こっちの方は忘れられてないか、戦々恐々している次第。
ナーベラルとカジットの戦闘は案の定と言うべきか、ナーベラルの圧倒的な勝利で幕を下ろした。
しかしカジットは、驚くことにほぼ消し炭も同然の真っ黒になってもかろうじて生きていた。最後の最後、なんとか防御魔法を展開できたのだろう。それでも死に体であることに変わりはないが。
「その若さでよくぞそこまで……。」
「あら、やっぱり虫ケラはしぶといのね。」
「ククク、ワシを虫呼ばわりとはな。言ってくれる。だが……ゴホッ、返す言葉もないのも事実だな。」
「意外とあっさりしてるのね。」
「まあ、お主ほどの使い手に負けたのだ。力量を測り違えていたのはワシの方だったというだけのこと。ズーラーノーンの魔法詠唱者としては寧ろ誉れよ。褒美をくれてやりたいが、生憎と渡せるものはなくてな。」
「別にいらないわ。」
「では……。」
「とっとと殺そっかー。」
カジットの後ろに立つのはクレマンティーヌ。
しかし、カジットは最後の力か鬼の形相でグワっと後ろを振り向くと、アンデッドを呼び出しクレマンティーヌに襲い掛からせる。
「ようやっと尻尾を出したかキツネ。」
「へー、まだ力残ってたんだー。」
クレマンティーヌが挑発的に言うが
「なに、燃え尽きる前の蝋燭のようなものよ。」
と、カジットはなんでもなさそうに返すと続ける。
「ズーラーノーンのため、我らが師のために、貴様だけは地獄に連れてゆく。」
「
空間がひび割れ、虚空に穴が開く。
「このっ…スケリトルドラゴン二体出して、まだそんなに力が…。」
「切り札は取っておくものよ。例えば…組織に仇なす不届き者を処分するためにな。」
アインズの暗黒孔と、似て非なるソレは
らいかんはその執念に強い関心を示した。
クレマンティーヌは暴れるものの、その吸い寄せる力には敵わない。
虚空より現れた孔は二人の人間を吸い尽くすと、再び虚空に消えて行った。
ことの一部始終が終わったのを確認すると、らいかんは首飾りを外して人間形態に戻り、ルプスレギナと共に地下神殿から出て来た。
そして、カジットのいたあたりからヒョイと目的のアイテムを拾い上げる。
「さぁて、これで死の宝珠とやらはオレっちの手に入ったやねぇ。」
禍々しく脈打っていた死の宝珠は、しかし今となっては本当にその辺の石ころと変わらなかった。
そして、聞いていたことを思い出して呟く。
「人間の負の感情を集めて力にする…。なかなか使えそうやねぇ。」
上手くすれば、貴重な魔結晶を用いない簡易的なエネルギー機関としてゴーレムやら、色々な装置を動かせる動力源にもなるかもしれない。
と言うか魔結晶に関しては水晶獣にしか使いたくないというらいかんのこだわり故だが。
ただ、問題点はその充填期間だろう。
ハッキリ言って数年がかりでスケリトルドラゴン二体がやっとと言うのは、レベル100のプレイヤーの感覚からすれば微妙もいいところだ。
仮にユグドラシル内で、そんな半端なアイテムがレア枠で実装されようものなら運営は色々な意味でフルボッコになるだろう。
最後の最後で未知の魔法を使っていたのは気がかりだが、あれはカジットが身につけていたアイテムなりに魔力を込めていたと考えるのが妥当。
ぶっちゃけエネルギーが欲しいなら何かしらアイテムを用いた方が早いし、確実だ。
無論、集める場所や死の宝珠を扱う者のレベルなどによって違いはあるかもしれないが。
それは要検証として後回し。
他にもアインズから聞いた話によれば、ユグドラシルの治癒のポーションだけでもオーバーテクノロジーらしく、必要以上にケチることもしたくは無いが、ゲーム内のように消耗品としてポンポン使うのは些かもったいないとのこと。
そう言った意味では優秀なエネルギー源かもしれない。
ポーションの材料はあるかどうか分からずとも、人間なら都市部にたくさんいるのだから。
そしてアイテムの消費を最低限に抑えると言った意味でも、今のところは表に出るのはアインズだけの方がいいだろう。
そもそも今回のらいかんの参加自体、漆黒の剣の救援という目的があり本来想定外。らいかんがそれに乗っかってクレマンティーヌと交渉しアイテムを手に入れ、或いは手放し、ついでに冒険者モモンの冒険譚に少しばかり花を添えただけだ。
ヒヒイロカネのスティレット自体、その武器の性能や大きさの都合上、それほど莫大な鉱石を要するものでも無い。
それに、取り戻そうと思えばいつでも出来る。
ただ、結果として色々とわかって来たことや、今後の展望が少しばかり見えて来たのはナザリック地下大墳墓としては好都合だった。
結果としてプラスに働いたと言っていい。
供回りを遠ざけ、静かになった墓場で2人になったのを確認するとアインズは問いかける。
「ロウさん、なにをそんなに焦ってるんですか?」
それは怒っていると言うよりは、諭すような優しい聞き方だった。
「アッハハ焦ってるように見えた?モモさんがそう思うんならそうなんやろうね。モモさん、仲間のことよく見てるし。」
そう言ってらいかんは、フルプレート姿のギルド長を困ったように見つめる。
「いやぁ〜ごめんねぇ、ちょっと現状でオレっちがどこまでやれるか試してみたかったのと、モモさんの脛かじってばっかなのもアレだと思ってやね。」
らいかんは後ろ手で頭をかきながら苦笑する。
流石にここまで見抜かれてはすっとぼけるのも不誠実と思ったのだろう。
確かにNPC達は今回の件に関して好意的に受け取ってくれるだろうが、らいかんが色々と独断専行したのもまた事実だ。アインズとしても、特にそれを強く咎めるつもりは無いがこればかりはらいかんの気持ちの問題なのだろう。
「適材適所ですよ。そりゃあ一緒に戦ってくれれば心強いですし、嬉しいですけど。」
アインズもそれを汲んでいるからこそ、こうして言葉を選んでフォローしている。
「いやすまんね。気ぃ遣わせて。」
「いえ、気持ちはわかりますから。」
アインズこと鈴木悟とて仕事で功を焦り失敗したことくらいある。
しかしその度にリカバーし続けて来た。
だからこそ失敗は成功で塗り替えられることも知っている。
「今後、こう言うことをするときは一言でも良いので相談してください。仲間なんですから。」
「…ああ、ありがとなぁモモさん。」
その時の日の出が、アインズとらいかん、二人の行く先を照らしてくれているように思えたのは都合が良すぎるだろうか。
ウマ娘に浮気とかじゃないんですよ?
ただ、ウインディちゃんのキュートさに気がついたらお話書いてたっていうか…(言い訳)。