「フゥ〜。」
暗がりに一つ溜息をこぼす声がある。
チラリとコンソールの時間を確認するや
「楽しい時間が過ぎんのは、はえ〜やね。」
と、周りを見渡しながら銀色の毛の狼男がひとりごちる。
因みに人間形態ではなく筋骨隆々の獣人フォルムだ。
なお、理由はこっちの方がカッコいいから。
彼はユグドラシルというMMO RPGのプレイヤーである。
友人に勧められ、あれよあれよとハマり、自分の趣味全開でやると決意した。
その矢先に異形種狩りなるPK行為に晒され、助けられて流れでギルド勧誘されたので、願ってもないと了承したのだ。
キャラ付けや設定も自分なりに色々と用意して、ロールプレイしてみたり、その矛盾点をツッコまれて落ち込んだり、流石にイベントの時は出たほうがいいかなと思って、ギルド長に相談したら変なマスク渡されたり、正義大好きマンと、悪役ロールプレイに信念を燃やすフレンドの論争に巻き込まれそうになったり、本当に色々あった。
ただ、それもあとすこし時間が経てば、無くなるのだが。
金床にハンマーを置き、キセルで一服する。
ゲームの中だが、この所作はもうクセのようなモノだ。
お気に入りの丸いサングラスをクイっといじり、ギルド長にメッセージを飛ばす。
「モモさん、いいかい?」
「ロウさん、ちょうど良かった。」
嬉しそうな声色である。
ロウ、と呼ばれた男は聞き返す。
「どしたい?オレっち以外のメンバーが来てくれたのかい?」
「はい!ヘロヘロさんが無理して来てくれたんですよ!」
(ヘロヘロ…あぁ、あのドロドロか。)
とかつて共に轡を並べて戦った思い出がよぎる。
(ゲーム内でも出不精はいかんね。)
せっかく日常とは違う世界にいるってのに、普段と基本行動が変わらないのは思い返すと我ながら
もったいない気もする。
なんやかや、素材集めやら、作品の性能テストなどで、他プレイヤーを追い立ててもらったりなんだり、色々と手伝ってもらった覚えもある。
なかなか自室の工房から出ないロウに色々と気にかけてくれた友人達である。
極悪ギルドなどと言われつつ、個性派揃いの精鋭たちは色々ありながらも仲はわるくなかった。と思いたい。
「んじゃぁ、オレっちもこれから向かうから、ヘロヘロさんの方はサ終まで残れないようなら帰してやってくんな。」
どっこいしょ、と立ち上がる。
最後くらいは格好をつけたいしな。との考えからだ。
メカメカしい腕に、先程立てかけたものとは別の大振りのハンマーを担いで立ち上がる。
彼は、らいかん・す・ろうぷ
至高の四十一人の、その末席に座った者である。
アニメは見てるんですが、小説は書籍版読んでる途中なので、食い違いがあったらすみません。