さいどらいかん
オレっちは水晶梟を旋回させながら外の様子を伺う。
というのも、呼び出したアンデッドはあらかた倒されていて暇になったからだ。
外はもうすっかり暗くなり、夜の帳が周囲を覆っている。腹減ったなぁ…。
この建物の前で一心不乱に呪文を唱えてるローブ姿の集団が話に聞いたカジっちゃんとやらとその弟子か。
確か大事な儀式だとか何とか。何でも死の螺旋が〜とか言っていたが、言った本人もよくわかってなさそうだった。まぁどんな事情があれ、それももう関係なしやね。
未だ慣れない戦士職とは言え、モモさん相手だからね。
人目もないし、最悪魔法詠唱者に戻るのもありっちゃありか。
カジっちゃんとやら本当にご愁傷様やねぇ。
あ、モモさんに気づいたみたい。
さいどあうと
アインズが墓地を奥へ奥へと進んでいくと、霊廟を目に捉える。
そして、その前で円陣を組み何やらやっているのが見える。
やがて、その内の一人がその中心人物と思われる男に耳打ちする。どうやらアインズ達が来たことを伝えたようだ。
その男が顔を上げフンと不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「全く、厄日じゃわい。あの狂人に加え二人も招かれざる客が来るとはな。」
「良い夜だな。つまらん儀式をするには勿体ない気がするが?」
「それはワシが決めることよ。それで、わざわざあのアンデッドの群れをくぐり抜けて何の用だ?」
「なに、私は依頼を受けた冒険者でね。ある人物を連れ帰るのが目的さ。名は言わずとも分かるだろう?」
男は舌打ちを一つすると
「クレマンティーヌめ、また遊びよったな。」
と愚痴るように言う。
「それでわざわざここまで来るとは、無謀なのか勇敢なのか計りかねるな。」
「それは後から分かることさ。それで、お前達以外にはいないのか?他にもいるはずだが。」
ハァ…と一息つくと男は暗がりに向かって言う。
「クレマンティーヌ、どうせ見ておるのだろう。お主に客だぞ。」
「もー、カジっちゃんたらひどいんだー。せーっかく隠れてたのにー。」
「自分の尻くらい自分でふけ。ワシは知らん。」
無愛想どころか、険のある物言いだがクレマンティーヌは特に気にした様子はない。
「んじゃー自己紹介といこうかー。私はクレマンティーヌ。よろしくー。」
「…モモンだ。」
そう名乗るも、アインズからすれば当たり前だがクレマンティーヌとカジットは知らないようだ。
「ナーベ。お前はカジットとその取り巻きを相手にしろ。」
「了解しました。」
「クレマンティーヌ。私たちは場所を移すとしよう。」というと
「いいよー。」
と軽く返事が返ってきた。
(さて、ここからが本番だ。)
アインズは己に喝を入れる。
しばらく歩いてのち、クレマンティーヌが切り出す。
「で、あのロウってのは何が目的なわけー?」
「何がとは?」
「だーって、死の宝珠なんて適応できなきゃ自分が乗っ取られるだけだよー?インテリジェンスアイテムだからねー。カジっちゃんはうまく適応できてるみたいだけどー。」
「さてな。実際今回の件は、恐らくはロウさんも思いつきだろうけどな。」
「思いつきでヒヒイロカネ製の武器交渉に出すかねー。ま、私としては儲けだけどー。」
「それで?目的のアイテムは持ってないのか?」
「だいじょーぶ。そっちのお仲間との戦いで消耗したところをドスッとやってあげるよー。」
戦士のサガか、新しく手に入れた武器を試したそうにしている。
「なんだ、不意打ちしなければ勝てないほどあの男は手強いのか?」
「ま、曲がりなりにも幹部だしねー。多分私でも三回に一回は負けるかなー?」
「そうか。ところで武技と言うのは誰かに教えるのは可能か?」
「なにー?それも取り引きの内?」
「まあ、内容によっては追加報酬も考えよう。」
「……まー、素質にもよると思うけど、覚えられる人は覚えられるんじゃない?私は教えたこと無いから断言は出来ないけどねー。」
「覚えられる数や一度に使える数に制限は?」
「覚えられるのはさっきも言った通り当人の素質次第だねー。一度に使える数は、多くてもガゼフ・ストロノーフの五個…いや六個?だったと思うけど。」
やはり有名人はそれだけ手の内も知られているのだろう。
それだけ警戒に足る人物であるとも言えるし、知られたら知られているなりに対策もしてはいるだろうが。
「それに、武技は自分で組み合わせたり編み出したりも出来るみたいだねー。」
「なるほど、勉強になるな。」
やはり知識というのは覚えておくだけ得である。
「それよりもさー、大丈夫連れの人?魔法詠唱者っぽいけどー?」
「なに。抜かりはないさ。」
「ほんとかなー?」
夜は、まだ長い。