時間は少し遡り、円卓のある部屋にてくてくと歩いて向かうと、そこに目当ての人物は居なかった。
何故歩いていたのかと言うと、自分たちの足跡をらいかんは少しでも記憶に焼き付けたかったからだ。
噛み締めるように、限られた一秒一秒を使って悪い言い方をすれば、お上りさんのようにキョロキョロとしかし、じっくりと見て回っていた。
そうこうして、辿り着いた玉座の間。
「相変わらず仰々しいやね。」
凝った作りの大扉(尤も、このギルド拠点ナザリック地下大墳墓の中で凝ってないところの方が少ないが)を前に、つい苦笑してしまう。
(もっと他メンバーと積極的に話してれば良かったなとガラにも無い後悔までしそうだ。)
引きこもり気質の自分にとても良くしてくれた自慢のフレンド達を思い出して、自嘲気味にそう思う。
扉を開けて中に入ると、シモベたちを侍らせた此処の事実上の主人が椅子に腰掛けていた。
(何やら画面と睨めっこしておられる。)
かつて多くの仲間達で賑わった頃を思うと随分寂しくなってしまったが、
「やぁモモさん。何時間かぶり。」
努めて明るく声をかける。
然るのち、何となく自分の紋章の入った旗の下に行ってみる。
ドリルと槌をクロスさせ、その上に正面を向いた狼という、いつかどこかの海賊の旗のような、何ともミスマッチかつ格好をつけた旗印についつい嬉しくなる。
もうちょっと機械っぽさ入れても良かったかなと余計なことを考える。
そんな最中、こちらに気づいたのか我らがギルド長殿は
「ろろろろロウさん!?あ、いや、これは、その、ですね。」
どもったのちに言い淀んでいる。
コレは、ネタの香りがした。
さいどモモンガ
ヤバいヤバい。
何がヤバいって、我がギルドのミスター耳年増(本人にはナイショのニックネーム)のロウさんこと、らいかんにイジられそうなネタを投下してしまったことがヤバい。
ムキムキの体躯にデカくてゴツゴツとしたオリハルコン製の義手義足を身につけ、しかもその中にはカルバリン砲が仕込まれている。
装填とか排莢どうしてんだよとツッコんだら負けである。
イヤ、悪い人じゃ無いんだけど、ある時突然ヘンなスイッチが入ることがあって、たまにウルベルトさんとタッグを組んで節度あるイジりをしてくるのだ。
ちなみに一人の時はちょっと注意すれば素直に謝ってくれる。
要するに気心の知れた身内の悪ふざけとわかる悪ふざけである。
自称人間嫌いの割に、こういうノリは好きというのだから人というのはわからないものである。
って、そうじゃない。
コホン、と一つ咳払いをして
「いやぁ、会えて嬉しいですよ。あっそう言えばギルド武器最後なんで持って来ちゃいました。」
どうだ、ギルド武器だぞぅ。これ以上無い話題だぞぅ。
「ま、いいんでない?」
アッサリ切り返された。
「で、さっきの狼狽え具合はなんなん?」
効かないだとぅ?
もう正直に話すしか…。
「だ〜っはっはっは〜!!
そ〜んなこと気にしてたんか〜!!」
「で、でも仲間が考えた設定を勝手に書き換えるのは…。」
「ヘーキヘーキ、タブラさんだって、ウルちゃんだって、他のみんなだって、アンタだから自分たちの思い出を託したんでしょうよ。無論、NPC達も含めてな。」
「ロウさん……。」(ウルちゃん?)
あぁ、ギルド長やってて良かった。
そう思った矢先の出来事である。
「オレっちだって、宝物殿以外の野郎どものアイテムボックス勝手に漁ってたしなぁ〜!!」
なんですと?
その時モモンガは、椅子に座りながら立ちくらみが起きそうという奇跡を体験した。
「モモンガ様?」
因みにその時ちょうど時計が0時を回っていたのに、彼らはまだ気づいていないのだった。
ほ、ほらキャラは色んな側面あった方が人気出るから(言い訳)