さいどらいかん
(ロウさん、今大丈夫ですか?)
(うおぅ、モモさんどうかしたん?)
モモさんが焦りながらメッセージを繋いでくるとは珍しい。
(実はですね…。)
なるほど。
念のために放った水晶梟が不穏なもんを映し出したと。
(しかしまぁ、意外やね。モモさんが人間に執着を見せるとは。)
(ええ、どちらもこの世界に来てからの数少ない取っ掛かりですから。)
ふぅーん、とキセルをふかしながら、らいかんは言う。
(ま、でもしばらくは平気だと思うがね。)
(え?)
(だって、あの場にはもう一体水晶獣はいるかんね。)
(え、いつの間に。)
アインズが驚いたように言うが
(薬草の壺に隠した。)
それを聞いた瞬間、鳥肌が立った気がした。
さいどあうと
チチチチチチ
チチチチチチ
チチチチチチ
「ん?」
足元から何やら音が聞こえる。
ネズミでも入り込んだかとクレマンティーヌは最初気にも留めていなかったが、こうも群がられると流石に気になる。
その正体はネズミはネズミでも
兵站破壊特化型水晶獣である。
突破力、破壊力は他の水晶獣には及ばず、サイズも手のひらサイズより少し小さめと一見頼りない。
しかし同時にアインズをして、最も敵に回したくない水晶獣と称される。
その真髄は圧倒的な食欲と強い好奇心。
大抵のものは噛み砕く歯に、気になるものはとりあえず口に入れるという幼子のような探究心を兼ね備え、多くのコレクターの所有物を破壊し尽くしたまさに収集家の天敵とも言える。
更に、この
カリカリカリカリカリ
「あーもう、鬱陶しい。ベルト齧んな!ちょ、その武器特注なんだけど!」
何故か自分の周りにのみ、群れる鼠にさしものクレマンティーヌも苛立ちを隠せないようだ。
漆黒の剣はそれを呆然と眺めるしか出来ない。
「お〜う、
その言葉が聞こえた瞬間、鼠の群れは引き潮の如く現れた男の方へ集まる。
「よ〜しよし、だい〜ぶ集まったなぁ。」
腰をかがめてよしよしと撫で回す男に、ンフィーレアは見覚えがあった。
「あ、貴方はロウさん。」
いつの間にか現れた見知った顔に一同は驚愕する。
「おぅ、久しいやねぇ。」
「冒険者組合の増援?にしちゃあ早くない?」
クレマンティーヌは忌々しそうに言うが、
しかし、それを無視するようにらいかんは言う。
「キミら、救援を呼んでもらえる?できればモモさんね。」
「ヘェー、そんなに死にたいんだー?」
「ロウさん、我々も加勢しますよ。」
「いいっていいって、キミらの覚悟は見届けさせてもらったし、それにキミらにはモモさんにこの事を伝えてほしいのさ。」
「そうですか、ではお気をつけて。」
「ンフィーレアさん?」
「行きましょう。きっと僕らでは足手まといになるだけです。」
その言葉を聞くと、後ろ髪を引かれているような表情で、渋々と言った風に部屋を出て行った。
「いやぁ〜、将来性あるね彼ら。部屋から出る瞬間までオレっちの心配してくれるなんてさ。」
「それで?死ぬ順番が変わっただけだよねー?」
「まぁ待て、取り引きがしたいのさ。」
「取り引きぃ?」
そうそう、とその言葉を聞いたらいかんはニヤリと口角を上げるのだった。