デート・ア・ライブ 士道リバーション   作:サッドライプ

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 気が付けば連載開始から一年経ってた士道リバーション。
 なんかやるかー、でも丁度いいネタ無いしなー。

 とりあえず士道さんと七罪を同じ空間に置いといたら勝手にイチャつき出すからそれでいいや()


 そんな感じのお話。



初心忘るるべからず的なものではない何か

 

※えきまえ!

 

 

 買い出し以上デート未満。

 

 この日の二人の様子を形容するならそんな感じになるだろうか。

 適当な小物を買う用事があり、だがそれだけというのも味気ないのでという流れで昼下がりの駅前通りを歩く、士道と七罪。

 雑踏と言える程度には聞こえる人々の足音の動きに任せ、何か真新しいものでもないかと二人で視点をあちこちに向けながらぶらついていた。

 

「ビルの二階とか三階とか、見てみると意外に食事処多いよな」

 

「食べる店の割合が多いのは考えてみれば意外でもなんでもないけどね。

 ただ、居酒屋も焼き肉屋も私達にはあまり縁が無いから」

 

「あー、そういえばそうか。普段は普通に入る店とそうでないので分けて考えてる、か。ああいうのとかも」

 

「……?どれ?」

 

 まさに雑談といった会話を交わす士道と七罪。

 

「あっちのビルの階段降りた地下にある、って看板置いてるやつ」

 

「………ん、ネパール料理?確かに普段入らないわね」

 

「ネパールだからどうこうって訳じゃないけど…………おいしいものが食べたいっていうよりは怖いもの見たさで入る感じになるからな、どっちかっていうと」

 

「日本人の舌ってことなんでしょ。食わず嫌いじゃなきゃ問題ないんじゃない?」

 

「まあなあ。あと普段入らないって言えば………ホテル、か」

 

「、…………!?し、士道?」

 

 こうして街中の人々の営みの証を見るほうが自然豊かな光景より楽しいと思う辺り自分も現代っ子か、なんて感想を抱きつつ交わしていた話題。

 そんな中、士道はふと目に入った施設に視線を固定する。

 

 特に意図は無かった。

 

 地元民が地元の宿を使うなんて機会そりゃ無いに決まってるよなあ、なんてどうでもいい考えだ。

 

 ある意味そうでもないこと、そして“それ”の外見が全てお城みたいなものとは限らないことなんて――――仄かに顔を赤くしながら細めた目で見つめてくる七罪に気付いても、思い当たるには時間が掛かってしまう。

 

 

「……………、あ」

 

 

 正しく、それは『街中の人々の営みの証』と言えた、かも知れない。

 

 よく見れば表の料金案内が一泊単位だけでなく一時間単位でも書いてあった。

 いやもうそれの具体的かつ一般的な名称を敢えてここで述べることはしないが。

 

 

 間。

 

 

――――若い男女二人、男の方が“そういうホテル”を見ながら何やら考えている。

――――ついでに言えば、女というか少女の幼姿(誤字に非ず)は事案モノ。

 

 

 こう書くとあまりと言えばあまりな状況に硬直する思考。

 だがみるみる内に七罪の頬の赤みは増し、揺れる瞳は彼女がおずおずと士道のシャツを摘まみながら距離を詰めた分上目遣いになっていく。

 

 なんだか、なんというか、色々な意味で微妙過ぎる沈黙を破ったのは七罪だった。

 

 

「そ、その、士道。

………………はいる、の?」

 

 

…………。

 

「わああごめんごめんごめんなさいーーー!!?」

 

 この上なく恥ずかしげに首を傾げた仕草に、なんだか頭の中が白っぽくなる感覚でいっぱいいっぱいになりながら取り敢えず謝る士道。

 そして、何故かそれにうっすら涙を切れさせるくらいに衝撃を受ける七罪。

 

 

「わ、私となんて御免だっていうの―――!?」

 

「え?い、いや違うそういう意味じゃない、訳でもないこともなくもなきにしもあらずに吝かでもない、ていうか泣かないでーー!?」

 

「どうせ一緒に同じベッドに入ったってご休憩という名の激しい運動になんて絶対ならない貧相ぼでぃよ悪かったわね!しどうのばかーーーーーっ!!!」

 

 

 大声で過激に騒ぐ二人。

 

 なお、再記するなら場面は白昼の駅前である。

 このやり取りがどれだけ衆目を集め、そしてどんな感想を抱かれたか。

 

 せめて書かないことが彼と彼女への情けだろうか。

 

 

 

 

 

…………あれ?なんか違う。

 

…………ええい、やり直しだやり直し。

 

 

 

※えきまえ ていくつー!

