さいど法国軍
スレイン法国六色聖典がひとつ、陽光聖典隊長ニグンを襲った感情は困惑であった。
自分達は確かに排除対象であるガゼフ・ストロノーフを追い詰め、あと少しで目的達成のところまで行っていたはずなのだ。
だと言うのに、目の前に現れたのは見たこともないような二人の男。
片方は奇妙な面を被り、もう片方は覇気というかやる気があまり感じられない銀髪の男。
「貴様ら何者だ。ストロノーフをどこにやった?」
ニグンは問いを投げかけるが
「うわ、ホントにモンスターだわ。これは確かに面倒かもなぁ。」
「だが、一体一体は大したことはないだろう。私にとっても我が友にとってもな。」
と、突然現れた二人は、どこ吹く風といった感じでまるで気にしていないようだ。
しばらくすると、その二人は思い出したかのように自己紹介をし出した。
「はじめまして、スレイン法国の皆さん。私はアインズ・ウール・ゴウン。魔法詠唱者です。そしてこちらが我が友のロウと申す者です。」
と挨拶が帰ってきたのち、
「彼でしたら、村の中へ転移させました。」
と、仮面の方の男が答える。
デタラメを、とニグンは苛立つ。
それはそうだろう。
任務達成を目前にして、それをお預けになったのだ。
聖人君子でもなければ誰でも腹が立つところだろう。
それにそもそも、ガゼフ自身が転移の魔法を用いたならまだしも、遠く離れた地点から転移させると言う芸当をニグンは知らない。
そして、ガゼフは良くも悪くも純粋な戦士であり魔法など使えないことが分かっている。
大方近場に隠して煙に巻こうと言う腹づもりだろうと憶測する。
「そうか、では貴様らを始末した後村人を殺して回るついでにじっくり村を捜索してやるわ。」
ピクリ、と仮面の男が反応する。
「今、なんと言った?」
「うん?」
「そういえば先ほどもお前は、我々が態々出張ってまで守った村人を皆殺しにするとか宣っていたな。それが私には些か不快だ。」
「不快とは、大きく出たな魔法詠唱者。」
それはこちらの台詞だと言わんばかりにニグンの苛立ちはさらに増していった。
その後すぐ、己の発言を悔いる事になるとも知らずに。
さいどらいかん
うわお、モモさんちょっと分かりやすいくらいの挑発やね。
目的は言うまでもなく、敵の実力を測ることだとは思うけども。
今更ながらになるけど、その役目は魔法詠唱者と比べて、まだタンク寄りビルドのオレっちに任せて欲しかったけどなぁ。
しかしまぁ、幸いと言うべきか拍子抜けと言うべきか、思ったより骨のない連中やねぇ。
モモさんの上位物理無効で防げるって、その時点でかなりのレベル差があるってことだもんなぁ。
何してくるかと思ったらただ天使を突っ込ませて来るだけとか芸がないやね。
あとは支援魔法とか、状態異常系か。少なくともオレらには意味ないけどな。
まあ、裏を返せばそれが彼らの必勝パターンだったのかも知れんが。
しかしそれも真正面から破られた以上、どうしようもないだろうけども。
ただ、その割には彼らの隊長の戦意が衰えないというか、眼に諦めが浮かんでないっていうか、明らかに奥の手がありますよみたいな。
しかし、このままじゃあ埒があかないからなぁ。
(モモさん。)
(なんです?)
(敵、明らかに切り札を出し渋ってる感じがするんだけども。どする?)
(まあ、それも時間の問題でしょうけどね。)
(あ、じゃあそれまでちょっと実験しててもいい?)
(え、まぁ構いませんけど……。)
(そんじゃちょっと選手交代やね。)
さてどれにしようかなぁ〜。
「隊長!こ、今度はもう一人が動き出しました!」
「げ、迎撃準備だ、早くしろ!」
「これでいっか。」
初の実戦だし、出血大サービスだ。
手のひらくらいの大きさの水晶塊を持って意識を集中する。
アーティファクト・
瞬間、地面の一部に水晶が広がり、そこから魔結晶で出来た猪がノソノソと姿を表す。
大きさはデスナイトより一回り大きいくらいかな。
現れ方はアンデッドとは違う感じか。
まぁ、あっちは見た感じエグいしなぁ。
現れた
「あぁ〜命令ねぇ。じゃ、アレらを蹂躙して来て。」
と、敵兵を指差しながら命じる。
了解した様子で
魔法には耐性があるように作ったからあちらの妨害などあってないようなもんよね。
ひと通り敵を倒してきたが、思ったより時間がかかったようだ。
具体的には想定の1.5倍くらい。
もうちょい調整が必要かなあ。それか慣れの問題か?本来ならもうちょい突破力が出るはずなんだけども。
「く…、法国の誇る精鋭たちがこうもあっさりと…。」
やがて彼らの隊長は意を決したようで
「最高位天使を召喚する!」
やっと来たねぇ切り札。
アレは確か魔封じの水晶。レア度が高かった割に、ガチ勢はドバドバ使ってたっけ。
懐かしいなぁ。
超位魔法以外なら何でも込められたから使い勝手は良かったしなぁ。
最高位ってくらいだから、熾天使かそうでなくとも智天使くらいは警戒しないとなぁ。
(モモさんとうとうだねぇ。)
(ええ、この世界の精鋭の切り札、警戒してかからなければですね。)
そうして、オレっちとモモさんは警戒と、ある種の期待を込めて敵を眺めていたのだった。
アーティファクト紹介
水晶猪
らいかんの傑作たる水晶獣の中でも抜群の突破力、破壊力を有する。
なお、性格は大人しめ。