らいかんは工房に籠り、トブの大森林で拾ったアイテムで実験をしていた。
それというのも、ユグドラシルの同様のアイテムとの効果の比較をするのが目的だ。
例えば、それぞれの土に同じ植物の種を植えてその生育具合を見たり、石や木材の強度、また魔力を流した際の変化などなど、見たいものは多岐に渡る。
あわよくば、作品へのインスピレーションでも得られれば上々。
とは言え、その結果はこれから長い目で見なければ何とも言えない。
他にも、この世界のものでもユグドラシルのレシピに対応できるのか、できないにしろこの世界の同様の物で代用できるのか、自身は趣味の延長からやっていることとは言え、ちょうど友人であるアインズもその辺りを気にしていた様だし、ある程度結果が出たら知らせようと思うらいかんである。
「フゥ〜。」
とは言え、ある程度時間が経つと少しばかり疲労も溜まる。
らいかんはいつものようにキセルを咥え、一服し一息つく。
「ま、根を詰め過ぎても良い結果は出ないやね。」
ふと、友人は今どうしているだろうかと思う。
荷物の整理やら何やらがあるのと、らいかんが獲って余った分を譲った熊肉も残っているため、念のために村にもう一泊して翌日の朝早くに出立するような事を言っていたが、メッセージが来ない事から特に問題は起きていないのだろう。
「ルプスレギナ。」
と、そばに控えるメイドに言う。
「はい、お呼びでしょうか、らいかん・す・ろうぷ様。」
するとススッと慣れた動きでルプスレギナが近づいて来る。
「少し息抜きにスパリゾートナザリックに行ってくるやね。」
そういうと、ルプスレギナは
「はい、行ってらっしゃいませ。」
と、恭しく一礼する。
らいかんは座っていた椅子から立ち上がると、寝室にあるクローゼットからバスローブを取り出す。
備え付けの浴室も十分に広くていいが、今は何となくそれ以外の湯に浸かりたい気分である。
それに人間の頃の名残か、風呂に入りたい欲求というのはあるもの。
まして鍛治仕事など汗をかく仕事をすれば風呂が恋しくなるは必然。
故にらいかんにとって入浴は食事と同じく、大事な習慣である。
何せこのためだけに全ての義手義足を防水仕様にしたくらいだ。
桶とタオル、それに着替えを持ち、鼻歌を歌いながらスタスタと第九階層の廊下を歩くらいかんに、シモベ達は立ち止まり深々と頭を下げてくる。
それに「お〜うお疲れさん。」と手を振っているうち、目的のスパリゾートナザリックに到着する。
今日は古代ローマ風かなぁなどと考えながら脱衣所で衣服を脱ぎ、籠に入れる。
桶とタオルを手に、さながらかつての銭湯のようなスタイルで堂々と浴場に入って行く。
「かつてローマの市民は、一日の内数時間を大浴場で過ごしたというが、こうして入ってみると、その気持ちも分かるってもんやねぇ。」
ローマの皇帝は、外国人に「なぜ毎日風呂に入るのか。」と問われ、「一日に二回行くだけの時間を取れないからだ。」と返したという。
日本人としてなんとなくシンパシーを感じてしまう話である。
のんびり湯船に浸かりながら、そんな事を考えているとなんとなくお湯を吐き続けるライオンの像に目が向く。
言わずと知れたギルド内の大問題児、るし★ふぁーの作たるライオン型ゴーレムである。
なかなかに傍迷惑なヤツではあったが、らいかんは別に彼のことは嫌いにはなれなかった。
だからと言って好感情を抱いていたわけでも無いが。
そんな旧友に想いを馳せつつ、「次はサウナかなぁ。」とスパリゾートナザリックを満喫するらいかんであった。
ちなみにらいかんの元々着ていた衣類は、一般メイドが洗濯するために持っていこうとしたら、突如現れたルプスレギナが「アタシがお洗濯するから大丈夫っす。」と笑顔で謎の圧を放ちながら持っていったという。