがたまでの激戦も知らぬとばかりに、およそ意思の見当たらない光を失った虹彩がその血だまりを向き、ぶつぶつとうわごとばかりを繰り返していた。

 

「士道。士道。こんなに血を流して。痛かったよね、寒かったよね、冷たかったよね?」

 

「……………」

 

 狂三が銃を向けても、一顧だにしない。

 そのまま彼女は無言で引き金を引き、発射された弾丸が。

 

 

 七罪の魔女の霊装にぶつかり、“まるで砂糖菓子のように”粉々に砕けた。

 

 

「ごめんね、士道、ちょっとだけ待っててね。…………これ片したら、私もすぐに、そっちにいくから」

 

 

「………ッ」

 

 先ほどの美九の呪いの歌、それを聞いた時以上に狂三に走る悪寒。

 どこか虚ろなままなのは変わらないのに、最大級の戦慄が狂三を襲っていた。

 

 そして、七罪は解放する。

 一切の情けも容赦も捨てた、禁忌の能力を。

 

 

 

「〈贋造魔女【ハニエル】〉―――――――――“邪眼【バシリスキア】”」

 

 

 

 





 反転はしない。
 愛する人を失った絶望よりも先に、それを奪った憎むべき仇が目の前にいるから。

…………さて、狂三は何をどこまで知っているのやら。



※ぼくのかんがえたかっこいいせいれいの能力だいいちだん(別名、自爆テロ)

〈破軍歌姫【ガブリエル】〉、“挽歌【エレジー】”

 美九が使えるようになった“呪いの歌”。
 天使の能力を、“歌を相手に届けること”のみに集約し、彼女の負の感情を直接相手の精神に叩きつける。
 要は耳元で恨みごとを延々囁いているのと同じなのだが、それだけに防御力一切関係無しにその精神力のみで耐える必要がある。
 愛する人を失った女の怨みを受けて発狂も自殺もせずに耐えられるのは、今回の八舞姉妹のようにその動機を完全に同じくしている者以外は、狂三のように強い“なにか”を抱いているか特異な精神構造をしている者に限られ、それでもなお衰弱・弱体化は免れ得ない。


……………今回のような特殊な状況でない限り、敵味方関係無しのザラキーマ。
 しかも録音を介して全世界に発信もできる。美九には前科あり。

 うわぁ…………。



※没ネタ、七罪の最後のセリフ


「〈贋造魔女【ハニエル】〉―――――――――“偉大なる死【ザ・グレイトフル・デッド】”」


 幼児退行できるなら老化はもっと簡単な筈…………って、ヒロインがヒロインに使う技じゃねえ。
 それ以前に能力だけ何の脈略もなく他作品から丸パクリで持ってくるのは厨二の矜持に反するので没。

……………あれ、今俺色んなところに喧嘩売った?





 この話深夜0時ちょうどくらいに次話投稿送信したらエラー起きてなんかややこしいことがあった。
 次からこの時間は避けよう………

 なんか異常があったら知らせて頂けると助かります。

(追)30分ちょっとの間次の話のサブタイトルになってた………(汗)


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