ンフィーレアの様子がおかしい。
いつからかと問われれば、昨晩自分たちのところにわざわざやって来た頃くらいからか。
今思えば様子を伺っていたのだろう。
そしてその疑念の正体は思いの外すぐに判明した。
依頼のために森に向かう前、訓練をしている村人達の様子を眺めていた己とナーベラルの元にンフィーレアが駆けて来た時は何事かと思ったアインズであった。
まして
「あ、あの、モモンさんはアインズ・ウール・ゴウンさんなのでしょうか?」
なんて聞かれた日には思わず仰天してしまったくらいだ。
「いや…。」
最初は否定しようとしたが、
「この村を、エンリを助けてくださってありがとうございました。」
などと言われて仕舞えば、最早否定する訳にもいかず。
「……どうしてわかった?」
アインズは努めて冷静に問う。
曰く、はじめは単に未知のポーションの製造法を知ることが出来ればと思い近づき、そして聞く限り全く同じものをエンリに使ったことが分かったと。
はじめはごくごく稀な偶然かとも思ったが、ロウという人物もまた、アインズ・ウール・ゴウンと同じくどこからともなく現れたとエンリが言っていた事。そして再び現れては身元不明のモモンの友人を名乗ったことが不自然に思えたと言う。
であれば、アインズは何かしらの訳があってモモンと名乗り、ロウはその手助けをしているのではと思い至ったらしい。
「すみませんでした」と頭を下げて謝って来たが
「別に謝る必要もないだろう。」
「え、でも。」
「コネクション作りの一環であるなら何も悪くはないだろう?それにポーションの製造法を知ったとして、それをどうするつもりだったんだ?」
「あ、いやそこまでは。単に未知のポーションを前に知的好奇心が先走ってしまったと言うか。」
「なら何も問題はない。悪用するつもりだったならともかく、いたずらに広めたりしなければ問題はない。」
「あ、はいそうですか…。」
そしてンフィーレアはキョロキョロと周りを見渡し、「ところで」と問う。
「なんだ?」
「ロウさんは今どちらに?」
「ああ、何でも食材を調達してくるとか。流石に自分が合流することは想定していなかったろうからと。」
ああなるほどとンフィーレアが思った次の瞬間。
村の入り口辺りからざわめきが起こる。
「おぉ〜い、美味そうなクマとって来たんで捌いて欲しいやね。」
両腕で胴体を持ち上げ、そのまま脚を引きずるような形で村に入って来た男がいた。
噂の張本人ロウこと、らいかんである。
元々小綺麗な衣服に身を包んだ男が血まみれになりながらワイルドに獲物を掲げる様は色々とツッコミたいところであるが
しかしなかなかの大物だったようで、村の人たちは何やらいたく感心している様子だ。
本気かあるいは冗談なのか、もうここに住まないかなんて言われている始末である。
(エンジョイしてるなあ……。)
出発したのはそれから一時間の後であった。
トブの大森林に足を踏み入れ、ンフィーレアに目的の薬草の群生地に案内される。目標地点に到着すると、採集に勤しむンフィーレアと漆黒の剣。
モモンとナーベ、ロウは周囲の警戒という建前のもと殿を買って出て、森の賢王とやらと相対するために動き出す。
モモンがふと立ち止まり
「もういいぞ。」
というと、木の上に人影が現れる。
ナーベラルは咄嗟に身構えるが、その正体を見るや困惑と共に脱力した。
「アウラ様?」
「お久しぶりですアインズ様、らいかん様。」
「お〜うアウラか。久しぶりやねぇ。」
「アウラ、お前にやってもらいたいことがある。森の賢王と呼ばれる魔獣を探して貰いたいのだが。」
するとアウラには思い当たる節があったようで
少し考える素振りを見せた後
「ああ!たぶんアイツのことですね!」
と、笑顔で言う。
「では頼む。」
アインズがそう言うと
「分かりました、アイツをアインズ様とらいかん様の御前に誘導すればいいんですね?」
それにらいかんが「おぅ。」と頷いて肯定すると、アウラはその巣穴に向かって走っていった。
さて、伝説の魔獣とやらとのご対面である。
この時プレイヤーの両者は期待を込めて、年甲斐もなくワクワクしていたのだった。