デート・ア・ライブ 士道リバーション   作:サッドライプ

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 遅れて申し訳ない、帰省中につき更新できなかった
 スマホでちびちび書こうかとも思ったけど断念、フリック(というかタッチパネル)は長文書くものじゃないわ……。




あんこーる・びふぉあ・えんどろーる1

 

「まだ、ですか…………?」

 

「もうちょっとだ…………、うん」

 

「あの、士道さん、お願い手を……」

 

「ああ」

 

 四糸乃の小さな指に、自分のそれを絡める。

 震える指を押さえながら、その華奢な体重を預けてくる四糸乃を受け止め、その肌の温もりを分かち合う。

 浅い息を吐きながらもじもじと落ち着かなげな彼女を、士道は腰を動かして体勢を調整しつつしっかりと懐に収め直した。

 

「は…………、ぅぅ」

 

「四糸乃っ」

 

「だいじょうぶ、です。士道さん、が――――なら、私は頑張れますっ」

 

 小さい声で確かに強がる四糸乃は、本当に健気という言葉が似合うと思う。

 それこそ張り裂けそうな思いをしているのは想像に難くないのに、一生懸命に頑張っているのを見ると、一刻も早く終わらせなければと焦りそうになる。

 

 だが、違う。

 四糸乃の信頼に応えるなら、最後までしっかりと丁寧に致す必要がある。

 

 

 

「士道!あなた一体四糸乃に何をやって…………、え?」

 

 

 

 そう、よしのんの、洗濯を。

 

 ふおおおおん、と低く静かに唸りながら水流の中でうさぎパペットをかき混ぜている我が家の洗濯機を、切なそうにずっと見つめている四糸乃のお願いで傍にいて甘やかしまくっていた士道。

 

 四糸乃の精霊の力を封印してからこちら、霊装の力で汚れと無縁ともいかなくなった彼女は、埃も被れば汗もかく。

 毎日風呂に入る必要が出来たのは当然で、いつも装着しているよしのんも定期的に洗浄する必要があるのも当然だった。

 

 毎週洗濯を行うことを決め、多少の水道代のロスを覚悟で入れ換えた新しい水でよしのんだけを丸洗いし、乾燥機で素早く水分を落とす。

 超速でこなしても一時間程度掛かる作業中不安に駆られる四糸乃をスキンシップで宥めながら、士道はよしのんが破けたりした時の為に刺繍も覚えておこうかなあ、なんてまめなことも考えていたわけである。

 

 七罪で完全に感覚が麻痺しているので幼女がどうだのなんて考えは欠片も掠めることはなく、というか仲の良い兄妹のような光景とすればそもそも疚しい、いかがわしいことなど何もない。

 

 なのに怒りの形相で琴里が洗面所に飛び込んで来たのは、さて何を思ってのことなのやら。

 

「琴里さん…………?」

 

「え、あれ?」

 

「おう、琴里、どうした?」

 

「し、士道っ!!」

 

 恥ずかしさと怒りを半々にした顔の赤さを、呆気に取られて引っ込めた、そんな感情の変化をなんとなく察した士道はにやにやしながら惚けて彼女に問いを向けた。

 

「何考えてるのか分からんが、あまり興奮するのは健康にも精神衛生にも良くないぞ?」

 

「ふ……ふん!あなたが四糸乃に邪な欲望を抱いていないとも限らないでしょう?愚かな愚兄の愚行を止めるのは妹の義務よ!」

 

「俺と四糸乃の仲を邪推してそんな風に考えるなんて、いやらしい」

 

「なっ………!?」

 

「えっと、えっと―――士道さんは、変なこと、私にしないと思います……ぁぅ」

 

「やいやい、むっつりすけべー」

 

「ぐ……!」

 

 士道にからかわれ、それを四糸乃が期せずして援護した為に言葉に詰まる琴里。

 

 

 士道の前で黒いリボンを着けるようになり、強気できびきびした態度を取り始めて。

 

 話をした。

 

