「こ、これが、森の賢王ですか。」
漆黒の剣リーダーのペテルは顔を引きつらせて目前の魔物を見る。
(まあ、そう言う反応だわなあ。)
(ハムスターですからねえ。)
(嘘ついたとか思われたらどする?)
(いやでもそれは無いかと…。)
冒険者モモンの信用は漆黒の剣相手にはそれなり以上と信じたいが。
コケ脅しだったと言われれば、はいそうですとしか言えない。
実際、アインズにかかればあっさりだった訳だし。
「すごいです!」
(え?)
「ええ、見るからに強大な魔物と分かりますね!」
「モモン殿もその友人殿も、並々ならぬ使い手なのは最早疑いようも無いであるな。」
「いや、オレっちは特に何も…。」
「そう言う謙虚さもモテる秘訣だったり?」
「なっ、ナーベはどう思う?」
突然の誉め殺しにタジタジになったのかアインズは側にいたナーベラルに問う。
「強いかどうかはともかく、凛々しく力を備えた良い目をしているかと。」
お前もか、と話を振る相手を間違えたアインズ。
謙遜しようとも思ったが、ここまで持ち上げられている以上それはともすると嫌味にしかならない悪手だろう。
「皆さん、森の賢王は私の支配下に入りました。もう安全ですので、危害を加えてくることもありません。」
「えっ、それは本当なんですか?」
「誠にござる。これからはこの森の賢王。殿と歩み、殿に生涯尽くす所存。」
その言葉に漆黒の剣は賞賛を述べるも、ンフィーレアは顔色が変わり
「で、でもそうなったら森の賢王がトブの大森林から離れるということでしょうか?もしそうだとしたら、カルネ村はモンスターの被害に遭うようになるんじゃ…。」
「あぁ、そこんとこどうなん?賢王くん。」
らいかんが問うと
「まあ、それはそうなるでござろうな。ただ、今は森の中も大きく勢力のバランスが崩れつつあるでござる故、正直それがしがいてもいなくてもそう大きくは変わらないと思うでござるが。」
その言葉を聞き、ンフィーレアは更に顔を青くする。そんな…と少し放心状態になったと思ったら、今度は意を決したように
「モモンさん、僕をあなたのチームに入れてはもらえませんか?」
「は?」
「へぇ〜。」
「僕はエンリを、カルネ村を守りたい。でも今の僕は正直強いとは言えません。そのための知恵や力をモモンさんやロウさんからわずかでも、それこそ欠片であってもご教授願いたいんです!」
アインズが困惑し、らいかんが微笑ましいものを見る目で見つめる。
「薬学でなら少しはあなた方の役に立てると思います!雑用でも何でもしますから、どうかお願いします!」
青くも必死で真剣で、本気の目だ。
そして、それをアインズは嫌いにはなれなかった。
(ロウさん。)
(何モモさん。この子気に入ったの?)
(まあ、はい。)
(でも流石にギルドにまで連れては行けないよなぁ、モモさんの決定ってことでゴリ押しも出来なくは無いだろうけど。)
守護者達やその他NPC、特にアルベドなどは基本的に人間というものを格下として見る傾向がある。
それはこの場にいるナーベラルとて同じだ。
たまに手解きをする程度なら問題はなさそうだが、それ以上となると些か厳しい。
「少年。」
「はっ、はい!」
「気持ちは十分に伝わったとも。」
「で、では!」
「だがすまんな。残念ながら今は君を我々のチームに迎え入れることはできない。」
「そうですか…。」
「だが、君のことは覚えておくとも。村を守ることについてもささやかながら手を貸そう。君の協力はその時にさせて貰うとするさ。」
「あ、ありがとうございます!」
礼には及ばないさ、とアインズは軽く言う。
その後、森の賢王の案内で手付かずの薬草の群生地を見つけ、依頼終了が予定よりもかなり早まったのであった。