デート・ア・ライブ 士道リバーション   作:サッドライプ

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 あけおめ!

 今連載中のやつが、次回かなり鬱な話になるんで()ちょっと糖分もといエネルギー補給。
 結局2016年は更新しなかったこの作品、果たして連載再開はあるのか………?

 あーあどっかの誰かが凜祢アナザーリバーション完結できたら続けるつもりだったんだけどなー。


 あ、ちなみにこの話の時系列はまたまた狂三編後、原作時間軸直前の大晦日になります。





かうんとだうん・くろっく

 

 冬といえば?

 そう訊かれた時に、時節で回答する人間はあまり多数派とは言えないだろう。

 

 世間一般に冬とされる期間に行われる時節行事としては、冬至・クリスマス・年越し・成人式・節分などが挙げられるが、一般的に冬最大の特徴である寒さに関係する回答が最もポピュラーなものになるのは間違いない。

 ストレートに寒さ、あるいは雪。趣味が高じている人ならスキーやスケート、食い意地が張っていれば鍋や旬の魚。

 

――――では、この時五河士道という少年にその問いをぶつければ、何と答えるのか?

 

 

 

「冬と言えばこたつ、これ一択だろ……」

 

 

 

 八畳ほどはある五河家の士道の自室、ベッド脇のフローリングの上にはマットを敷いた上で部屋の主の発言通りのものが鎮座していた。

 艶出しコーティングされた木製のちゃぶ台と、その足を覆い隠すような分厚い布団。

 ちゃぶ台のクリーム色に近い天板の底は遠赤外線発生装置、上にはざるに盛られた橙色の温州みかんが積まれていて、其処でパソコンデスク横に置かれたテレビと向かい合うように足を突っ込んでいるいかにもな体勢が現在の士道の姿である。

 こたつから出ている服装もジャージの上に臙脂色の半纏という、非のうちどころのないくつろぎ体勢であった。

 

 ちなみに時節の件に話を戻すと、一年が切り替わる正にその数時間手前、性急な太陽が姿を消した夜空に乾いた寒風が吹き抜ける大晦日である。

 年明けは七罪達と盛装をして初詣に出かける約束をしているが、流石に年越しくらいは家で家族と迎えるつもりだった。

 根は善良で―――たとえ『見目麗しい少女を周囲に四人も侍らせて』『しばしば女性の家に泊まり込んでいる』としても―――真面目な…たぶん真面目な士道だから、大晦日に外泊の予定は入れていなかったのだ。

 

…………だが、しかし、である。

 

 海外で仕事をしている両親が戻れないのは慣れたことだし致し方ない。

 しかし妹の琴里までもが急な友人の誘いだとかで今日は帰ってこないことが決まってしまったのだ。

 

 勿論外泊連絡をされた時に引き止めはしたが、電話越しの説得の効果なんてたかが知れているし琴里の意思も固そうだった。

 直接面と向かって話せば結果は違ったかも知れないが、生憎本日昼間の天気予報はところにより空間震であった為、ばらばらに避難したせいで彼女の顔を見たのは朝彼女が出掛ける前が最後だった。

 

「……しょうがないか」

 

 ぐっ、と伸びをしながら一人ぼっちで過ごす年末を割り切り、僅かな眠気を感じながらテレビ画面を眺める。

 画面の向こうでは巨大なフルーツを被って変身するという斬新なヒーロー同士が激突し、士道の手元にはレンタルビデオ屋の袋とDVDケースが置かれている。

 

「年末の特番はなあ。歌合戦は興味無いジャンルの歌も大量に流れるし、笑っちゃいけないもいい加減飽きるし。

…………コータさんかっけえ」

 

 家族でわいわい見る分にはそれでも良かったのだが、どうせ一人だからと。

 士道は時節全く関係ない映像観賞を楽しんでいたのだった。

 

 流れているのは裏切ったかつての仲間が自分の身体をボロボロにしながら襲いかかってくるのを、それでもなんとか止めようと必死になる主人公のシーン。

 自分が必殺技を受けるのもお構いなしに相手の身体を蝕む変身アイテムだけを砕きながらの訴えに、思わず深く頷いてしまう士道。

 

「引き返せる……これからどれだけ長い道のりを歩いていくと思ってるんだよ、か」

 

 何と関連付けたかは、彼自身にも分からない。

 だがその感動の余韻のまま、士道はリモコンを操作し意識を失った主人公を映しながら次回予告に入った映像を停止させたのだった。

 