 

 

 買い出し以上デート未満以下略。

 

 雑談しながら駅前を行く士道と七罪。

 この日は雑踏の流れに任せて移動、ということはしなかった。

 

「健全に、だよな!」

 

「ええ全く、健全以外の方向性なんてあるわけないわよね!」

 

 そういう会話をすること自体がなんだか不健全なのではないだろうかという疑問はさておき。

 駅からすぐの道を軽く一周するだけという目的を設定し、大きめの店舗に覗く対象を絞った。

 言うまでも無く迂闊な地雷を踏みたくない意識の表れだが…………その分無難というかいつも通りというか、慣れ親しんだ店ばかりを見ることになる。

 

「服屋に、CDショップ、本屋、雑貨………」

 

「んー。……今日はそんなお金使うって気分でもないわよね」

 

「だよな。冷やかしだけするか」

 

 なんとなくの気分を共有する七罪と士道は、言いつつもどこの店にも入ろうとはしなかった。

 入って気にいったり興味が湧いたものがあったりすると買ってしまいたくなるから。

 

 学生らしい安上がりな時間の潰し方だが、二人とも嫌いではない。

 必然乏しくなった話題で出来た間は、繋いだ手の体温と肌触りを互いに楽しむことで埋めていた。

 

 ぶらぶらと、歩く。

 しっかりと、指は絡める。

 

 何分か歩いて、道を急ぐ人々と何度もすれ違いあるいは追い越された頃だろうか。

 七罪がある一角を目に留めた。

 

 目が合った、というのが正しい言い方なのかもしれない。

 ガラスケースに閉じ込められた、丸々太ったネコ。

 それがぬいぐるみでも、そこに感情を絡めるのはあくまで主観なのだから。

 

 つぶらな瞳で、こちらに助けを求めているように見えた。

 少しだけ、心動かされてしまった。

 

 そんな七罪に、士道もすぐに気が付く。

 微笑ましく思いながら声をかけた。

 

「欲しくなった?」

 

「べ、べつに!お金使う気分じゃないって言ったばかりだし」

 

「いいじゃないか。可愛いと思うぞ?」

 

「?士道、ああいうぬいぐるみの趣味あったかしら?」

 

「え?いや、ぬいぐるみ見つけてついつい欲しがっちゃうのが、ってことなんだけど」

 

「…………。~~っ!?」

 

 理解が一瞬追い付かなかったのか、僅かに静止した後に真っ赤に爆発したような感情を面に乗せる七罪。

 そのリアクションに、つい士道も直前までの雰囲気に流されて浮ついたような戯言を言ってしまったことに気付く。

 

 とはいえ、一度言った言葉を引っ込めるなんて不可能だし、嘘ではないから否定する訳にもいかない。

 気恥ずかしさを振り切るように、士道は財布を取り出しながらガラスケースに近づいた。

 

「ちょ、ちょっと士道?別にいいわよ、あなたにお金使わせようなんてこと、考えてない」

 

「大丈夫だ、見とけって」

 

 察した七罪を落ち着かせて、士道はガラス越しにネコと向き合う。

 出費に関しては、このガラスがショーウィンドウなら少し考えただろう。

 だが、―――――ゲーセン入口のUFOキャッチャーの筐体なら、話は別だった。

 

 

――――宣告。士道<シド>さん舐めんな。

 

――――脆い檻の中で怠惰に肥え太った家畜を引っ張り出す程度、朝飯前どころか茶も買えぬ程度のコイン一枚で十分よ。

 

 

…………。

 

……………どっかの厨二病姉妹の電波が混線した気がするが、まあそういうことだ。

 

 うまく重心が安定していないとセンサーが反応して勝手にその場でクレーンが開くくせにがたがたと揺れまくるタイプのUFOキャッチャー、そのリズムや振れ幅を見極めてネコを所定の穴に叩きこむのに一発で成功したのは、色々な意味で黒かった士道の過去の賜物であった。

 

 心に多層構造の棚を作ってそういう事実をスルーすることにも慣れた(よくひっくり返される棚だが)士道は、足元の出口に転がってきたぬいぐるみを七罪にパスする。

 

