「そう、キミの知っている限りの情報が欲しい。出来れば貴重なアイテムなんかに関してのね。」
「そんな馬鹿げた話にあたしが乗ると思ってんの?英雄の領域ナメてる?」
その言葉を聞き、らいかんはクレマンティーヌにズズイと近寄る。
「ほう!英雄!なるほど、君は特別優れた戦士と言うわけだねぇ。」
テンションが上がったせいか、口調がややおかしくなっているが当の本人は気にしていない。
「で、キミと互角に打ち合える戦士はどのくらいかな?分かっている範囲でいいよ。」
「なーんで答えなきゃなんないわけ?」
「対価は払うさ。」
コトリ、と鞘に収められた細身の剣が置かれる。
「…これは?」
「ヒヒイロカネで出来たスティレット。」
ピクリと反応する。
「うっそだー。だってそれは伝説上の鉱石でしょー?」
「しかし現にここにある。何なら手に取って確認してもらっても構わないさ。」
クレマンティーヌは半信半疑といった様子で鞘から刃を引き抜く。
彼女はヒヒイロカネの現物を見たことがないため、嘘くさく感じていたが、実際に手に取ってみるとどこか普通の武器とは明らかに異なることに気がつく。
「…どこで手に入れたのこれ?」
訝しげに聞くクレマンティーヌだが。
「聞きたかったら情報だ。」
と、にべもなく言われる。
「…この国で言えば、王国戦士長のガゼフ・ストロノーフと青の薔薇のガガーラン、朱の雫のルイセンベルグ・アルベリオン、それとブレイン・アングラウスくらいかなー。」
「それで、レアアイテムについては何か知らないかな?」
「アイテムねぇ。ま、扱えないとは思うけど死の宝珠なんてのは知ってるけど。」
「死の宝珠!聞いたこともない!どこに行けば手に入るね?」
「いや、だから無理だって。そもそもカジッちゃんが肌身離さず持ってんだから。」
「カジッちゃん?」
「そ、ズーラーノーンって知ってるっしょ?そこの幹部。」
「…聞いたこっちが言うのもなんだが随分とあっさり喋るねぇ。」
「別に組織に忠誠があるわけじゃないからねー。隠れ蓑として使わせてもらってるだけで。モチロンある程度義理というか上からの命令には従うけどさー。」
「それで、他には?」
「他ー?」
「わざわざ人攫いしてまで使わせようとしたとっておきがあるんじゃないのか?」
「……。」
「黙秘するならコレはなしだなぁ。」
切りつけようにも所持している武器はボロボロ、本当ならとっくのとうにズーラーノーンの拠点で高みの見物のための準備と洒落込んでいた筈なのにとクレマンティーヌは歯噛みする。
伝説の武器は正直欲しい。
戦うものにとって武器は必須。
かと言ってお楽しみを明かす訳にもいかない。
「ああ、言っておくが逃げられると思わないことやね。」
「はぁ?」
「出口見てみ?」
チョイチョイと指差す方向、男が入って来たドアを見れば、男同様にいつの間にか入ってきていた赤毛のメイドがそこを塞いでいる。
ニコニコと口元は笑ってはいるが、目は全く笑っていない。
そして、今まで一言も発していないことで、クレマンティーヌにより威圧感を感じさせていた。
仮に、目の前の男をこの武器で殺し逃走を図ろうとすれば、瞬時にそれを止めるのも容易いと思わせるほどの。
かと言って窓には先程の鼠の大群で塞がっている。
(あー、積んだかこれ。)
さいどらいかん
いやぁ〜、我ながら上手くいきそうやねぇ。
まぁ、漆黒の剣の面々は今後重宝しそうだし、彼らを生かしておけばモモさんの名声の手助けになる可能性は大やね。
その彼らにさらに恩を売って、さらに(話が本当なら)この世界屈指の実力者の首を手土産にすれば、冒険者モモンの名が広まるのは確実。
そのためにも今ここでその下地を作っておくのが裏方の面目躍如やね。
「まぁ、こっちからの注文はそう難しくはないやね。カジっちゃんとやらから死の宝珠を奪取してオレっちに渡す。ただそれだけ。」
「…だから、それがムズイんだっての。そもそもそんだけの危険犯させて、報酬が剣一本ってケチくさくない?」
「あぁ、それはさっきの情報分の報酬。死の宝珠を持って来てもらえれば追加でいくらか支払うやね。それに…。」
「それに?」
疑問符が浮かびそうなほど見事に小首を傾げる目の前の女にオレっちは最高の策を伝える。
ルプスレギナの方から舌打ちが聞こえた気がするが、恐らく多分きっと気のせいだろう。
「オレっちもカジっちゃんとこ行くからなんとかなるっしょ。」
「はぁ?」
えっちょ、何その反応何気に傷つくんですけど。