 小休止と思ってそのまま背を倒すと、心地よく意識が沈んでいく。

 電灯もこたつも付けっ放し―――流石にこたつにタイマーは掛かっているが―――この気分のまま寝落ちするのも悪くない、なんて考えてはいたが。

 

 

 

「ばあ」

 

「のわっ!!?」

 

 

 

 突然前触れもなくのしかかる、明らかにこたつのそれではない増えた重みに眠気が一瞬で吹き飛んだ。

 ぱっちりと開いた視界に飛び込んでくるのは、フリルによる装飾がひらひらした黒い衣装と赤と金時計の双眸の光。

 そして密着するほっそり引き締まりながらも心地よい柔らかさを伝える肉体の感触に、慌てて士道は起き上がろうとした。

 

 精霊の力で抑え込まれては、そんな咄嗟の人間の抵抗などあってないようなものだったが。

 

「はぁい士道さん、こんばんわ」

 

「くく、くるみっ!?いきなり何、くぁぅ……っ!?」

 

 すりすり、ふにょん。

 こたつどころか半纏の中に潜り込むような密着具合で、わざとらしく身じろぎする精霊の急襲に一瞬で士道の肌は興奮と気恥かしさと混乱によって真っ赤になる。

 

「ふふ、可愛いですわ。食べてしまいたいですわ」

 

 そんな彼の顔を両手でそっと挟み、至近距離で色っぽい挑発的な視線を接射してくる、新学期に強烈な記憶と印象を残してすぐ学校を去ったクラスメイトの少女。

 周囲はともかく士道としては彼女のことをそこまで悪し様に思ってはいないが、その奇特さをどう思っているのかあれ以来一人きりの時間にたまに現れてはちょっかいを掛けてくるのがいつもだった。

 

 特殊災害指定生命体―――『精霊』として神出鬼没が常とはいえ、流石にここまで唐突、かつ過激なのは初めてだったが。

 長い前髪が触れてくすぐったくなるほどの距離だから分かる、きめ細やかな白肌に散った朱がとても綺麗で、思わず無意識にごくりと唾を呑む。

 

「「…………」」

 

 そんな士道と暫し見つめ合い、自然に唇がついと動く。

 それが一瞬はっと静止し、吐息と共にその接吻は士道の耳へと落とされた。

 

「危ないですわ、油断も隙もありませんわね士道さん。危うく封印されてしまうところだったではありませんの」

 

「え、えぇ……?」

 

 朱を振り払うように一旦士道から離れ、マットの上に膝を崩した狂三がからかってくる。

 唇と唇のキス―――士道に何故か備わっている精霊の能力封印のトリガーに突然掛けられた甘い言いがかりに困惑しながら、士道も上体を起こしてこたつの天板に肘を乗せる。

 

 明らかにわざとやっているであろう、狂三の艶めかしい唇を指でなぞる仕草を意識しないように意識しながら、とりあえず遅ればせの挨拶を返すことにした。

 

「こんばんわ狂三。今日は……その、どうしたんだ?」

 

「あら、つれない士道さん。わたくしが折角独り寂しく年末を過ごしている士道さんに悪戯しに………こほん、慰めてさしあげようと参りましたのに」

 

「今絶対わざと言い間違えたよな?」

 

「あらあら」

 

 ころころと笑み崩れながら、受け流して狂三はこたつに入ってきた。

 自室に置くこたつということもあって小さめのサイズの為、ついさっきほどではないが距離が近くなる。

 その間の空間にリモコンを掲げて、彼女は問いの答えを返した。

 

「一緒に続き、観ませんこと?」

 

「……いいけど、狂三は途中からで話分かるのか?」

 

「解説の五河士道さん、よろしくお願いします……ふふ」

 

「はいはい、よろしくな」

 

 

 

 

――――。

 

『言った筈だ………お前なんかただの金メッキだってな!』

 

 既にストーリーは最終盤だった為、それから全てに決着のついた最終回までディスクの入れ替え含めても二時間前後だった。

 

 その長いような短いような時間、ごくごく普通の同級生の友人のように二人並んでレンタルビデオを観る、平和な空気がそこにあった。

 士道がみかんの皮を剥くと、横で突っついてきては無言で目を閉じ口をあけて“あーん”を催促したり、ついそれまでの話の筋を辿る中で熱く語ってしまう士道に優しい目で相槌を打ってあげる、そんな美少女をごくごく普通の同級生の友人と呼ぶべきなのかは酷く怪しいが。

 

 

――――それでもその平和な時間の暖かさは、あるいは時崎狂三がどれだけ求めても手に入るわけは無かった筈のものだと、五河士道は知り得ない。

 