「わふ。………もう、よかったのに」

 

「もう取っちゃったし。あれだったら適当に飾っといてくれ」

 

 気おくれしたようなことを言いながらも微笑むのは、曖昧に笑う士道のそれとよく似ていた。

 そんな七罪は、しかしふと考え込むように首を僅かに傾け、ネコの毛に顔を埋めるようにする。

 

 ぎゅう、と中の綿を圧迫しながらその細い腕でぬいぐるみを抱きしめるその姿。

 それに対して抱いた感想に対する、確認だったのだろうか。

 

「ねえ、士道。もう一回、可愛いって言ってくれる?本当にかわいいって、思ってくれてる?」

 

 顔の下半分を隠しながら、ネコと一緒に見上げてくる七罪。

 あざとい仕草とは裏腹に、実は内心『やっぱりいざ実際にぬいぐるみと一緒にいさせると、自分じゃ別に可愛くないんじゃないか』なんて心配をしているのがこの精霊娘だったりする。

 

 ああもう反則じゃないか、と士道は思う。

 そんな不必要に後ろ向きな不安ごと抱きしめたいと思わせるのが、士道の大好きな七罪という女の子。

 さすがに街中でハグに振り切ったりはしないが、嘘ではない、否定するなんてとんでもないその気持ちを伝えるのに躊躇いはなかった。

 

 

「ああ。―――――可愛いよ、七罪」

 

「………!ふふ、ありがと士道。うん。えっと、その。

――――――――しどうも、かっこよかったよ?」

 

 

 無邪気に、幸せそうに笑う少女。

 そんな彼女との間にある軽く暖かいふわふわの空気だけで、誰でもその絆を察せる少年。

 

 

 

 なお、再記するなら場面は白昼の駅前である。

 このやり取りがどれだけ衆目を集め、そしてどんな感想を抱かれたか。

 

 せめて書かないことが、彼と彼女………以外の通行人達への情けなのだろう、か?

 

 

 

 

 

…………あれ、やっぱりなんか違う。

 

…………ほんのり微糖のつもりだったのに、なにこの低脂肪乳だと思って飲んだらカルピス原液の飲むヨーグルト割り。

 

…………ちょっとシチュ変えてあっさりめで行こうか。おとなつみさんなら大人しく大人らしく自重してくれるはず!(フラグ)

 

 

 

※あんこーる・びふぉあ・えんどろーる2につづくおはなし

 

「士道?しどうー?……………あっ」

 

 午睡と呼ぶにまさに相応しかったであろう。

 

 家主もメイドもいない休日昼下がりの誘宵邸で、気持ち良さそうにソファでうたた寝をしている士道を、七罪が見つけてしまった。

 まあ見つけてしまったも何も、少し前まで士道と二人でゆっくりしていて、僅かに七罪が席を外していた間に意識を飛ばしたらしいことに、戻ってきて気付かない筈がないのだが。

 

「すう…………」

 

(…………しー、よね?)

 

 安らかな顔でまどろむ士道の眠りを妨げるのも本位ではなく、自分の口を自分で塞ぎながら物音を立てないように気をつける七罪。

 だが美九の家の馬鹿高価(たか)いソファに埋まるようになっている彼の眠りが、その体勢同様とても深いのを確認すると、苦笑しながら近づいていった。

 

「もう、風邪ひくわよー?」

 

 ぷす。

 

「ふにゃ」

 

「あはは、『ふにゃ』だって。何言ってるんだか」

 

 つんつん。

 

「ん、あぅ…………」

 

「可愛い………、って、だめだめ。あんまりやったら起こしちゃうでしょうが」

 

 ふと湧いた悪戯心を刺激されながらも、すぐに自重して引っ込める。

 直前まで士道の頬に触れていた手は、無意識に自分の顔、唇のすぐ横に当てながら。

 

 でも、とその考えがある心配に及ぶ。

 いきなり風邪を引く、なんてことは実際そうそう無いだろうが、少し無理な体勢で寝ているので起きた時にどこかが痛くなるかもしれない。

 些細な日常の痛みでも、他ならない士道が痛がっているのを見て愉快な気分になる筈もない七罪は、どうしたものかと憂いげに思案した。

 

