カーンカーンカーンカーン
辺り一帯にまき散らされては音源が増えていく鐘の音はある事実を住民に知らせる合図だ。
「今日のちくわが降る時間か……」
もっと寝ていたい気持ちを抑えて手早く準備をして外に飛び出す。貴重な収入を無駄にしたくはないから必死である。
決められた場所まで移動したら日金稼ぎに来た連中と共に適当に準備をする。
といってもちくわ大明神を崇める教会の連中が用意した清潔な布を広げるだけだが。
「空に浮かぶでっかい工場はいったい誰が建てたのかねー?」
「ちくわ大明神じゃねーの?あと工場って言うな信者に聞かれたらうるせー説教が待ってるぞ?御神体がどうとか」
「違いねーな」
カーンカーンカーンカーン
くだらない雑談をしていると二度目の鐘が響き渡る。
つまりちくわが降る時間だ。
鐘の音が聞こえなくなった時には工場――御神体からのファンファンという神の声とやらが響き、準備した場所に大量のちくわが降り注ぐ。
「雨季じゃねー時期は毎日見てるけどやっぱすげー光景だな」
「ここの都市の住民数の倍の数らしいからな」
「あー朝と夜の両方食べるためのお恵みだっけ?ちくわ大明神様は一日一本でいいとか言ってなかったか?」
「信者は毎食食べるそうだ。ほら終わったみたいだから運ぶぞ」
「へいへーい」
布ではなく地面に落ちたものを避けて、布の上に落ちたちくわを5本ごとにまとめた後に袋に入れる作業だ。これがまた面倒な作業だ。
「あー、早く雨季来ねーかな。雨季が近くならねーと仕事なくて暇なんだよなあ」
「他所の都市との交易はその時しかできねーからなあ。次の雨季はいつだっけ?」
「3か月後。全くモンスター共さえいなけりゃ定期的キャラバン出せるのによ。あいつら滅ぼせねーのか?」
「そんなに言うならお前がやれよ」
「無茶言うなや。そんな力あるなら防衛隊にでも入ってるわ」
「違いねえ」
だべりながら作業を進めていって今日の作業が終了する。
「慈悲深いちくわ大明神様はきっと色付けてくれるに違いない」
「慈悲深いちくわ大明神様は平等ですので全員の賃金に色を付けてますよ」
「値段変わってねー」
小金を稼いだら都市の端に向かい、交易用の作物の調子を見に行く。
「調子はどうだい?」
「おー、あんちゃん。何事もなければ雨季前には収穫できるよ。湖の水に濁り無しってね」
「ほー、それはいい。おっちゃん手伝おうか?」
「いらんいらん。それより湖の様子見に行っておいで。モンスター共はいないだろうけど念のためにね」
「防衛隊もいるんだから心配性だなあー」
そう言いながら湖の方に向かう。
湖には俺の船もあるついでにメンテナンスでもしようか。
軽く港の散策をしながら雑談をしたりちょっとした手伝いやらをした後、俺の船にたどり着く。
「はやく雨季が来ねーかな…。おめーもひとっ走りしたいだろ?」
大型輸送船レインシップ
雨季の時だけ出来る大河を渡って他所の都市に行くための俺の船だ。
「船長ー。船に話しかけてるのキモイすっよ?あと来たなら掃除手伝って下せえ」
「掃除じゃねえメンテナンスだ」
ああ、はやく雨季が来ないかな。