「さて、そろそろカルネ村に着きますよ。」
ンフィーレアが冒険者達の方を見てそう言い、再び前を向いてしばらくすると
「あれ?」
と少し間の抜けたような声をあげた。
「どうしました?」
「いえ、カルネ村の周りに見たことのない柵があるんですが…。」
カルネ村は森の賢王のテリトリーであるため、滅多なことでは魔物に襲われない。
それがいきなり柵で囲まれているのだ。それもかなり頑丈そうである。
少なくとも良いことが起きたのではあるまい。
例えば誰か村人が畑仕事の最中に魔物に襲われたとか、或いは野党に襲われてその時の怪我が元で亡くなったりしたのかも知れない。
実際は陽光聖典が攻めてきたからであるのだが。
なお、アインズとらいかんはその時含めて二度目の訪問であったが、アインズは冒険者モモンとしては初めて来たことになるためそれを口には出さない。
らいかんも必要以上に不安を煽るのは得策でないと考えたのか、特に何を言うでもない。
ンフィーレアが急にそわそわし出したことから、漆黒の剣のメンバーたちは事情を聞く。
「実は、知り合いが村に住んでまして…。」
それを聞くなり、少し足を速める一行。
しかしその途中、目の前に現れた小さな影に呼び止められる。
「すみませんねぇ、武器を置いてもらえますかい。」
声の主はゴブリンであった。
しかし、前日に戦闘になったよく言えば野性味あふれる、悪く言えば理性などまるで無いかのようなゴブリンとは打って変わって、こちらは比較的理性的であり、装備も整っている。
周りを見回せば同じようなゴブリンが幾匹か居り、中には弓に矢を番えて警戒する者までいる。そして、彼らはいつの間にか一行を取り囲むような形をしていた。
どうやら草むらに紛れて回り込んできたらしい。
(ロウさん、これは…。)
(まぁ、あの時モモさんが村娘にくれてやった角笛でやって来た連中っぽいやね。)
「こっちも手荒な真似はしたくないんでねぇ、少なくともアネさんが来るまでは大人しくしててもらわないと。」
そう言うや、チラリとアインズ達の方を見やり「特にそっちの人らにはね。」
と釘を刺す。
「心配しなくても、そちらから危害を加えてこなければこちらも何もしないとも。」
ねぇ?とアインズがいえばらいかんも頷く。
ナーベラルも同様に大人しくしている。
すると少しして、見慣れた顔がこちらにやってくるのが見えた。
「ゴブリンさん達どうしたの?何かあった?」
それはいつだったか、アインズ達がたまたま命を助けた少女、エンリ・エモットであった。
訳を話すとエンリは一行を快く村の中に入れてくれた。
あのゴブリン達は?という問いが当然出たが、話を聞く限り、彼らが柵を作ったり村人に戦闘訓練を施したり、村内の警備などを請け負っているらしい。
そのお陰か村の中で彼らは自警団のような位置付けをされているようだ。
ただ、モンスターということで少し敬遠する人もいるようだが。
エンリの無事な姿を見たンフィーレアは、側から見ても分かりやすく安堵していた。
その後、昔なじみ同士水入らずで積もる話もあるだろうと、漆黒の剣は気を遣って事前に伝えられた滞在拠点へと荷物を運ぶ。
アインズとらいかんも彼らに続いた。
因みにモモンはロウとアインズの共通の知り合いということを話すと、村人達からは肯定的な反応が返って来た。
それからしばらく後、翌日の薬草採集に向けて色々と準備をし、拠点にやって来たンフィーレアから再度採取する薬草の種類や入る場所の確認の説明を受け、翌日に備える一同なのだった。