まだ日も高いエ・ランテルの街中を、のしのしと大きな獣が歩いている。
街の住民たちは皆遠巻きに、しかし興味深そうに獣とその背に乗るフルプレートの男を観察する。
フルプレートの男、冒険者モモンことアインズはこれから冒険者組合に依頼の達成の報告と今現在乗っているこの獣、つまりは森の賢王を登録しに行く所である。
(ヤバい、すっごい見られてる。)
普段は特段饒舌では無いが、かと言って寡黙でも無いアインズが事更に黙っているのは、堂々と自らが打ち倒し、屈服させた森の賢王を見せつけるためではなく、ただ単純に羞恥からである。
言うなればいい年した大人が遊園地ではしゃいでいるような感覚である。
(でもまあ、ロウさんに見られてないだけマシかなあ。)
正直、元の価値観を共有している友人は、その違和感に間違いなく突っ込んでくるし、なんならこの状況を見たら、まず間違いなく爆笑する。
多分腹を抱えて15分は笑い転げる。
結果論だが、らいかんを先にナザリックに帰したのはアインズとしては英断だったようだ。
なお、森の賢王の隣を歩くナーベラルはどこか誇らしげである。
一行は組合に着くと、受付で依頼達成の旨を伝える。
そして、ペテルとンフィーレアがその確認と、報酬について話している。
「ありがとうございました。これで間違いなく依頼は完了ですね。」
そう言うと、ンフィーレアは
「既に規定分の報酬はあるんですが、追加分は店にあるのでこのまま来ていただけますか?」と言う。
その言葉に従い、漆黒の剣は報酬を受け取るためバレアレ薬品店に赴く。
なお、アインズはモンスター登録のため少し遅れてから向かうと伝えた。
漆黒の剣が薬草を詰め込んだ壺を運んでいる間に、アインズは水晶梟を羽ばたかせる。
目的はもちろん情報収集だ。
通常ならば夜にすることではあるが、昼の情報も知っておいて損はない。
すると、意外なことにすぐ通常ではあり得ない痕跡が見つかった。
バレアレ薬品店の2階の私室の窓が空いていたのだ。
普通の家庭であっても、防犯面から出かける時は戸締りは気にするだろうに。まして、エ・ランテル随一の薬師とされるリイジー・バレアレの薬品店がそんな無用心なマネをするとも思えない。
少なくとも貴重な器具や、ポーション作りの資料など、売ればそれなりの値になるだろう物をわざわざ泥棒に盗られるような甘さは無いだろう。
壺を運んでいたペテルが「おかしいなあ?」と首を傾げるンフィーレアに声をかける。
「ンフィーレアさん、何かありましたか?」
「あ、ペテルさん。いえ、多分ボクの勘違いだと思うんですが…。」
ンフィーレアがそう言うや、明かりがなく薄暗い部屋の奥の扉がキィ…と開いた。