とある科学の亜空切断   作:ガギャギャァッ!!!

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導入です


1話

学園都市(がくえんとし)』。

 

 東京都西部に位置する完全独立教育研究機関。あらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、総人口約230万人の八割を学生が占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端科学技術が研究・運用されている街。そして特筆すべきは、科学による超能力の開発が時間割り(カリキュラム)として行われている科学の街であるという事。

 

 そしてそんな街のとあるビルに、深く溜息をつく男が一人。

 

 

 「…はぁ」

 

 

 

 

 この男は『メンバー』という学園都市に存在する暗部組織ーーー学園都市の裏で暗殺や破壊工作などの任務を請け負う組織ーーーの一つに所属しており、このビルを密かに根城としていたとある組織の壊滅が今回の任務である。だがそんな男の周りには、誰もいない(・・・・・)。まるで初めからそんな組織は存在しなかったかのように。

 いや正確には一人、組織の人間が息を潜めているのだが。

 

 ーーー男がこちらに背を向けている今なら確実にやれる。そう考えた生き残りは男に拳銃を向ける。

 

 

 

「ーーーなんだ、消し損ねていたか」

 

 

 

 そう言って、男が手を振った瞬間にその生き残りは反撃も出来ずに。悲鳴も漏らさずに、消えた。

 ーーーそんな異常な現象を発生させた男は、またもや大きな溜め息をひとつ。

 

 

 

「……」

 

 

 その男は、極度の面倒臭がりでありながらも、その反面仕事を生き甲斐とする、矛盾を孕んだ人間であった。

 男は彼の上司たるとある老人に連絡機器越しに話しかける。この街の学生は携帯電話を無料で使えるため、ほとんどの学生が所有している。その代わりにゲーム等は出来なくなっているが、電話やメール機能なら問題なく使えるのである。

 

 

「終了だ。すぐ戻るから待っていろ。奴等が持っていた資料も、必要なものはすべて回収してある」

 

 

『ああ、分かった。だがその連絡は必要かね?どうせ毎度一瞬で戻って来るのだから報告の意味が……』

 

 

「生憎だが、俺はこういう性分なんだ。もう切るぞ」

 

 

 『まだ話は……』

 

 

 男は電話の主との話を強制的に打ち切った。なぜなら、こうなった相手の老人は、話がとても長いからである。やはり年齢のせいであろうか。男は一刻も早くここを出たかったのだろう、電話を切ったあとに、すぐさま演算を開始し能力を行使し、その直後、男の姿はその場から搔き消えた。

 

 

 

 

 

 

▼▽▼

 

 

「ーーーこれはまた随分とタイムリーじゃん」

 

 近くのビルから轟音が響いた、と通報を受けて来てみれば、何ともまぁ酷いことになっているものだ。

 

 学園都市における治安維持組織教員で構成されており学校外での事件を管轄する、言うなれば戦うボランティアである『警備員(アンチスキル)』に所属しているとある女性は少し現実から目を背けようとしていた。まさか自分達が到着した瞬間に廃ビルが崩れ始めるとは正直考えてもみなかったし、そもそも何があってこうなったのか。取り敢えず現状確認だ。そう考えて、彼女は同僚の一人に尋ねてみる。

 

 

「まったく、こんな朝っぱらから……ところで、怪我人は出たじゃん?」

 

 

「出てねぇよ、幸いにもゼロだ。……俺だって困惑してるが、とにかく調査だ調査」

 

 

 どうやら皆驚いているらしい。確かにこれまでも様々なケースがあったが、着いた瞬間にビルが崩壊するというのは初体験だ。そんな体験はお断りだ、と少し毒づきたくなるが、そんな事をしていても仕方がない、というか時間の無駄であるし、同僚も丁度少しずつ落ち着き始めたので調査を始める事にした。だがそのためにはまずこの騒ぎに混乱している一般人達をどうにか落ち着かせて、早急に避難させなければならない。

 

 

「はいはい落ち着いて!ここからは我々警備員(アンチスキル)の仕事だから落ち着いて日常生活に戻るじゃん!」

 

 

