AOGの狼人   作:ガラクタ山のヌシ

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天使

 

 

さいどナザリック

 

遠隔視の鏡で偉大なる御方々を見守っている中、ルプスレギナ・ベータが疑問を投げかける。

 

「なんなんすか、アレ?」

 

それに対してデミウルゴスは静かに、しかし力強く答える。

 

「アレこそは、らいかん・す・ろうぷ様がユグドラシルでも指折りの工匠たる所以だよ。」

 

「どう言うことですか?」

 

と、セバスが問いかける。

 

「アレを構成しているのは鉱石ではなく、純粋な魔力だ。しかも火や水、風といったエレメントが複雑に絡み合ったね。」

 

通常、魔力というのはそれぞれのエレメントが集まって形成される。

 

火は火のエレメント同士、風は風のエレメント同士と言った感じにだ。

 

逆に他のエレメント同士を無理に組み合わせようとすると却って分離や崩壊を招いてしまい、その結果暴走した魔力に呑まれてしまう。というようなことも珍しくない。

 

それを成し得たのがらいかん・す・ろうぷというプレイヤーのまず持って特筆すべき点である。とデミウルゴスは述べる。

 

なぜ、そんな危険で手間もかかる方法を取ったかといえば

 

「恐らくは応用性や汎用性の拡大のためだろうね。」

 

とデミウルゴスは言う。

 

らいかんはそのステータスの都合上、適宜アーティファクトを強化するというのは手間であるし、目まぐるしく状況の変化する戦場において、その戦法は合理的でも現実的でもない。毎回それをするとなれば、いざと言うときに展開した際、何の強化もされていないただの壁を呼び出すだけで、同格以上が相手である場合、心許なさすぎる。

 

ならば、はじめから魔力源を一つに纏め、魔力核として作品に埋め込むことで呼び出した瞬間に自らで強化出来るようにすれば無駄も少なくなる。と言うことだ。

 

「こうすることにより、らいかん・す・ろうぷ様御自身の魔力消費は最低限で済み、かつ状況に応じた柔軟な展開を可能にされた、という訳さ。無論、モモンガ様…いや、アインズ様もその開発に携わっておられるだろうけれどね。」

 

得意げにそう話した後、デミウルゴスは満足げに「まあ、それだけが狙いではないだろうがね。」

と語り、言葉を締めくくった。

 

さいどカルネ村

 

「さあ、刮目するが良い!大いなる神の威容を!」

 

魔封じの水晶が割れ、中から天使が現れる。

 

光が現れ、収縮し、現れたのは大いなるいくつもの光の翼。

 

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!!」 

 

法国軍からはおおっという歓声が聞こえるが、

しかしそれは、アインズとらいかんの二人を感動させしめるものではなく

 

(えぇ…。)

 

( はぁ?)

 

(モモさん、モモさんや。)

 

(なんです?)

 

(ユグドラシルの最高位天使って、熾天使じゃなかったっけ?)

 

(ええ、そのはずですけど。)

 

(主天使って、確か天使内の位階的に四番目くらいの強さだったような?)

 

(そうですね、俺もそう記憶してます。)

 

(え、じゃぁ何で敵さんドヤってんの?)

 

(理由は分かりませんが、恐らくそれを最高位と勘違いできるくらいには、この世界の魔法のレベルが低いか、もしくは現状扱える最高位天使ということなのかなと。憶測ですけど。)

 

(あぁ、なるほど。)

 

(しかし、どの道拍子抜けなのは否めませんね。)

 

(まぁなぁ、熾天使と比較しちゃうとどうもなぁ。)

 

しかし、そんな二人の気落ちをどうやら戦意を失ったと勘違いしたのか、敵将は余裕を取り戻したようで。

 

「そちらが切り札を切ったのだ。ならばこちらも相応の手を打たせてもらった。」

 

と言っている。

 

褒めるニュアンスであることは何となく分かるが、どうやら水晶猪(クリスタル・ボア)と主天使が互角と見ているようだ。

 

しかし、それが大きな間違いであることを彼らは思い知る。

 

「ヘェ〜……。」

 

突然、ロウことらいかんの声が低くなる。

 

(あっヤバ。)

 

「うん?」

 

「オメェはアレか。ウチの可愛い可愛い水晶猪(クリスタル・ボア)がそのお粗末なモンと同等だと。そう言いてぇのか。」

 

「なに?」

 

「あぁいいよ、喋らなくて。じゃあ見せてやる。この子らがオレの最高傑作たるその力をよ。」

 

すると、らいかんは先程の水晶塊を手にし、そして発する。

 

水晶猪(クリスタル・ボア)、強大化、そして複製。」

 

パキパキと水晶が地面を侵食し、水晶猪(クリスタル・ボア)の自己強化のリミッターを外し、更に強化する。

 

そして、溢れんばかりの魔力を有したそれが、他に五つ現れた。

 

(モモさんすまんね。後はオレっちがやるわ。)

 

(分かりましたけど、あの隊長と他何人かは殺さないで下さいね。尋問と実験台で使うので。)

 

「!!ホーリースマイトを撃て!」

 

天使の持つ笏が砕け、発動する。

 

第七位階魔法。この世界の人間では到達すらできないとされる必殺の一撃。

 

それは水晶猪(クリスタル・ボア)達を襲い、跡形もなく消し炭とする

……はずだった。

 

「なんだと?」

 

「悪りぃね、ウチの子らはそこまでヤワじゃねえんだわ。」

 

全て片付けるどころか一体も倒れていない。

 

「まぁ、聞きたいことは後でたっぷり聞かせてもらうとしてだ。」

 

らいかんはスッと主天使を指差し、命令する。

 

「アレを壊せ。」

 

先程以上の速度で、先程以上の質量が突っ込んでくる。その恐怖は計り知れない。

 

法国軍の或いはという淡い期待も、崩れゆく天使の姿を目にして徐々に失われてゆくのが分かる。

 

(ブラックホールあたりで一瞬で片をつけてやったほうがまだ慈悲深いんじゃないか?)

 

とアインズは思うが、言わぬが花である。

 

結果として、天使が破壊された時点で敵軍は投降。

 

ほぼ全員が特別情報収集官ニューロニストの元へと送られた。

 

それとデミウルゴスが幾人か欲しいと言ってきたのでそちらに譲ったくらいか。

 

なお、その後

 

「で、後始末はどうするんですか?」

 

「ごめんなさい。」

 

と、友人に土下座するらいかんの、なんとも締まらない姿があったとか無かったとか。

 

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