さいどらいかん
モモさんに呼ばれ、ルプスレギナと共に彼の執務室に到着した。
早速、遠隔視の鏡を用いて、周辺の確認をしようと思ったのだが、モモさんは何やら四苦八苦しているようだ。
因みに彼の隣にはプレアデスのリーダー、セバス・チャンが控えている。
やはりゲームの時とは勝手が違うのだろう。
拡大も縮小も、コンソール一つでなんとかなったからか、或いは杖などは持てば使い方がなんとなく分かったからか、意外なアイテムが使いにくかった。というなんとも言えない状況になったのだろうか。
すると、モモさんはこちらに気づいたようで、
「おお、来たか。しばし待っていてくれ。」
と言って間もなく使い方のコツが掴めたようで、セバスからも「おめでとうございます。」
と、祝辞を述べられていた。
では、ということでワクワクしながら鏡に近づいてみると、何やら騒がしい映像が映り込む。
「なんだこれは、祭りか?」
と、モモさんが述べるが
「いえ、これは違います。」
と、セバスが訂正する。
実際は鎧を着た騎士風の男たちが、村人たちを容赦無く殺戮しているのだ。
しかし、どうにも妙な感じがする。
それはモモさんも同じらしく、メッセージが飛んでくる。
(ロウさん、気づきましたか?)
(まぁねぇ、不思議な感覚。オレっちはあんまこう言うのに耐性無かったはずなんだけども、いい気分はしないけど、かと言って吐き気を催すようなこともないっていう。グロに耐性が付いた感じってーか。)
(…そうですか。俺はこれを見ても正直なんとも思いません。)
それが悲しみなのか、それとも自失していたのかはわからないが、とにかく沈んだような口調で、
(身も心も異形種になってしまったのかも知れませんね。)
(何言ってんのモモさん。モモさんはモモさんでしょ。)
(え?)
(みんなの為になるようなこと一生懸命考えて、ギルド内のトラブルも放置せずにすぐに対処してくれて、結局最終日までギルドにいたような、誰よりもこのギルドを愛してるような、そんないい人は他の誰でもない、モモさんでしょ。)
(ロウさん……。)
(だからモモさん)
一拍間を置き、少し溜めて
(工房に回す費用増やしてください!!)
(ダメです。)
(ちっくしょ〜、イケると思ったんだけどなぁ〜。)
心の中でちぇー、とぶーたれるが。
(でもまぁ、モモさん。ちょっとぐらいワガママになったっていいんよ。
それこそ、スタッフオブアインズウールゴウンを手に取った時みたいにな。)
(……考えときます。ってか見てたんですか!?)
(で、村はどうするのん?)
露骨に話を逸らす。それに少しは文句を言おうとするモモさんであるが、
「どうなさいますか?」
と、セバスがモモンガに質問する。
ルプスレギナはどちらでもいいようだ。
「うむ、我が友はどう考える?」
「そうだねぇ、結論から言えば放置しても別段問題はないとはおもうよ。」
が、しかしと続ける。
「ここで村人たちを助けて恩を売れば、この世界に来て初の親ナザリック領に出来る可能性が高い。そうすれば必然、我々の行動範囲も広げられるだろうねぇ。命の恩人、というのはそれだけ信頼もされやすいからね。その分この世界の情報や常識だって知る機会が得られるかも。」
「そうか。では、行くとしよう。」
「うん。いってらっしゃい。」
「?我が友も来るのだぞ。」
その言葉を聞いて、オレっちはギョッとする。
「い、いやぁオレっちってばどっちかってぇと後衛タイプって言うか拠点でじっとしときたいタイプっていうか。緊急時用にひとりはいた方がいいっていうか。」
「いいから来る!セバス、ルプスレギナ、鏡はそのままで、我々に危険が迫ったと判断したらいずれかが来い。それ以外のことはアルベドから指示を仰ぐように!」
「あっ、ゲート展開しやがった。きったね!」
「ロウさん、言い出しっぺなんですから責任とって着いて来てくださいよ。」
「〜〜っ。わ〜ったよ〜っ。もう抵抗しないから首根っこ引っ掴むのはやめてぇな〜。」
なんやかんや。ホント退屈しないわこの人。
まぁ、試してないアーティファクトのテストと思えばいいか。
ちなみにとっさのことながら、ルプスレギナには行ってらっしゃいって言ってもらえた。
ちょっと嬉しかった。