「はーい、とにかく落ち着いてこの場所から離れてくださーい。まだ百パー安全だとは言えないんでねー」

 

 

 

 そんなこんなで協力して一般人達を避難させた後、今度は崩れたビルの調査を始めるが、やはり夏真っ盛りのこの日に瓦礫の撤去は中々に来るものがある。流れ出る汗を拭いながら何か少しでも手掛かりになるものはないかと探すも、ビルの倒壊の影響で大半が壊れてしまっているため、情報はそう多くなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、皆がこれは事故であると決定づけようとした中。彼女は偶然、損傷が少ないボイスレコーダーのようなものを発見した。

 一応、電源を入れてみよう。……問題ない。ちゃんと動く。

そう判断し、同僚に問いかける。

 

「おーい、瓦礫の下にボイスレコーダーを発見したじゃん。損傷も少ないからまだ使えるぞ、ここで流すか?」

 

 

「あぁ、一度流してみてくれ。音が聞き取りにくいなら戻ってから解析しよう」

 

 皆の了承も得たし、早速流してみよう。そう考えて、録音履歴の最も新しいものを流すが、それから聞こえてきた音声は、これが事故である、という皆の認識を根底から覆すものだった。

 

 

『た、助■■く■!全■■の空間移動能■者(テレポーター)に殺さ■■……あがッ』

 

 

 そこから聞こえるのは断末魔の嵐。一部にノイズが走って聞き取り辛いものの、それでも内容は今までの彼らの経験から容易に把握できた。そして音声の背景に、コンクリート等の比較的硬いもの、つまり内壁や柱が破壊される音、恐らくビルが崩壊した原因はこれだろう。

 

 

 つまり、その憐れな男が遺した音声は、このビルの倒壊は人為的に引き起こされたのであろう事。そして、このビルで人が殺された事を物語っていた。

 

 

「……嘘だろ?だってここにゃ死体は一つも無かった筈だ。その死体はどこに消えやがった?そんで……これをやった能力者ってのは、誰だ?」

 

 

「……ここで考えてもわからないに決まってる。とにかく、もう少し手掛かりを探してから支部に戻るじゃん。それでわかる事があるかもしれないし、な」

 

 

 

 

 ーーーこれは忙しくなりそうだ。と、黄泉川愛穂(よみかわあいほ)は不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

▼▽▼

 

 

 まさか自分の仕事の不手際で警備員(アンチスキル)が動く事態になっているとは露知らず。真珠空白(しんじゅくうはく)は能力を行使し、彼が所属する暗部組織、『メンバー』の拠点へと戻ってきていた。

 

 

「お疲れ様、第8位さん。まぁそんなに疲れてないとは思うけどね」

 

 

「相変わらず仕事が早いな、真珠」

 

 

 ーーー帰って早々、他人と会ってしまったな。真珠空白は思った。

そもそもこの男が人と関わるのは基本的に仕事上のみである。

理由は単純、面倒だから。それを知ってか知らずか、今目の前にいる同僚二人、痩せ型の査楽ーーー己と同じ空間移動能力者であるーーーと、小太りの馬場芳郎(ばばよしお)はそれ程自分に話しかけては来ず、話しかけてきても精々こんな社交辞令の如き労いだけ。彼らは少なくとも、裏で他人と気さくに話が出来るような明るい人間では無いのだろう。もっとも、表でどんな人付き合いをしているのかは知らないが。

 

 

「有難う、ではこれで。俺は報告があるのでな、そこを通してくれ」

 

「おっと、済まないね」

 

「悪かったな」

 

 

 それこそこんな風に、彼らは意外と物分かりが良い。自分が超能力者(レベル5)である事も理由なのかもしれない。機嫌を損ねればすぐに殺されるとでも思っているのだろうが、己を害さない限りはそんな事は滅多に無いと言っても問題ないまである。寧ろ、彼らは自分にとっては(・・・・・・・)比較的害の無い存在であるとまで考えているが、結局、どこまで行っても関係が深まることはないだろう。別に彼らのことを嫌っているわけでもないが、それと同時に彼らを好いているわけでもない。彼らも同じはずだろう。

 

 

 