 琴里は人間から精霊になったこと。

 士道に力を封印され、感情の浮き沈みによって緩むそれを抑える為に自己暗示を掛けていること。

 何故かその詳細な記憶が無いこと。

 精霊に成り立ての頃に能力を暴走させて街を火の海にし、それによって〈ラタトスク〉に発見され、精霊を保護するその理念に賛同し英才教育を受けながら過ごしてきたこと。

 

 そんな色々とツッコミどころ満載(なんで司令官としての教育なんだとか両親はこのことを知っているのかとか)の話ではあったが、思い返せば士道の方は精霊達のことを安易に語る訳にもいかないので一方的に隠し事をする形になってしまう為、掘り下げるのは我慢した。

 

――――あんなに慕われて大事にされているのなんて、私が知っている通りの………おにーちゃんに決まってるでしょーよ……。

 

 冷静になるとこちらも隠し事をしていたのに琴里から士道へはそんなことを言って信頼を揺らがせなかったらしいことを知り、士道の側は一方的に兄妹の絆を疑ってしまったことが若干気まずかったが。

 それでもなんとか関係は見つめ直せ、琴里はこれからも可愛い妹であると再確認できた。

 

 そう、だから、これまで通り――――基本優しくして可愛がるけど、結構頻繁に悪戯したりからかったりする従来通りの妹の扱いなのである。

 琴里の方は口が悪くなったので士道も軽口をぽんぽん織り交ぜ応酬する。

 これまでそういう関係が周囲に無かった―――七罪達といつも一緒になってから特に男友達が士道に出来なかった―――ので、結構新鮮な感覚で案外楽しい。

 

 別に、黒リボンの琴里から当たりの強さと威圧感は感じなくもないが、それだけで彼女に頭が上がらないなんてことがある訳がないし。

 例えば色々な機微に疎く女の子のデートの予定やらその為のファッションまで妹に世話してもらうような状態だったらまた別の関係になっただろうが、今のところそんな予定は全く無い。

 

 だが、だからと言ってからかい過ぎると――――、

 

「そういえばこの間琴里の部屋掃除してたらまあなんというかアレな本が出てきてな、まあお年頃だし?机の上に並べて置いちゃってみようかなんて考えたけど情けで―――、」

 

 しゅるり

 

「うわああああああぁあぁぁぁぁーーーーー!!?おにーちゃんのいじわるーーー!!」

 

「ちょっ、リボン換えるの卑怯だろ……っ!?」

 

 まあ、こんな風にバカをやっている訳だ。

 

…………一つ言うことがあるとすれば、中学生になる妹の部屋で見つけたものが『完全ラブホガイド』『実録!最強ナンパ術』だったり、果ては『縛り方百選』だったりした士道の微妙な気持ちもお察しである。

 

 いや、当初の予定では組織的にバックアップして士道に精霊を口説かせるつもりだったらしいからその為と言い訳は出来るだろうが、最後の一つはどう考えてもアブノーマルな個人的趣味にいっちゃった感じである。

 性癖は個人の自由なので、暖かい目で見守ろうと思うのだが………四糸乃に悪影響があると困るのでからかいも兼ねて警告したりしなかったり?

 

「………、……?………?」

 

 このお馬鹿なやりとりも悪影響ではないかと言われれば頷くしかないが。

 四糸乃も一つ屋根の下で暮らすのでちょっとは自重しようとも思う―――黒リボン状態だと強がり過ぎて『ありがとう』の一言を放つのですら難儀する琴里がアレなので今後もお察しだが。

 

 

 

…………四糸乃も一つ屋根の下で暮らす、とさらりと触れた。

 

 

 そもそもなんでよしのんを士道の家の洗濯機で洗っているのかという話だが、彼女が住むことになったのが五河家の空き室だからだ。

 八舞姉妹の時同様行くあてが必要だった四糸乃だが、責任を取ると言った手前士道としても、そして七罪達精霊の思惑としても完全に信用するにはやはり難がある〈ラタトスク〉に丸投げという訳にもいかないし、かと言ってまた美九の屋敷に、というのも琴里達の立場が無い。

 また七面倒な交渉の果てに、落とし所としてそうなったというだけだった。

 

 色々と条件は詰めていたが、四糸乃本人にとってはある意味外野の話で大した制限は無い。

 出歩きは自由で士道が学校があるとはいえ出来る限り四糸乃に構わなくてはいけないことを考えると、美九の家に泊まることもそれなりにあるだろう。

 

