過去編を紐解いていく感じで読んでいただけたら嬉しいです。
夢を見た。
己の起源たる始まりの夢を。
戦いの声が聞こえる。
そもそもの発端は通りがかった森で7、8人の人間種のプレイヤーが寄ってたかって、ひとりの異形種を痛ぶっていたのを見てしまったことだ。
買い物ついでの散歩がてら、偶然に通りがかってしまった修羅場。
異形種狩りという忌まわしい因習。
憂さ晴らしか、それともアイテム目当てか。
あるいはその両方が目的なのか。
なんにせよ、見ていて気分の良くなるものではない。
彼はそれに割って入ったのだ。
「オメェさんは離れてな。」と、護衛のはずのアタシに言いつけて。
最初は不意打ち気味に攻撃が決まり、驚いた敵の隙を見て囲まれていた異業種を逃がす。
しかし戦力は多勢に無勢。
時間が経つほど徐々に劣勢になるのは明白。
そのうえ不運なことに、相手の一人がワールドアイテムの所有者であったのだ。
アタシは無礼を承知で彼の手を引き、必死に逃げて、隠れて、どうにかアタシが回復魔法で手当てをする。そして右側が血の滲む包帯まみれの彼が言うのだ。
「慣れねぇこと…するもんじゃ、ねぇ、やね。」
ごめんなさいと謝るアタシに彼は言う。
「自業自得なんだよこの腕は。この、脚は」
あの人は自嘲気味にそう言った。
「テメェの力を過信したバカが、自惚れた結果がこのザマなんだよ。」
自分が助けられたように自分も助けられると思ったと、それをバカだと彼は言う。
倒れても、意識を失ってもおかしくないのに、あの人はそれでも真っ直ぐに向こうを見据えていた。
空気がひりつく。
敵が、来る。
プレイヤーを殺すプレイヤー。
アタシじゃ絶対に勝てない。そう、分かる。分かってしまう。
それに、彼は立ち上がり、向き合って啖呵を切る。
「さぁ、いい子だから見せておくれよ。その剣で、その槍で、或いは矢でも魔法でだってかまわねぇ、このオレを殺しうるモノをよォ!!」
間一髪、救援は間に合った。
けれどそれ以来、彼は戦いの最前線から姿を消した。
右腕も右脚も、もう使い物にならなくて。
ごめんなさい。
アタシが守るはずだった。
そう告げると、彼は困ったように笑う。
いつものキセルを口に咥えて、ふかしながらゆっくり吸って、ゆっくり吐く。
煙が傷に染みるのもお構いなしだ。
「謝んねーの。たまには逆の立場ってぇのも悪かねえ、悪かねえのさ。」
それに、と彼は続ける。
「オメェさんをキズモンにしちゃぁ、同朋に、メコンさんに合わす顔がねぇのよ。」
ひび割れたサングラスをかけ直して、ニヤリと格好良く、格好をつけて笑う彼を、らいかん・す・ろうぷ様を見てアタシは、ルプスレギナ・ベータはおかしくなってしまった。
さいどらいかん
懐かしい夢を見た気がした。
そういえば、そんな設定もあったなぁ。なんてことを夢を思い返して思う。
いや、起こったこと自体は事実だから丸っ切り嘘では無いんだけども。
あの当時はまだ普通に前衛職やってたから当然工房もなくて、特にその日はイベントなんかもなく暇だったから、たまには街に繰り出してみるのも悪かない何て思い立って、他ギルドもなかなか攻めて来なかったもんで、このままじゃプレアデスも持ち腐れだ〜ってんで、時たま巡回してもらうようになって、たまたま自室の前を見回りしてたルプスレギナを見て、たまには外に連れ出すのも乙かなぁなんてふわふわした考えで、親であるメコンさんに相談したらメコンさんは割りかしあっさり了承してくれた。
まぁ出かけると言ってもRPGで言うお決まりの最初の街だし、その近辺の森ならついでに散歩してても絡まれないかなぁなんて思ったりして。
何せ大人気MMO RPGであるからして、自然の再現度も凄まじくてリフレッシュになるんだよね。
散歩中に鬱陶しい雑魚敵掃除してくれればいいや〜なんて考えもあって。
モモさんに頼んでゲート開いてもらって、そしたらそこで異形種狩りなんていう胸糞見ちゃったもんで、でも最初のダンジョンだし低レベルの初心者狩りかなぁ、なんてたかを括って攻撃してみたら何故かレベル100がひとりいて、しかも当時実装されたばかりのワールドアイテム持ち。
おかげでちょっとピンチになりかけた。
誰だよレベル上げサボってたやつ。
オレっちだけども。
でも向こうもたまたまアイテムを手に入れたばっかしだったみたいで、使い方もよく分かってなかったみたいなんであんま関係なかったけど。
その隙に即メッセージで応援要請したね。
ダサいとか言わないで、必死だったんだから。
まぁあとは時間稼ぎをチャチャっと済まして、ハイおしまいって感じで。
ついでにワールドアイテムも頂いてホクホクでしたわ。
うわっはっは、ザマーミロ。
腕だの脚の下りは完全に後付けだねうん。
酒を飲みながらそん時の話をしてたらメコンさんその場でコンソール開いてなんかしてたけど何だったんだろ?
後になって、というか今になってメコンさんがルプスレギナに何かしらの変更を施してたことに気づいた。
オレっちに女っ気がないからって、同族には優しくなるようにしてくれたんかね?
いつもの息抜きの散策中、小腹が空いたなぁなんて呟いて、気づいたら隣でニコニコしながら芋を差し出してくるルプスレギナを見て、オレっちは静かにそれを受け取りながらそんな事を考えていた。
さいどあうと、
「えっへっへ〜。」
プレアデスが一人ルプスレギナ・ベータはご機嫌で廊下を歩いていた。
「あら、ルプー姉さん、何かいいことでもあったの?」
すると、同じくプレアデスのナーベラル・ガンマが話しかけて来る。
「いやぁ〜、今朝素敵な夢を見られて幸せを噛み締めてたっすよ〜。」
「夢?どんな?」
「ナ・イ・ショっす〜。」
それを聞いてナーベラルは、ああ、らいかん・す・ろうぷ様関係の夢なんだろうなと察したのであった。