AOGの狼人   作:ガラクタ山のヌシ

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一方その頃

 

 

「っかし、ままならんねぇ。」

 

らいかんは金床の上のものを見てぼやく。

 

それはいわゆるロングソードと呼ばれる武器であり、そのまま見れば店頭に並んでいそうであるが、彼にしてみればまだまだ出来が甘い習作に過ぎない。

 

義手に持った槌を見やり

 

「まっさか、モモさんにとっての遠隔視の鏡がオレっちにとっての鍛治だったとは。いやまぁ、厳密にはオレっちは工匠であって鍛治師じゃないんだけども。」

 

と、らいかんはぼやく。

 

ここのところ、らいかんが工房に篭り切りになっていた理由は、勘を掴むためにユグドラシル時代の武具や、アイテムのレシピを総当たりしているからだ。

 

なお、理由は同じレシピばかりでは飽きるから。

 

しかし、量が量である。

なにせ運営が十年以上の歳月をかけて作り上げたアイテム数、レシピ数であり、期間限定イベント等も加味すると更に増えるため、全て消化するのは流石に骨が折れる。

 

ついさっき、やっと2%ほど終わったところである。

 

ぶっちゃけて仕舞えば、ごく一般的な人間やモンスター相手の戦闘で武器として使うなら今出来上がったばかりのコレで十分だ。

 

また、使用に耐えるというだけならば、既存のアーティファクトだけでも事足りる。

 

というか、アーティファクト作成に関してはなんの問題もない。

 

それこそ、腕の仕込み武器と同じように意識を傾けるだけでなんとなくやり方がわかる。

 

しかし、スキルによる作成というのは彼的にあまりに味気ないのと、何より大切なフレンドから譲り受けた工房で半端なモノを作るのはらいかんの(あまりない)矜持が許さなかった。

 

「モモさんだって頑張ってんのに、オレっちだけダラダラはできんやね。」

 

らいかんは己に、ひいてはアーティファクトに足りていないものが何か自覚している。

 

それは、どんな優れたアーティファクトであっても結局魔法で代用できてしまう、あるいはアーティファクトというもの自体が、ことユグドラシルに於いては、プレイヤーが魔法を覚えるまでの繋ぎとしての側面が強いのだ(だからこそ、彼の作品であるアーティファクトが変態性能扱いされてもいるのだが)。

 

極論、レベル100の大体の魔法詠唱者が使う魔法の方が、並のアーティファクトよりも派手な上実用性も高い。

 

別にそれは良いのだ。悲しくない訳ではないが、そういう風に作られているのなら、それはそれと割り切るより他ない。

 

しかし、ここはゲーム世界のモンスターが跋扈し、ゲーム世界の魔法こそ存在しているが、それ以外があまりに異なる世界。

 

青空があり、動植物があり、それらが動くし触れる。

 

らいかんは歓喜した。否、狂喜した。

 

ここでなら、ゲームという枷の外されたここでなら、並み居る魔法詠唱者を飛び越えるような作品を生み出せるかもしれない。

 

見たこともないような未知の素材があるかもしれない。

 

或いは未知のアイテムがあるかもしれない。

 

そして、それによって至上の浪漫アーティファクトが作り出せるかも知れない。

 

何より自慢の水晶獣達を更なる高みへ連れて行けるかも知れない。

 

そう思うだけで、自然と体が動くのだ。

 

別に強力な兵器が欲しいわけではない。

 

というか、進んで戦いに出たい訳でもない。

 

ただ、らいかんの掲げる至上の浪漫アーティファクトがそれであるならそれを作るだけのことだが。

 

「らいかん・す・ろうぷ様。」

 

ふと、影のようにそばに立ったメイドが話しかけてくるが、らいかんは最早慣れたもので

 

「ん、ルプスレギナか、どしたい?」

 

と答えるまでに心の余裕ができた。

 

食事の時間にはまだ早いとらいかんは思う。

 

「お水をお持ちしました。」

 

「おう、すまんねぇ。水くらい自分で持ってこられりゃぁいいんだが。」

 

「いえ、私は貴方様の専属メイドですので。」

 

「でもまぁ、こういう暑苦しい場所に態々持ってきてもらうってのも悪いやね。」

 

入り口のところに水の入ったピッチャーとコップでも置いといてもらえれば適当に飲む、と言うようなことを以前言ったがルプスレギナの答えは「大丈夫です。」の一点張りだった。

 

見上げた忠誠心だと感心したのをらいかんは覚えている。

 

因みに現在野生の勘は作動していない。

 

やはり杞憂だったかとらいかんは安堵しルプスレギナに了承を取ってキセルを吸う。

 

一息ついたらいかんは、再び槌を手にするのだった。

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