デート・ア・ライブ 士道リバーション   作:サッドライプ

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 精霊への復讐鬼+変態ヤンデレストーカー=暴走しつつ五河士道絶対主義のダブスタ女。

 色々詰め込み過ぎで時々混乱する………いや、誰とは言わないけど。




あるストーカーの闇日記・三学期

 

 1月元日

 

 一年が終わり、また次の年がやってくる。

 節目………だが、精霊の出現がそんなものを考慮しているとは思えない。

 

 そうは言っても割り切れるものではないのだろう、私のASTの待機任務に付き合う同僚の数は目に見えていつもより少ない。

 不規則かつ通常と比べ遥かに肉体を苛める勤務―――皆、正月くらいは家族と思い思いの時間を過ごしたいと思う気持ちを否定は出来ない。

 

…………私には、正月を一緒に過ごしたい家族はもういないけれども。

 

 ただ、彼は今日一体どう過ごしているのか。

 そればかりは、どうしても気になっていた。

 

 

 

 1月翌日

 

 〈ディーヴァ〉宅を監視。

 

 精霊達が彼に群がっているのはいつものことなのだが、晴れ着姿で身繕って一緒に遊んでいる姿は………やはりいつも通りに腹が立つ。

 三が日の間はあれで過ごすつもりだろうか。

 

 〈ディーヴァ〉は薄黄色、膨張色で横に伸びてしまうのは胸と尻だけでないと知るべき。

 〈ベルセルク〉は二人揃いで若緑、双子が片方赤ではなく両方緑などその時点で影の薄い負け犬の宿命を背負っている。

 〈ウィッチ〉は白地に桜吹雪の模様、………儚く散ってしまえばいいと思う。

 

 簪で髪型も弄り、おめかしして彼に寄り添う姿は能天気に幸せを享受しているようにしか見えず、短慮で破壊的衝動に満ちた思考が溢れそうになる。

 せめて彼の凛々しい袴姿が見られたことを慰めとして、彼だけをなるべく視界に収めるようにすることで精一杯我慢していた。

 

…………母さんの形見の着物なんて、あの火事に焼かれてもう無いのだと、分かっている。

 

 分かって、いる。

 

 

 

 2月⑭日

 

 乙女の聖戦の日、バレンタイン。

 武器たるチョコは当然完備だ。

 オーソドックスにミルクチョコを作り、箱に入れて丁寧に細工も施した。

 

 だが、問題が一つ、最大の障壁と言っていい奴らがいる。

 

 見てくれはいいから彼に近づく有象無象をシャットアウトする壁でもあるのだが、そのせいで私が彼にチョコレートを渡す隙もない。

 厳戒態勢は一時期を超え、精霊達もいつもの35.2%平均の彼との距離が近い。

 彼の優しさと若干、そう若干の流されやすさを考えれば、そんな中を彼に堂々と渡す手もあるのだが、それは“見逃してやった”という認識を精霊に与えるので避けるべきだ。

 

…………だが結局は、いつも以上に警戒態勢を敷いている奴らをこの日に限って抜くというのは、今日の士気の高い私でも劣勢を否めないものだった。

 

 賭けに出ざるを得ない不本意な事態。

 渡せないという最悪の事態は避けなければならないので、また強引に彼の自宅に侵入を試みるという選択もなくはないのだが、その前にベタだがやれることは一応あった。

 

 靴箱に投函。

 

 土足の履物を置く場所に食品を入れるのはどうかと思わなくもないのだが、そういう習慣であれば利用しない手はない。

 机の中よりは彼が精霊達に見つからずに私のチョコを受け取れる確率が高いだろうという読みもあったが………見事に彼は、発見した贈り物のチョコをすぐに別の靴箱から合流した〈ウィッチ〉に隠して鞄に入れてくれた。

 その時彼に付いていたのが、怒らせると面倒くさい〈ウィッチ〉だったことも運が向いていたと言えるかもしれない。

 

 結局彼が家に帰ってから私のチョコを食べてくれたこと、それは箱の仕込みから確認できた。

 理想的とは言い難いが、一定の成果を上げられたことをここに記録しておこう。

 

 

 

 3月白日

 

 バレンタインから一カ月が過ぎた。

 

………見返りを期待していた訳では断じてなかった。

 

 私の彼に対する想いにそんなものはなかったつもりだった。

 だが、朝登校した彼が自分の靴箱でこそこそと何かしているのを見て、気配を断ちながらも我ながらとても素早い動きでそこを漁りにいったのは、この時ばかりは浅ましいと言えるものだっただろう。

 