 

「――それでいい。それでこそ士道さんなのですから」

 

「?どうした、狂三?」

 

「いえいえ。ほら、もう十二時を回ってますわよ?」

 

 映像を観ている間に夜もすっかり更け、狂三に指差された備え付けの時計の上で長針が短針を頂点で追い抜いていた。

 前の一年が終わり、次の一年を迎えた一瞬は、実際にはなんでもない時の流れの一滴ではあるのだけど、それでも律義に士道は頭を下げる。

 

「あ、本当だ。………あけましておめでとう、狂三。今年もよろしくな」

 

「はい、あけましておめでとうございます、士道さん。

 それでは、わたくしはこれで」

 

「……もう行くのか。それじゃあ、またな」

 

「引き止めてくださっても―――いえ、夜が明ければ七罪さん達と約束があるのでしょう?

 寒いですから、それまで布団でゆっくり暖まってお休みくださいな」

 

「ああ、ありがとう――――――」

 

 未練はあるけれど、残念ながらここでお開き。

 士道の肩にそっと手を掛け、そのまま少し引かれる後ろ髪を翻し、現れた時と同じように早業で窓を開閉しながら士道の部屋を去り、年明けの夜の街へと飛び立つ狂三。

 

『――――て、ああっ!?』

 

「あらあら、すぐに気付きましたのね」

 

 狂三の露出のあるドレスが乾いた夜風を浴びるのを遮るのは、霊装ではなく士道から剥がしてくすねた臙脂色の半纏である。

 もこもこで狂三では袖が余る大きな綿の防寒具、当然狂三の雰囲気や衣装にはアンバランスだった。

 凝ったドレスを好むお洒落にこだわりを持つ狂三だが、しかし今はそれを脱ぐつもりはない―――少なくとも士道の残した肌の暖かさが残る内は。

 

「………」

 

 その温もりを堪能し、自然に幸せそうな笑みを溢しながら、ふと狂三は士道の上に姿を見せる直前、タイミングを伺いながら聞いた科白を思い出した。

 

――――どこで間違ったかは分からない、けどそんなに昔のことじゃないと思うんだ。

――――引き返そうぜ、これからどれだけ長い道のりを歩いていくと思ってるんだよ。

 

「さて……わたくしはどうなのでしょうね」

 

 万を数える命を殺めた最悪の精霊〈ナイトメア〉、それが人間が狂三を呼ぶ名前。

 狂三自身、そして有象無象はもう自分を手遅れだと、救いようなんてないと思っているのだが、あの五河士道という奇特な少年は別の意見を持っているのだろう。

 

 そんな士道になら、あるいは封印されてもよかったのかも知れない。

 そう心のどこかで思っていたから、危うくキスしてしまいそうになったのだろうか。

 

「無粋、ですわね。今日の目的は果たしたのだから取り敢えず良しとしましょう」

 

 士道の半纏の襟に頬を埋めながら、そう一人ごちる。

 

 今日の目的。

 士道から掠め取った半纏……は確かに戦利品だが、そうではなく。

 士道と一緒にビデオを観ていた時間……も幸せだったが、それ以上に。

 

「今年一番に士道さんに触れたのはわたくし。

 今年一番に士道さんと言葉と挨拶を交わしたのはわたくし。

…………なんて、時間を操るこのわたくしが言うことほど滑稽なこともないのかもしれないけれど」

 

 ちっぽけなことなのに、不思議に心を満たす充足感。

 それを持て余しながら、狂三は士道の家の方をもう一度振り返り。

 

 微笑んだ。

 

 

「あけましておめでとうございました。

 あなたが無事な一年を過ごせますよう、無駄な祈りを捧げておいてさしあげますわ」

 

 

 






 なお、

・未確認飛行物体にアブダクション
・可愛い妹が本性を現しその厨二っぷりをカミングアウト
・ゲーセンで逆一目ぼれだけどロリナンパ
・痴女の自宅に拘束され、危うく逆レイプ
・何故か演じる羽目になる(周囲の女全員が観賞)悪の女騎士風の精霊に人質に取られた悲劇のヒロイン

 等々が半年経たないで士道さんの身に降りかかった模様。
 無事な一年?本当に無駄な祈りですありがとうございました狂三さん。

………ところでさ、ぶっちゃけこの作品の書き方結構忘れてるからアレなんだけどさ、


 きょーぞーさんってこんなにデレデレだったっけ?


 キャラ崩壊とか言われたら素直にごめんなさいします。
 いつもの病気ということでここは一つ。
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