エ・ランテルを出立し、カルネ村に向かってしばらくした頃、一行は森に沿って歩いていた。
漆黒の剣と、モモン、ナーベは馬車の周囲を歩いて警護についている。
御者を務めるのは依頼主であり警護対象のンフィーレアである。
ペテルがアインズの方を向き言う。
「モモンさん、ここから少し危険地帯になるので念のため注意を。」
アインズは頷き、警戒を厳にする。
元々アインズは魔法詠唱者であり、それに比べれば前衛にはあまり自信はない。
しかも現在はその魔法もほぼ唱えられないため、不安もひとしおといえる。
(いざと言うときは、ナーベラルが第五位階魔法で対処する手筈になっているが……。)
アインズはカルネ村の時よろしく、らいかんに半ば無理矢理でもついてきてもらったほうがよかっただろうか。などと少し後悔する。
(いや、水晶梟まで借りておいてそれは贅沢か。)
今のところ、漆黒の剣の面々に水晶梟のことは話していない。
これまでの言動を考えても、善良な冒険者だと思いたくはあるが、万が一水晶梟を盗まれましたでは、それこそらいかんに合わせる顔がない。
考え込んでいるアインズを見て、不安になっていると思ったのか、ルクルットが声をかけて来る。
「ヘーキヘーキ、奇襲でも無けりゃ危ない事にはならねえよ。」
何故ならオレがいるからな。と得意げである。
なお、そのあとナーベラルに同意を求めてすげなく返された模様。
ナーベラルに言動を注意しようか否か悩んでいるアインズをみて、ンフィーレアは
「この辺りは森の賢王のテリトリーなので、滅多に魔物はでませんよ。」という。
「森の賢王…ですか。」
「はい。数百年の時を生きると言われる魔獣で、カルネ村がモンスターに襲われなかった理由でもあります。」
つまるところ、トブの大森林のヌシと言ったところだろうか。
(ロウさんが聞いたら飛びつきそうな話だな。その話が本当なら俺も会ってみたいし。)
何せ数百年である。
ならば、アインズの知らないような、或いは驚愕に値するような叡智を有しているかも知れない。
(しかし、ルクルットという奴の口はよく回る。チームのムードメーカーというやつか。)
何事にもへこたれないメンタルというのは何気に貴重な素質だ。躊躇せず、臆面もなく人との距離を詰めようとするのは楽天的なのか、考え無しなのか。
現に今もナーベラルに何度悪態をつかれようとも話しかけているのだから恐れ入る。
彼なりに新人を気にかけているのか、それとも本当に惚れているのか、それは当人のみの知るところ。
ただ、それ故に爆弾を放るのも無自覚なようだ。
あれ?どこかの狼男かな?
まあ、あちらは本人曰く、長年の執筆生活をしていた反動のようなものらしいが。
「なーなー、ものすごくモモンさんを信頼してるみたいだけど、やっぱナーベちゃんとモモンさんって恋人同士だったり?」
「こっここ恋人などと!そもそもモモンさんにはアルベド様という方が!」
「ちょ、おい!ナーベ!」
ナーベラルは己の失言にハッとし、咄嗟に口を押さえる。
アインズは努めて冷静な声色で
「ルクルットさん。すみませんが詮索はやめていただけますか?」
彼としても、すこしからかうだけのつもりだったようで、すぐに謝罪の言葉が返ってきた。
場の空気の重さを感じ取ったのか、ペテルが無駄話をやめるよう注意してくれ、彼から改めて謝罪の言葉がきた。
「仲間がすみません。誰であれ、過去の詮索は御法度だというのに。」
「いえ、次から気をつけて頂ければ。」
その後はニニャやペテルに魔法について質問し、他にも武技や、タレント、周辺の国家についてなど、あらゆる情報を思いつく限り聞いていた。
自分自身のためにもなるし、ナザリック地下大墳墓にいる友人への土産話にもなるだろう、というのもある。
場がなんとか持ち直した安堵からか、色々と解答が返って来るのが楽しくなってきたアインズは、己の失態に今なお落ち込んでるナーベラルをどう持ち直させようと悩むのだった。
今回もあんまり話が動かなかったなぁ……(遠い目)