思ったより長くなっちゃった。
ゲートをくぐり抜け、鏡で見た村の近くの森らしき場所に辿り着いた二人を出迎えたのは、奇異なモノを見る目である。
こちらを見ているのは鎧を身に纏った騎士のような格好の男二人と、先程切り付けられていた少女と、その妹と思しき幼女である。
モモンガとらいかんは、特におかしなところは無いのをそれとなく確認する。
(モモさん、どこか変かな?)
(いや、別に普通だと思いますけど。)
少なくともユグドラシルでは珍しい姿ではなかったし。突然現れたから訝しがられているものと二人は勝手に納得する。
「しっかし、大の男が二人がかりで子供追い回すって、側からみればヤバい絵面やね。」
「しかし、そのおかげで実験が捗る。その点は感謝だな。」
何やら騎士の内ひとりが斬りかかって来たので、らいかんはどんなものかと、義手で受け止めようとするが、剣の方があっさりと砕け散る。
「オイオイオイオイ安もんかい?ダメだよ自分の命預ける武器代ケチっちゃぁ。浮いたカネで酒でもかっくらってんのかね?」
もう一人が恐慌状態になりながら問う。
「お前ら、何者だ!」
「オレっちはこの村を助けに来たヒト。」
「私も同じくだな。」
「クソ!冒険者か?」
「とにかく逃げて、隊長に知らせなければ!」
といって、兵士二人は異形種二人に背を向け逃げ出した。
「ではお先に。」
と、モモンガが言う。
「ドラゴンライトニング。」
「うぎゃあああ!」
兵士の片方は黒い煙を上げて倒れる。
「弱すぎる。第五位階魔法でこれか。」
「うわぁお。女の子の前でエゲツないことすんねぇ。」
「むぅ…。」
ちょっと気落ち気味のモモンガに、らいかんは慌ててフォロー(といっても、自分で蒔いた種だが)に入る。
「いや、責めてるわけではないんだけども。」
そうこうしている間にもう一人が走って、徐々に離れてしまう。
しかし、急にその足元が爆発する。
「あぁ、ごめんねぇ。その辺には
「ぼ、ぼまー?」
「あぁうん。オレっち作のお気に入り。結構爆発の塩梅難しかったんだよ〜?」
あっはっは。と笑う狼男を前に騎士は何もできない。
その間に爆発蟻はその兵士を完全に包囲する。
「んじゃぁ、バイバイ。」
周囲の蟻が、連鎖的に爆発する。
熱と爆風が騎士を覆い、後には骨さえ残らなかった。
「じゃあ、行くとするかいね?」
「ちょっと待って欲しい。中位アンデッド作成。」
一人の騎士の肉体が闇に飲まれ、形を歪めながら肥大化していく。
やがて、その元騎士は、彼らにとって見覚えのある姿へと変貌した。
(うわ、デスナイトとか久々に見た気がする。)
(俺も久々に作りましたけど、またユグドラシルとは仕様が違いますね。)
「デスナイトよ。村を襲う騎士共を殺せ。」
そう命令されたデスナイトは、ドシンドシンと足音を立てて村の方へと一直線に向かって行った。
(…どったの?)
(…守ってもらおうと思ったんですが。)
どうやら命令ミスらしい。
(ま、まぁ切り替えてこう。今は怪我人の手当が先だし。)
(そうですねぇ。)
二人がくるりと振り返ると何故かヒッと短い悲鳴が上がった。
モモンガが治癒のポーションを差し出しても受け取りたがらない。
話している内容的に、どうやらこの見た目が怖いらしい。
まあ、結構リアルな骨とか、ホラーが苦手な子にはキツいものがあるのかもしれない。
が、背に腹はかえられなかったようで、モモンガが強く言うと、恐る恐るという感じで受け取り、飲んだ。
切りつけられた傷が少しずつ塞がり、やがて何事もなかったかのように完全に消えた。
少女たちはどうやら、ポーションの効果に驚いているようだ。
しかし、そのおかげか警戒心は先ほどより幾分マシになったように感じる。
モモンガが魔法を知っているかという質問を投げかけた時も、最初の怯えが嘘のように返答していた。
この人間が慣れるのが早いのか。
それとも親切にされたから警戒心を解いたのか。
おそらく後者であろうが、いい傾向なのは事実。
なんでも彼女の友達が魔法を使えるらしい。
ならば話は早いと、モモンガは彼女に防護魔法を幾重にもかけ、その上で念のためとアイテムを与えた。
礼を言われたが。その際に名を聞かれた。
元々恩を売る為に来た以上、これはチャンス。
問題はどう名乗るかだ。
(どうしようね。アバター名そのまんま名乗る?)
(いやぁ、流石にモモンガはちょっと可愛すぎでは。)
(だねぇ。あ、そうだ。いっそギルド名を名乗るってのはどうかね?宣伝も兼ねて。)
(宣伝?)
(そうそう、サービス最終日に他のフレンドもログインしてたかもだし、一緒に飛ばされてる可能性も無くはない。……と思う。)
(えぇ……、でも勝手に名乗っていざ会った時に変な感じになりません?)
(大丈夫だと思うけどなぁ。最悪怒られてもゴメンって一緒に素直に謝ればいいっしょ。)
(軽いなぁ〜。)
モモンガ的には、表舞台に上がること自体、本当は抵抗があったし、上がるにしても、もう少し後がよかったと言うのはある。
こちらが持っている情報はほぼ皆無。そんな中で未知の土地で未知の敵と戦うなど正気の沙汰ではないだろう。
しかし、彼は言ったのだ。言ってくれたのだ。
この友人はモモンガこそ、誰よりもこのギルドを愛していると、そう言い切ってくれた。
ならば、それに応える意味でも今は多少の無茶を承知で前に出るしかない。
どうせ通る荊の道ならば、放っておいても結局変わらない。
何よりフレンドとの共闘など本当に久々で、少し胸が躍っているのも事実。
故に彼は名乗るのだ。
「いいだろう。ではよく聞け!我が名は………」
アーティファクト説明
爆発蟻
偵察と奇襲の双方が可能な、らいかんの自信作。
一匹ごとの爆発の威力、規模は小さいが、基本的に群れで動くため結果的に近づかれた者たちの被害は自ずと甚大となる。
そこにロマンがある。気がする。