AOGの狼人   作:ガラクタ山のヌシ

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メイド

 

パチン パチン

 

らいかんの私室、正確には工房に隣接する居間に爪を切る音が響く。

 

しかし、切っているのは彼自身ではなく赤毛のメイド、ルプスレギナ・ベータである。

 

「しっかし、爪の一つで何か変わるもんかねぇ。」

 

ルプスレギナは完璧なメイドを演じながら

 

「至高の御方には常に相応しいお姿でいて欲しいものですので。」

 

と、至極理性的に接する。

 

カルネ村よりナザリックに帰還して、すぐに私室に戻ったらいかんは獣人フォルムに戻り、専属のメイドであるルプスレギナに食事を頼んだ。

 

運ばれてきた食事を食べて、さあ作業だと意気込んで工房に行こうとしたら、ルプスレギナが待ったをかけた。

 

珍しいので

 

「どしたい?」

 

と尋ねると、爪が伸びているのが気になったので無礼を承知で切らせて欲しいと申し出てきた。

 

そう言えば爪の手入れなどこの姿になってからあまり、というか全くしていない。

よく気づいたなと感心しつつ、やってもらえるならありがたいと

 

「じゃあ頼むなぁ。」

と返事をするなり、「ではお手を」といつの間にか手にしていた爪切りを取り出し冒頭に至るのである。

 

 

アタシはアルベド様やシャルティア様みたいに焦らないっすよ。

 

と、ルプスレギナ・ベータは心で呟く。

今あのお方にすべきは、猛アタックを仕掛けることではなく、身の回りのお世話を一身に引き受け、『お側に居て当たり前』の立ち位置を確立すること。

 

ギルド長であるアインズウールゴウンが、守護者二人にグイグイ来られて若干引き気味なのを見て学んだのだろう。

 

無論、そのままではただの数いるメイドと変わらないが、しかしそれは一般メイドを極力あのお方の部屋に入らせなければ問題無い。

 

とは言っても、何も強引なやり方をしているわけでは無い。

 

ざっくり言えば、「こっちはやっておくからあっちをやっといて」というのを何度もやっているだけである。

 

ただ、別件で手が離せない事もあるかもしれないし、他ならぬらいかん・す・ろうぷ様のご命令で所用を申しつけられる事だってあるのだからそこはある程度割り切っている。

 

ルプスレギナにとって色恋とは早い者勝ちの競走ではなく、最後に意中の相手の隣にいればいい、いわば持久戦。

 

オオカミ(意味深)になるのはもはや勝利が確定した時だけで良い。

 

とある妹から聞いた話では、アインズ様の()()()に関してアルベド様派かシャルティア様派かで姉妹間で分かれていると言う。

 

ただ、現状は自分のようにどちらにもつかない者もいるとか。

 

ルプスレギナ的にはどちらでも至高の御方が決めた方で良いという考えであり、ぶっちゃけてしまえばその争いは不毛とすら思っている。

 

とするならば、仮にどちらかにつくとして、問題なのはどちらに恩を売ればらいかん・す・ろうぷ様との仲にプラスになるかだろう。

 

どちらが勝った方がより便宜を図って貰えるか、

立場で考えればアルベド様である。

 

守護者総括として、常にアインズ様のお側にいる分有利であるし、立場的にも相当の信頼を賜っているのは想像にかたくない。

 

ただ、実績や功績、実力で見た場合はシャルティア様も決して劣るわけでは無い。

 

それは第一から第三階層を任されるほどの戦闘能力からすればまず間違い無い。

 

ある種、現場を知っている分こちら寄りの人物とも言える。

 

血の狂乱によって理性がぶっ飛ぶこともあるが、それもまた造物主たるペロロンチーノ様によって付け加えられた大切なものだ。それを否定するつもりはない。

 

(まぁ、まずはナーベラルに確認っすかね〜。)

 

頼れる妹がいることに彼女がこれほど喜んだことは多分ないだろう。

 

どちらに着くにせよ、或いは傍観するにせよ、愉快なことになるのは違いない。

 

そう思い、ルプスレギナは心中に笑みを浮かべるのであった。

 

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