さいど????
ホー、ホー。
何でござるかこの鳴き声。
ホー、ホー。
聞いたことがない鳴き声にそれがしは最初驚き、次第に苛立ち、キョロキョロと周囲を見ても声の主の影すらなく、
ホー、ホー。
辺りの木々を手当たり次第に攻撃して、炙り出そうとしても不埒者の姿は見えず、
ホー、ホー。
ただ、この観察されている感覚が、確実に見られているのに何処にもその主がいない不気味さが、ただただ不安を駆り立てるのでござるよ。
ホー、ホー。
ああもう!鬱陶しいでござる!
それがしは巣穴に戻るでござる。
ホー、ホー。
距離を離したのに撒いた気がしない。それどころか巣穴まで着いて来たでござるよ!?
ホー、ホー。
もう勘弁して欲しいでござるぅ。
ホー、ホー。
それがしが巣穴の入り口に尻を向け、前足で耳を塞ぎながらどうにかこうにか昼寝でもして気を紛らそうとしたでござるが
その寝入り端
「おっ、ホーちゃん張り付いててくれたんだ。ありがとー。って、フェンもクアドラシルもそんなにヤキモチやかなくってもいいでしょ〜?」
あまりに緊張感に欠けるその声が聞こえた刹那、それがしの体は一目散に逃げ出していたでござるよ。
さいどあうと
らいかんとアインズは暇だった。
(それで、アウラ命じたのはトブの大森林内の地理の把握と、オレっち達に迎合する魔物の確認及びナザリックの倉庫の建築だったっけ?)
(まあ、そんなところですね。とは言っても倉庫というよりはいざと言うときの緊急避難場所と言った方が正しいですね。)
確かに、森というのは同じような景色が広がり迷いやすい。
万一のための目印としても、そう言った建築物はあると無いでは安心感が違うだろう。
(とは言え、まだまだ始めたばかりの計画ですから、まだ幾ばくか時間がかかるのが現状ですが)
(まぁ、いんでない?少なくとも急いで焦って突貫工事になるよりはええやね。)
尤も、守護者達がそのような手抜き工事をするとも思えないが。
そうしてアインズとらいかんがナザリックの今後についてメッセージで話していたら、森の奥の方から大きな音が近づいてきているのが分かる。
ルクルットが真剣な表情で
「何かデカいものがこっちに向かって来てる。こりゃあこっちに来るのもすぐだな。森の賢王かどうかまでは分からないが。」
「撤退を。モモンさん殿を任せても?」
過日の先頭を見ているからか、漆黒の剣のモモンへの信頼は短期間でうなぎ上りなようだ。
「ええ、お任せを。あとは我々で対応しますので。」
「あの、モモンさん。」
「何でしょうか?」
「森の賢王は出来れば殺さずに追い返すだけにしてもらえませんか?」
「え、いやいやそんな無茶な。」
ルクルットはそう言うが
「構いません。善処しますよ。」
当のアインズは自信満々である。
ンフィーレアと漆黒の剣が居なくなった森の中、こちらに迫る足音は徐々に大きくなりつつある。
「さあ来るよ〜。」
「ええ、油断はできませんね。」
強敵ならばよし。
賢王の名に恥じぬ未知の知恵を有しているならなおよし。
瞬間、アインズはグレートソードを盾のように構える。
鈍い金属音と共に何かがアインズの剣を打撃した。
「なるほど、蛇の尾とは言い得て妙だ。」
鞭のようにしなる尾。なるほど少なくともその辺の獣よりは知恵はある。
「ほう、それがしの初撃を防ぐとは大したものでござる。」
(それがし?)
(ござる?)
なんで侍言葉?と二人が思っていると
「侵入者よ、今逃げるのであれば、先程の防御に免じて追わずにいてやるでござるよ?」
未だ尾以外見せない森の賢王は己の力に自信があるのか、それともこの森のヌシとしての矜持かやけに上から目線である。
「愚問だな。お前を倒し、利益を得るためにここに来たんだ。しかし残念だ。森の賢王様は自らの姿も見せられない臆病者と見える。」
「…言うではござらぬか侵入者。ならばそれがしの偉容をその目にしかと焼き付けて死んでゆくがよいでござる!」
ゆっくりと、しかし確実に森の賢王をがこちらに向かって歩いてくる。
それは絶対者が己を見せつけるが如く。
そしてその姿に二人は驚きを隠せなかった。