AOGの狼人   作:ガラクタ山のヌシ

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薬師

 

 

話がまとまり、受付にそのことを伝えるため、窓口に向かうと何と、冒険者モモンへの指名依頼が入っていた。

 

これは、冒険者にしてみればとても名誉なことらしく、少なくとも、昨日今日冒険者になったばかりの新人はまず縁のない話のはずだった。

 

現に当のアインズも若干困惑していた。

 

しかも、運命というべきか何というべきか、依頼主は先ほど話題にも上がった張本人ンフィーレア・バレアレその人であった。

 

「はじめまして、ご紹介に預かりました。ンフィーレア・バレアレです。この街で、薬師をやっています。」

 

彼は線の細い少年で、目元は前髪で隠れている。

 

有名人なためか、組合施設内はちょっとした騒ぎが起きている。

 

「すみませんが、こちらの方達との先約がありますのでまたの機会にお願いできますか?」

 

そう言ってアインズが断ると、周囲の冒険者達は真っ二つに分かれた。

 

せっかくの指名を断るなんてもったいないと非難するような声と、冒険者たる者信用が第一であり、目先のツテでは無く先約を大事にするのは立派なことだと称賛する声だ。

 

どちらも至極最もな言葉だとアインズは感じる。

 

しかしペテルはどちらかというと前者寄りの意見だったようで、驚いた様子である。

 

「モモンさん、いいんですか?せっかくの指名依頼を断って?」

 

「既に約束を取り交わした身でありながら、その舌の根も乾かぬうちにそれを違えたくはありませんから。」

 

「しかし…。」

 

ペテルはどこか納得していない様子だ。

 

恐らくは善意なのだろう。

 

実力を見てはいないが、少なくとも冒険者モモンは未だ駆け出し、それがいきなり名を売る千載一遇の機会を逸するのが勿体無いという考えなのだろう。

 

このままでは埒があかないと判断したアインズは

 

「でしたら、これから依頼を聞いて、それから判断するというのはどうでしょうか?」

 

それならとペテルは納得してくれた様子で、ンフィーレアを彼らが元々腰掛けていたテーブル席に案内する。

 

幸い、テーブルの上のコップなどは片付けられていたが、イスは空いていた。

 

パーティの皆が席についたのを見届けると、ンフィーレアは

 

「依頼というのは、近くの森への警護と、森の中での薬草採取のお手伝いをお願いしたいんです。」

 

と申し出てきた。

 

森は自然の恵みの宝庫であると同時にとても危険な場所でもある。

 

視界が悪く、野盗やモンスターとの遭遇戦になりやすいため余程腕に自信があるか、地理に詳しくなければただの自殺行為。そのため警護をつけたいというのは理解できる。

 

薬師という仕事柄、自分で薬草の状態を確認したいとか、常に薬草が入りようというのはわかるが、しかし彼ほどの有名人が、世に知られていないどころか、ぽっと出も良いところの冒険者であるモモンをわざわざ指名してまで依頼することだろうか。

 

少し悩んだが、アインズは了承する事にした。

 

そして、「漆黒の剣の皆さん。良ければ私達に雇われませんか。」

 

と提案する。

 

「森に入るのならば、森祭司であるダインさんや、隠れた敵を見つけ出す野伏のルクルットさんの出番だと思いまして。」

 

「うむ、モモン氏は分かっているであるな。」

 

ダインは上機嫌な、しかし矜持を感じさせる言葉に良い感触を覚える。

 

「ま、このオレがパーティの目であり耳であるからには、斥候は任せときなよ。」

 

ルクルットも満更でも無さそうで、悪い気はしていなさそうだ。

 

話に挙げられた二人が乗り気出会ったのも手伝って、リーダーのペテルもそれではと、意外と快諾してくれた。

 

あとは依頼主に確認するだけだが、これもクリアできた。

 

それではとンフィーレアはこれからの予定を話す。

 

まずはカルネ村まで行って、滞在拠点を設けた後、森へ向かうという。

 

採取日数は長くて三日。

 

馬車はあるが薬草の壺を乗せるためアインズ達を乗せる余裕は無い。

 

その他、粗方聞き終えたアインズは

 

「なぜ私なのでしょう?私はつい先日この街にやってきたばかりで親しい友人もいませんし、知名度もプレートを見ての通り銅です。それにンフィーレアさんほどの方ならば、腕の立つ冒険者にツテもあるのでは?」

 

「実は、宿屋での件を聞きまして。」

 

宿屋での件。恐らく絡んできた先輩冒険者を返り討ちにした一件だろう。

 

「それに、そんな方が銅の分の金額で雇えるならお得でしょう?」

 

この少年はアインズが思う以上に強かなのだろう。

 

その後、いくつかの質問を終え、準備が終わり次第出発することと相成ったのだった。

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