 それでもこの“プレゼント”だけは決して誰にも譲れない。

 

『差出人も書かなかったドジっ子さんへ。

 チョコおいしかったよ。ありがとう。

               五河士道』

 

 書くのを忘れていたのではない。

 きっといつか、どんな手を使ってでもあなたの元に行く。

 そう誓ったから、私の全てを深く知ってもらい、そして私もあなたのことをもっともっと知る、その時まで、名乗りは預けておく。

 

 きっと、そう遠くない未来の話――――。

 

 今はとにかく、持って帰った彼の手作りクッキーをひとつひとつしっかりと味わって食べることが最優先課題だった。

 

 

 

 3月終日

 

 出撃と精霊との交戦を行った日だった。

 

 最近、空間震、そして精霊と交戦する頻度が多いように思う。

 ユーラシア大空災から30年、人類側の対策も整備されてきてはいるが、精霊を現界次第確殺といかない以上完全とはお世辞にも言い難く、このままでは社会に深刻な影響も出始める危険もある。

 

 何かが始まるような不穏な雰囲気、妄想に取りつかれた人間が終末論を唱えるのも故無いことではない。

 せめて精霊に対する決定的な有効打を与える何かが必要。

 それがあれば、彼の周りの凶悪な精霊達も、あるいは一掃―――。

 

………ないものねだりをしても仕方ない。

 

 今は訓練にもより力を入れていかなければ。

 私は、戦い続けるだけ。

 

 

 

 

 

 そして、4月10日

 

 来禅高校二年生に上がっての始業式、私は彼と隣の席という幸運に与れた。

 クラスが同じなのは、彼の選択教科を合わせたおかげである程度は必然だったが、非合法な手段を用いずに済んだのは僥倖。

 彼と幸せな人生を歩む為にも、やはり可能な限り真っ当に生きるに越したことはないのだから。

 

 ところで彼の逆隣は忌々しいことに〈ベルセルク〉の八舞夕弦なのだが、まあ見た目と雰囲気の割にプライドの高い馬鹿なので操ったり弱みを握れば脅迫することは容易いだろう。

 

 そんなことを気にするよりも、今は彼との接触に全てを集中すべき。

 席替えが行われる前に彼との距離をゼロにし、何者も分かてないような間柄を構築するのが理想。

 

「え、えっと、何……?」

 

 いつも通りの習慣、しかし今日からはいつもよりも近くで堂々と彼を観察していると、落ち着かなさげにもじもじし始めた、可愛い。

 だが、それと共に彼の方から話しかけてくれたので好都合、八舞夕弦も席を外している。

 

「五河士道」

 

「え?ああ、そうだけど、君は………?」

 

「覚えてないの?」

 

「んっと………ごめん、会ったことはある、気がするんだけど、えっと………」

 

 

 

「いい。――――――――私の名前は、鳶一折紙(とびいちおりがみ)」

 

 

 

 やっと、また、“会えた”。

 

 彼が私のことを覚えていないのは残念だったけれど、重要なのはこれから。

 だから、その後の話を続けようとしたのに。

 

 空間震警報。

 

 精霊に邪魔され、話は出来ない。

 一般市民である彼はすぐにシェルターに避難せねばならず、対精霊部隊ASTメンバーとして私は出撃しなければならない。

 

 相手は氷の精霊〈ハーミット〉。

 それを全力で討滅を試みる、精霊に彼との間を邪魔されるのも含めてある意味いつもの日常でもあって。

 

…………それでも私が感じていた通り、この日は、本当に特別な日だったのかもしれない。

 

 

 “誰にとって”、かは未だにはっきりとは分からないのだけれども―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

※一旦ここまで。今回の病気はちょっと特殊なのであとがきじゃなくて本編の場所でやる

※死体姿の士道さんがトラウマった精霊達に愛されて割と眠れないCDっぽい何か↓

 

 

 

・八舞耶倶矢の場合

 

「はむ、ちゅ………」

 

「はむ、はむ、ちゅぱ…………」

 

「なんぞ、士道。我が闇のベーゼを拒むのか?」

 

「よい、んちゅ…………唯、身を預けよ。御主の業は晴れることを知らぬ」

 

「その血の一滴に至るまで支配できるならば、なんと…………、繰り事か、ままならぬものよ」

 

「契約の印よ、これは我の加護たるぞ。ん、はぁあ………本来ならその精を啜り、血肉を我がものと同一とし、化身とすることすら視野に入れるというのに、本当に御主は………」

 

「――――――ちゅうううぅぅぅぅぅっっっ!!!」

 

 