 この日は、その挨拶を兼ねて初めて四糸乃が美九の家を訪ねる日だった。

 

 洗濯と乾燥を終えてぬいぐるみなのになぜか心なしテカテカしているように見えるよしのんを装着し、琴里に見送られて士道と共に出発した四糸乃。

 色々と知らないものが多くあれは何これは何それってどんなのとよしのんと共に士道に次々と問いかけながら街を歩いていくと、程なく目的地に到着する。

 

「大きい、それにきれい……」

 

『すごいねー、よしのんこういうの前テレビで見たよ、ゲーノージンっていうのが住んでるゴウテイなんだよね士道くんっ?』

 

「あー、まあ芸能人だな美九は、あはは」

 

 よしのんのなんとも反応しがたい発言に軽く笑いながら、勝手知ったるとばかりに門扉をくぐってそのまま玄関を開ける。

 士道が呼び鈴を鳴らすと家主の美九も住人の夕弦と耶倶矢も何故か怒るのだ、入口のドアにはベルが付いているのでそこを通れば分かるものの、それでいいのかとたまに思わなくもない。

 

 今回に限れば七罪も含め皆で玄関ホールで待ち構え出迎えしてくれたので違う話だったが。

 

「ようこそ四糸乃さん、歓迎しますー」

 

「は、はいっ、よろしくお願いしますっ」

 

『えー四糸乃、四糸乃。四糸乃とよしのんをよろしく清き一票をー、なんちゃって』

 

「好奇。よしのんはいったいどこで喋っているのでしょうか、初対面から割と気になっていました」

 

「ふふん、虚空の繰り手、ということであろう。夕弦と士道と波動を蓄えアヴァターを紡ぎ、同位相の舞台にて対抗するのも一興か」

 

「またキャラ濃いの増えたわね……士道そういう相手ばっか狙ってるの?」

 

「狙うかっ!それよりその言い方だと自分がキャラ濃いって言っちゃってるようなもんじゃないのか」

 

「悪かったわね、どうせ私なんてちっちゃい癖にクセばっか強い無駄に視界に入ってくる迷惑ナツミよっ!」

 

「それは言ってない!?………って、久しぶりだなこのノリ」

 

 話をよしのん任せにせず結構頑張っている四糸乃を、彼女達も歓迎してくれる。

 少しだけ安心しているとにこにこして四糸乃に応対している美九が一瞬視線を送ってきた。

 

「お世話になります……」

 

「お世話しますー。あ、遠慮とかいいですよぉ?だーりんのお願いですし、今度いっぱい埋め合わせしてくれるそうなのでー」

 

「あー、うん………」

 

 頭が上がらない、と言えば美九には本当に敵わないと思う。

 いや、精霊達全員か。

 堂々と何股も掛けていると言ってもいい士道と、いつか約束したように一緒にいてくれるし、そこに四糸乃という新しい女の子がまた増えてしまっても嫌な顔一つしない。

 愛されている実感と、それに応えなければという感情。

 とりあえず今回色々あった件の埋め合わせを一人一人色々考えなければならない、大変な仕事だ。

 

「そうだ四糸乃よ、我ら八舞がこの屋敷の全てを教えてくれようぞ!」

 

「案内。メイド八舞は屋敷のことで知らないことなど無いので、なんなりと」

 

「わ、わ……」

 

『あーれー。よしのん引っ張られてるよー』

 

 

「―――――」

 

 

 そして大事な仕事だ。

 手間だなんて、そんな発想すら過ることは無い。

 

 耶倶矢と夕弦に引っ張られて、仲良くなっていこうとしている四糸乃達を追いかけながら、士道は笑顔を溢していた。

 

 

 

 





 琴里が持っていた本のラインナップは原作公式(ドラマガ付録0巻)。
 美九セイレーンの後書きで触れた中二具合といい、なんでこんなに弄りネタに溢れてるんだことりん……

 そしてそうなると原作の琴里のデートアドバイスは女の子の視点という以外は殆ど本の知識であるという。



 やーいことりん頭でっかちむっつり処j(焼滅



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