さいどアインズ
オレは用意された食事の乗った盆を手に、漆黒の剣から少し離れ、かつあちらからあまり見えない所でちょうどいい切り株に腰掛ける。
なおナーベラルはその側に立って待機している。
というのも、アンデッドのこの身では食事は出来ず、それを不審がられないよう適当に理由をつけて距離を置いたのだ。
報告がてら、メッセージを使用し、見聞きしたことやその中で気になったことをロウさんに話す。
中でも取り分け関心を引いたのが
(森の賢王ねぇ。)
ロウさんはメッセージ越しにも分かるくらいに好奇心を刺激されたようだ。
(ええ、何せ数百年を生きる魔獣です。オレやロウさんが知らないことも知っているかも。)
(そうだなぁ、興味深くはあるなぁ。)
(蛇の尾を持つという特徴から推察するに、オレはその正体を鵺だと踏んでるんですが。)
(あぁ〜いたねぇ、イベントボスかなんかだったっけ?)
そう言われてふと思い出す。
(そうですそうです。いつだったかのお月見イベントのレイドボスですよ。)
確か和風なテイストのイベントで、城郭の一番上に鎮座していた記憶がある。
なお、戦いの度に苦手属性などが不規則に変化するクソボスだった。
(いやぁなついねぇ、そういやあのイベントの時だっけ?)
(何がです?)
(ほら、ヘロヘロさんが珍しく有給取れた〜って言ってベロベロに酔っ払いながら入ってきて……。)
(あー、ありましたねえ、それでボス戦百連戦しようぜって珍しく勝気なこと言い出して…。)
(まさかの三連戦目での寝落ちですよ!)
うん、あれは驚いた。酒の勢いなのか、いつになくグイグイ行こうとするフレンドにみんなして心配してた。
(……まあ、お疲れだったんだと思いますよ?)
(なー。でも後になってした言い訳が一、十、百できちんと百連戦したでしょって、オレっち今でもそれツボなんだけどさ〜。)
あーこれこれ、この身内同士で取り留めもない会話してる感。
最近はすっかり忘れてたなあ。
(それで、ですね。時間的にも当然と言えば当然なんですが、ついさっきこの世界の食事を出されまして…。)
(この世界の料理?なにそれスッゲー気になる!)
凄い食いつきだな。まあ、食べられないからって食事をそのまま地面に埋めるのも後味が悪いし、どうしようか悩んでたから渡りに船だけど。
(………食べます?)
(もらう!)
即答だった。ロウさんってここまで食い意地張ってたっけ?しかし言ってから思い出したがこの装備ではゲートは使えない。
それを伝えようとすると
(んじゃぁ今から取り行くなぁ〜。)
え。
その瞬間、木の上に隠れていた水晶梟が地面まで降りて来る。
くりっとした大きい目が何かと共鳴するように青く光り、オレとナーベラルの周囲を結界で覆う。
何度か見たことがある。これは認識阻害の結界だ。
確か元々は気付かれず敵拠点に潜入するためのものだったな。重宝したっけなあ。
そして次の瞬間
「よっと。」
ロウさんが目の前に、厳密には水晶梟の眼の光の前にワープしてきた。
「うっす。で、メシどこ?丁度夕飯前でさぁ。」
……後でルプスレギナにフォローを入れるよう言っておこう。
さいどナザリック
「♪〜♪〜」
ナザリック地下大墳墓内、第九階層の厨房に鼻歌が響く。
その主は戦闘メイドプレアデスがひとり、ルプスレギナ・ベータである。
「あら、ご機嫌ねルプー。」
その様子を見て、彼女に声をかけたのは彼女の姉であり、プレアデス副リーダーにしてメイド長、ユリ・アルファである。
「あっ、ユリ姉。いやぁ〜分かっちゃうっすかぁ?」
「そこまで分かりやすいとね。そろそろらいかん・す・ろうぷ様にお夕飯を持って行く時間だものね。」
「そ〜なんすよ、今度のは自信作で…。」
「はいはい。」
同じ姉妹ということで、ルプスレギナは隠すこともなく上機嫌にノロケる。
元気で気まぐれ過ぎる妹が至高の御方に懸想しているのは分かってはいたが、正直ここまで変わるとは思いもしなかった。
叶う叶わぬは別として、姉として応援してやりたい思いもある。
「じゃあ、私はこれで。」
「?食べていかないんすか?」
「あのね、つまみ食いに来たみたいに言わないで。食べるときは普通に食堂使うわよ。」
ユリは呆れ気味に言う。
「そっすか。それじゃアタシはもう少ししたらこれ持ってくっす!」
「はいはい、頑張んなさい。」
その後、らいかんからのメッセージで、後で食べるという旨を伝えられ、落ち込むかと思いきや、「それもそれでアリっすねぇ。」とニヤニヤしていたのだった。