「いっぱい、いっぱい心配したんだから。もしまた勝手に夕弦と私のこと置いてったら、今度こそ、今度こそ…………ううう、ぁ……ぐすっ」

 

 

 

・八舞夕弦の場合

 

「洗浄。こすこす。心地はどうですか、痒いところはありませんか?」

 

「露出。こら、ここはお風呂です、隠す場所など何一つありませんよ」

 

「代償。これは確かに私の我がままですが……そんなに嫌、ですか?」

 

「安堵。それではもっといっぱい洗ってあげます。しかし耶倶矢は、どれだけ唇の痕を付けたのやら。私も一つくらい、とは思いますが……今回はやめましょう」

 

「完遂。泡も丁寧に流して。――――次は、あなたの番です。私の体をその手で直に、今私がしたのと同じように、隅から隅まで清めてください」

 

「駄々。安心したい、あなたが生きているという実感を得たいのです。その肌の暖かさを、生きている優しい温もりを、どうか刻みつけて欲しい」

 

 

「私の躰、あなたが触れていない場所などなくなるまで、染め上げて………っ」

 

 

 

・誘宵美九の場合

 

「だーりん、どこですか、だーりんっ!!」

 

「あ………手が。ごめんなさい、また取り乱しました」

 

「だめですねー。もうだーりんが目の前にいないだけで、なにもかも見失っちゃいそうです」

 

「知ってたんですけどね、幸せ過ぎて忘れちゃってました。支えてくれるだーりんがいなければ、私って何やらかすか分からない本当に危ない女なんだって………」

 

「提案があります。一日、ほんの一日だけ、だーりんの時間を全部私にください」

 

「本当はもう二度とあなたを放したくない。あなたを失うかもしれない、あんな思いをもう二度としたくないから、ずっとこの屋敷に繋ぎとめて、逃がさない。あなたは愛情で満たされた腐海に沈む、一羽の籠の鳥だって」

 

「一日、一日です。そういう妄想の中で目いっぱいだーりんに甘えて。その幸せさとどうしようもなさを経験させてくれれば、きっと我慢できますから」

 

 

「…………即答してくださるなんて、本当にだーりんはお人よしです。そんなに優しいと、本気であなたの一生を奪っちゃいますよー、もう。だーりんの、おおばかぁ。大好き―――――」

 

 

 

・七罪の場合

 

「お疲れ様」

 

「ちゃんと、受け止めきった?」

 

「………そう。それだけみんな、あなたのこと大好きなんだから」

 

「え、私?」

 

「………」

 

「我慢してたに、決まってるじゃない………っ、本気で失くしたって思って、でも生きててくれて。あんな程度で、流し切れる涙なわけがないじゃないッ!?」

 

「ばか、ばかぁっ!!お姉さんなんて、言わないでよっ!ちょっとあなたと会うのが一番早かったからって、家族みたいだからって、あなたがいなきゃそんな繋がり、何の意味もなくなっちゃうんだから!」

 

「私だって、私だって……………」

 

 

「好き、好き。愛してる。だからずっと放さないで。お願い、私の傍にいて。約束――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

・しおりんの場合

 

「疲れたか?ほら何かしてほしいことないか?」

 

「病人じゃない、って?聞こえませーん、勝手に無茶した人のことなんて聞いてあげませーん」

 

「だから今は大人しく世話を焼かれとけっての」

 

「…………こんなナースのコスプレまでしてるんだから、恥ずかしいんだぞ、全く」

 

「はぇ、可愛い!?あーもうっ、聞ーこーえーなーいー!」

 

「ほら、ヨーグルト食べるか?食べるだろ、あーん!」

 

 

「……………本当に、無茶すんなよ。もう一人の体じゃないんだぞ―――――――――そうだろ、あなた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 以上。


 なんと謎のストーカー女の正体は原作ヒロインの一人鳶一折紙さんだったのだ!


 それはともかくどうだ今回は割ときれいな折紙さんだったろう?

………え、チョコに唾液とか血液とかケツ液とか入ってないかって?HAHAHA、完璧超人の折紙さんがチョコという熱消毒も出来ない食べ物にそんな不衛生なことする筈ないじゃないか!


…………こんな戯言吐くからいつまで経ってもきれいなサッドライプさんになれないんだろうなぁ。


 まあそんな感じで次回、プロローグにやっと時間が追い付きます。



 病気については解釈はご自由に。
 狂三編の後に実際こんな場面があったのか、それとも作者がトチ狂ってるいつものアレなのか。

 え、なんか一つ明らかにおかしいのがあるって?

 いいじゃん、可愛いっしょ?


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