 その後、真珠空白は一応自らの上司に当たる科学者の老人のもとへと歩みを進めるが、と言ってもやはりあの老人も男にとっては面倒な人物である。老人だからか、やたらと話が長いのだ。正直なところ顔を合わせたくないので電話で済ませる事にし、電話をかける。何やら面倒な小言を言われはしないかと不安に思っていたが、ふと、そういえばこれまでずっとそうしていた事を思い出して安心を覚えた。

 

 

 

「戻ったぞ。資料は査楽達に渡しておくつもりだ」

 

 

『やはり戻るのが異様に早いがそれは置いておこう、御苦労だった。ーーーあぁ、それともう一つ。君の今回の仕事が警備員(アンチスキル)に発見されている。……何かあったのかね、珍しい事もあるものだ』

 

 

「……、俺の不手際だ」

 

 

『いや、そう気にしなくとも良い。どうとでも揉み消せる。疲労が溜まっているのなら何かしら薬を……』

 

 

「そうか、苦労をかける。もう報告は終わりだ、切るぞ」

 

 

『まだ話は終わっていないぞ。それに、毎回連絡を電話で済ませるのはやめろと毎度……』

 

 

 またもや老人は最後まで話せなかった。が、今の男にとってそんな事はどうでもいい事だ。ーーー流石に、大雑把過ぎたか。

 この仕事をし始めて、一体何年が経ったのだろうか。あまりにも長すぎるせいか、面倒臭さと油断が大いに溜まっていたのかもしれない。…取り敢えず、気分転換にでも出掛けてみようか。

 そう結論づけて。男は己の同僚達に資料を手渡し、そのやけに薄暗い場所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 そう考えて、あの場所を後にしたはいいものの、特にする事も無いので少し気分転換に街を散歩してみる事にしよう。ついでに近々銀行に金を引き出しに行こうとも思っていたので丁度良い。と、男は考えた末、とある銀行に向かったのである。

 別に男には直ちに必要なものがあったわけでもなく、気紛れに少しくらい金を持っていても損はないだろう、と考えただけであった。

 

 

 

 

 まさか、そんなただの気紛れが、こんな事になるなんて思ってもみなかったし、そもそもこんな事になるとわかっていたのならば大人しく帰宅していたのに。我ながらこの情けない状況に溜息が出る。

 

 

 学園都市が誇る超能力者(レベル5)、その第8位・真珠空白は。

只今学園都市が誇る能力者達、つまり学生で構成される治安維持組織。

   風紀委員(ジャッジメント)の取調べを受けていた。

 

 

 

 

 

 学園都市では、個人の能力をその強度によって六段階に区分している。

 

 

無能力者(レベル0)

 

低能力者(レベル1)

 

異能力者(レベル2)

 

強能力者(レベル3)

 

大能力者(レベル4)

 

超能力者(レベル5)

 

 

 能力者の六割が無能力者(レベル0)に該当し、実際には能力が完全に無い訳ではないがいわゆる落ちこぼれとされるレベルである。

低能力者(レベル1)は多くの生徒が属しており確かに能力は確認できるものの、日常生活に役立つ事はない。

異能力者(レベル2)低能力者(レベル1)よりも少し上の位置付けではあるが、やはり日常生活には役立たない。大多数の生徒がこのレベル以下に含まれる。

強能力者(レベル3)になれば目に見えて強くなり、日常生活にもそこそこ役立つようになる。ここからが俗に言うエリートに含まれる。

大能力者(レベル4)にもなれば戦術的価値が生まれ、学園都市外部の科学力程度では再現不可能となる。ただしこのレベル以上になってくると極端に人数が減少する。

超能力者(レベル5)。現在の学園都市において八人(・・)しか存在しない能力開発の頂点である。その力は、超能力者(レベル5)一人で軍隊と渡り合えると言われるほどに強大なもの。

 

 ーーーそして、この男の名は真珠空白(しんじゅくうはく)。彼もまた、その学園都市の頂点に君臨する者達の一人。 

 超能力者(レベル5)が第8位、亜空切断(ワールドコネクト)である。

 

 

 

 

 




連載にするかはまだ決めかねてるので更新は期待しないでください
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