「ベッドに運ぶ?でも、士道よりふたまわりはちっちゃいこのナリで無理に抱えたら余計どっか痛めさせちゃうだろうし…………そうだ」

 

 

「――――――〈贋造魔女【ハニエル】〉!」

 

 

 優しく淡い光が七罪の体を包み込む。

 癖の直らない長髪は艶めいたストレートに、矮小と評した背丈は士道よりもなお高く伸び、それでいながら殆ど広がらない腹のくびれが膨らんだ胸元や妖しげな腰から尻のラインを強調する。

 もともと着ていたラフな淡黄色のワンピースもサイズの調整は当然されているが、一部張った布地の動きから受ける印象は百八十度変わってくる。

 

 “およそイメージ出来る限りの最高の美人”。

 

「これでよし、っと。そういえばこうなるのも久しぶりな気がするわね」

 

 すれ違う人の誰もが振り返る美貌を異能で纏う、その目的は―――――、

 

 

「うふふ。さあ、士道くん?お姉さんがいかせてア・ゲ・ル……っ」

 

 

 エロいこと………ではなく。

 僅かも揺らす事なく優しく横抱きにして士道を持ち上げ、そのまま移動する―――ベッドまで行かせること、ただそれだけ。

 

 世の女性が目を血走らせて嫉妬し、世の男性が目をぎらつかせて欲情するような肢体の用い方としてはあまりなようにも見えるが、当人はそんなこと思いつきもしないだろう。

 

 本当の自分を可愛いと、本当の自分の方がいいと言ってくれた人がいるから。

 乖離しかけていた自分を見つけて、優しく見つめてくれる士道がいるから。

 

 一時期は自分という概念基盤<アイデンテティ>すら崩しかけていたこの変身も、今では少々便利なもの程度の認識でしかなかった。

 

 その長い手足で部屋を移動しながら余裕を持って運び、この家でおそらく最も気合を入れて整えられていると思われる士道用のベッドに優しく横たえる。

 『士道が寝るから』、それだけで洗濯の仕方やシーツの掛け方に八舞姉妹の微笑ましい努力が見える寝床はやはり居心地がいいのか、覚醒してもいないのにそこに置かれてすぐ無意識にシーツに体を擦りつけるように90度寝返りを打った。

 

「まったく、無防備なこと。お姉さん、心配になっちゃう」

 

 それにしても疲れていたのだろうか、慎重に慎重を重ねて運んだことで目的を果たせて良かったとはいえ、それでも目を覚まさないあどけなさが強く印象に残る士道の寝顔に苦笑しながら、七罪はそっと掛け布団で覆った。

 

 士道と、その懐の位置にお邪魔した自分の体の上を。

 

「悪戯されても知らないわよ?………なんて、ねっ」

 

 どうにもこの姿だと無根拠な自信が湧いて大胆になってしまう癖だけは抜けない。

 だから――――と、どうせ変身していなくても恥ずかしがり躊躇いつつも結局はやったであろう同衾を内心で正当化する七罪。

 

 すぐ傍にある士道の体温に安心と幸せを得ながら寝転がる彼女は、彼と同じ夢の世界へ行く為にゆっくり意識を落としていく。

 

 

「士道くん。…………士道、だいすきよ。だからあとで起きたら、おねーさんのこといっぱい甘えさせてね?」

 

 

 それだけ言って完全に眠る彼女の表情は、その大人そのものの美貌と裏腹で。

 いつもの幼げな七罪の士道への無条件の信頼が乗った、甘えたがりの少女の顔だった。

 

 

 

 

 





 あっさりめ(微糖)

……………ま、こんなもんだろ!

 しかしこの作品も早くも一年経っちゃった訳で、いやだからなんだと言われればそうなんだけども。
 ぶっちゃけ今さら言えないよねー。


 サッドライプが一番この作品で性格掴めてないのって実は七罪で、そのくせ今回みたいに士道さん好き好きで暴走しまくるから一番扱いにくいのも七罪ってのは。


 じゃあなんで七罪を最初の攻略精霊(メインヒロイン)にするような話にしたんだってことなんだけども、あと半年早く書き始めてたら…………あ、メインヒロイン美九だ(監禁洗脳エンド確定)
 うむ、逆にあと半年遅く書き始めてたら、…………折紙さん?(監禁凌辱エンド確定)



……………。

 七罪さんマジ七罪さん面倒だけどメインヒロイン可愛い(手のひら高速回転)



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