ナザリック地下大墳墓。その玉座の間にて、ひとつの裁きが下されんとしていた。
玉座に腰掛けるアインズの目の前には獣人形態に戻ったらいかんがいつになく神妙な面持ちで片膝を突いている。
「そういうわけだ。今回、我が友らいかん・す・ろうぷの独断専行はその功績を持って取り消すものとする。」
「はっ!」
玉座の間は今喧騒の最中にある。
一同に集った守護者達は皆疑問に思う。
らいかんのすぐ隣に控えるルプスレギナに至っては今にも泣きそうである。
何せ、この度の作戦のサポートを請け負っていたらいかん・す・ろうぷがアインズの裁きを受けているのだから。
アインズが静かにスッと片手を上げる。
「静粛になさい。」
アルベドがそういうと、今度は水を打ったように静まり返った。
皆、アインズの意図を測りかねているようだったが、しかし静寂を破るのは至って冷静な声色だった。
「なるほど、そう言うことですか。」
デミウルゴスが何かを悟ったように発言する。
「ドウイウコトダ?」
コキュートスが問う。
「アインズ様、らいかん・す・ろうぷ様。差し出がましいようですが、宜しければわたしが考え至った御二方のお考えを述べてもよろしいでしょうか。」
(え、モモさんなんか考えあったの?)
(え、いや、特に言った以上のことは……。)
そうこうしている間にもデミウルゴスがウッキウキな表情でプレイヤー二人を見て来る。
「まあ…良かろう。デミウルゴス、皆に分かるように説明してやれ。」
「はっ、ありがとうございます。本来、こう言ったことは黙すが華とは思いますが、このデミウルゴス。非才ながら説明をさせて頂きます。」
そういうとデミウルゴスはクルリと反転し、守護者一同を視界に収める。
「どういうことですか?」
おずおずとマーレが挙手し、デミウルゴスに問う。
「なに、御二方の描いた絵図は、我々の予想を遥かに越えていたと言うことだよ。」
メガネをくいっと上げながらデミウルゴスはそう述べる。
「まず、アインズ様が、皆を集めた上でらいかん・す・ろうぷ様を御叱責なされた。これは我々に要らぬ心配をかけまいとすると同時に、意識の引き締めも狙ってのことだろう。」
「要らぬ心配、ですか?」
「即ち、内部分裂さ。」
その言葉を聞き、一同は固唾を飲む。
「アインズ様とらいかん・す・ろうぷ様、お二人の関係性はあくまで対等。されど今回のようなことが無いとも言い切れない。だからこそ、非常時においての命令系統はアインズ様の下、一本化すると言うことさ。」
(え?)
(ん?)
「アインズ様は罰を与えないことでらいかん・す・ろうぷ様の顔を立て、またらいかん・す・ろうぷ様も報酬を受け取らないと言うことで二心がないことをわざわざ我々の目の前で示された。
これは平時は対等なれど、ナザリックの危機となれば、らいかん・す・ろうぷ様も大人しくアインズ様の指揮下に加わると言う意思表示だろう。」
(そうなの?)
(いや、正直そこまでは……。)
当人たちが置き去りで話が進む進む。
因みにルプスレギナは目をキラキラさせている。
ヘンに否定できない事この上ない。
「それに加え、我々にナザリックに貢献する機会をも与えてくださったのだよ。」
ナザリック地下大墳墓に所属するシモベ達にしてみれば、当たり前過ぎるほどに当たり前のことをさせてもらう、という言葉に皆一様に首を傾げる。それもさもあろう。とデミウルゴスは頷くと
「御二方のお力を持ってすれば、この世界の支配などあっさりと達成できるでしょう。しかし、それでは我々の立つ瀬が無くなってしまう。御二方はそれを懸念され、我々にも力を振るう機会をお与えになって下さったのさ。」
おおー!!と盛り上がる玉座の間。
(いや、それって舐めプ野郎ってことじゃ……。)
(ロウさん。それ以上いけない。)
メッセージでプレイヤー二人がそんなやりとりをしているとくるりと振り返るデミウルゴス。
どうやら合っていたかどうかの確認をして欲しいようだ。
(どうするのモモさん。)
(え、いや、やるっきゃないですよそれは。)
少し咳込んでアインズは言う。
「流石だなデミウルゴス。まさかそこまで私の考えを理解していたとはな。」
「勿体無きお言葉です。」
そう言うデミウルゴスは正に感極まっていた。
「すまんね。皆のことを信頼してないわけじゃあ無かったんだが。」
らいかんがそう言うと
「ええ、分かります。ですが、もう少し我々に頼って頂きたいです。」
デミウルゴスが恭しく言う。
「うん。今後も期待してるやね。デミウルゴス。」
そう言い、らいかんはキセルをふかす。
どうやら心持ちが幾分か軽くなったようだ。
「それでは、私とロウさんはこれより内々の話があるのでな。何かあれば私の自室まで来るように。」
そう言うとアインズは、ゲートを開いてらいかんと共にゲートの向こうへ消えて行った。
忘れないでいて下さった方々には感謝です。