さいどアインズ
まったく、ロウさんは相談も無く突飛なことをする。
ゲームでもたまにあったことだが、しかし、それがギルドの利益に繋がっていなかったことはあまり無く、それに加え彼以上の問題児がいたからこそあまり取り沙汰されたことも無かった。
オレはハムスケと名付けた森の賢王と、ナーベラルを連れて墓地に向かい歩いていく。
「それでも、懐かしさの方が勝つんだからなあ…。」
我ながら身内には甘いのかなあ…。
ゲーム内でのこととは言え、伊達に十年来の友人をしていない。
向こうもそう思ってくれていれば嬉しいけど。
ただ話を聞く限り、今回の件はロウさんが気になったアイテムを手に入れる筋書きの、その上に冒険者モモンの栄光を無理やり後載せしたような…。筋書きとしては少し雑な感じがした。
先日言ってくれた焦らなくて良いとは何だったのだろうか。
怒りより呆れの方が先に来るが、ロウさんだしなあ。
まあ、そのロウさん曰く、今回は相手が犯罪者集団であることと、本当にテロを目論んでいたようなので、利用させてもらったとして言い訳も立つだろうとのこと。
あーだこーだ考えているうち、墓地の入り口らしき場所で、王国軍の兵士たちが何やら忙しそうに右往左往しているのに気がつく。
どうやらアンデッドの大軍がこちらに向かって来ているらしい。
近場にいた兵士に
「すまない。依頼を受けて来た冒険者組合の者だが。」
と、声をかけるとその言葉に反応したのか、隊長格らしき人物がこちらにやって来る。
しかしその反応はイマイチで
「銅か…。」
と明らかに落胆の色がこもった声色に、ナーベラルが殺気を飛ばしそうになるが視線でそれを止める。
「すまないが中に入りたいのでそこの扉を開けて貰えるか。」
「いや、しかしそんなことをすればアンデッドが溢れ出てくるぞ!」
「そうか、では強行突破するしか無いな。」
ナーベ。とオレが声をかけると
「はい。」
とナーベラルが返答する。
兵士たちは何やら身構えていたが、オレ達はフライの魔法で扉を文字通り飛び越えて墓地の中へ向かう。
上空から墓地を見下ろして思うのは
(ロウさん、張り切りすぎじゃ…。)
ということだった。
アイテムを使うとは言え、大多数のモンスターを操るには当然集中力が要る。
尤も、適当に誘導するだけならその限りでは無いが。
まして千や二千をゆうに超える数を思うがままに操るには常人のそれを遥かに超えるそれが必要だ。
まあ、襲い来るアンデッドの大軍を次々に打ち破る英雄という偶像を作るにはそれくらいがちょうど良いのだろうが。
ナーベラルも適度に戦い、ハムスケもビビりながらも近づく敵を追い払うくらいは出来ている。
(確か、金髪の女に話を通してあるそうだけど。)
煮るなる焼くなりお好きにどうぞ。と言われているが、どうしたものか。
勧誘するにしても犯罪者、それもテロリストを組織内に抱え込むのはデメリットでしか無いが、しかし優れた武技の使い手ならば、その指南役に欲しいと言うのはある。
何より、戦士の戦い方と言うのをオレはよくわかってないため、その辺のレクチャーもして欲しいところだが。
ただ、それほどの実力者であるなら、所属組織としても生死は問わず回収はしたいはず。
死を操る組織というのなら蘇生魔法も心得ていると見ていいだろう。
その過程でナザリックが人間達に発見されるのは避けたい。
やはり、犯罪者として差し出すのがベストか。
適度に襲って来るアンデッドをあしらいつつ歩いて暫したつ。
墓地の奥に巨大な霊廟らしき建物が見えればそこがアジトらしい。
……まあ、会ってから考えるか。
ロウさんの少々お気楽なところが、オレにも少しばかりうつってしまったようで、なんとも複雑な心境だった。