フェニレイドを追い、辿り着いた先は、砂が敷かれてあるコート。
その端には、エアームドを控えさせている男。
そして、フェニレイドは男に向かって飛んでいった。
その男がジムリーダーらしい。よく懐いている。
そして、コート内に入ると声をかけられる。
「よぉ、お前さんがチャレンジャーかい?」
その声に頷くと、唯一わかる口元がニヒルに笑む。
ゴーグルをずらして、目を露出させる。その男の目は風を感じさせる空色だった。
「おお、そうかい。一応、名乗りを入れておくか。んん、
俺はひこうジムのジムリーダーヘエラ!
たとえ子供相手だとしても、手加減はしねぇぜ!」
男は口上を述べる。そして私達にも求めてきた為、私達もそれを返す。その口上に満足したのか、頷きながら、再度話しかけてくる。
「見たところ、保有しているポケモンは一体か。なら、一対一で勝負する。…異論は無いか。
そして、一応言っておくと二回目以降はジムトレーナーと戦わないと俺と戦えないからな。弱いまま来られても、色々なスケジュールも有るし、相手できないから、そこのところをわかってくれ。」
そう言って、和風な地方のエアームドを前に出す。やる気満々な様相だ。
それに伴い、私もマキュリに前に出る様に指示する。
先程の顔をしていたポケモンとは思えないほど、マキュリは闘気に満ちている。
フェニレイドが、いつの間にか審判のポジションについており、準幅はいいか、と言うかの様にこちらを伺う。
私達は、それに力強く頷き返す。
そして、フェニレイドはコクリと首を縦に振り、鳴き声をあげる。
その声は美しく、私達を送ってくれる様な声だった。
…何もわからないが、取り敢えず、牽制目的で技を打つ。
「マキュリ、バブルこうせんでフィールドを整えろ!」
「エアームド、すかさずおいかぜだ。しっかり押し返せ。」
バブルこうせんを打ったが、風により押し返された挙句、逆に流れを掴まれてしまった。
やはり、経験が段違いだ。しかし、試しとはいえただで負けるわけにはいかない。
「…バブルこうせんがダメなら、オーシャンソング!地面に波を引き起こせ!」
マキュリが目を細め、乾いた宙から波を引き起こす歌を奏でる。
深く引き込まれるこの歌は、注意しなければ眠りに誘われてしまうだろう。
しかし、アクアフィールドは展開できたが、エアームドは苦い顔をしながらも、目の前に健在していた。
…ラムの実、或いはカゴの実か。状態異常でさえも対策済み。
これで技を二つも露見させてしまった。
しかも、オーシャンソングは体力を使う為、連発はできない。アクアフィールドが解けるまで、なんとかするしか無い。
近接戦は、明らかに不利なので、ハイドロポンプとバブルこうせんで追撃。
「マキュリ、ハイドロポンプで牽制しろ!(相手が避けてから、バブルこうせんで胴体を濡らせ!雫でもいいから、濡らすことが重要だ。)」
耳打ちしながら指示を飛ばす。ハイドロポンプを両手を掲げて打ったが、やはり避けられる。
不意打ちのバブルこうせんも、中途半端にしか当たらなかった。
本当に戦い慣れている…!
「エアームド、つるぎのまい。そしてはがねのつばさ!」
すかさず反撃が来る。
攻撃力の上がったエアームドの一撃は重く、たとえ威力が半減されている技とはいえ、
不意打ちの一撃はかなりのダメージを負わせてきた。
その痛みに思わずマキュリは苦悶の声を上げる。
「マキュリ、大丈夫か?!」
「…ああ、まだな。
…次、何すればいい?」
そんな事を言われた為、呼応する様に指示を飛ばす。
「なら、懐に潜り込み、もう一度ハイドロポンプ!(反撃時にアクアブレイクで叩き落とせ!)」
その指示を見て、予想通り、突っ込んできたエアームド。
指示を聞いているのならば、テレパシーを使えばいいのだ。
突っ込んだエアームドをアクアブレイクで地面に叩き落とす。
流石に予想外だったのか、ヘエラは目を丸くするが、直ぐに再起の一手を指示する。
「エアームド、おいかぜで体制を立て直せ!」
「マキュリ、それより前にバブルこうせんを直撃させろ!」
おいかぜで吹き飛ばされたが、何とかバブル交戦を直撃させる。
これで、一矢を報いることができるはずだ。
「エアームド、かりのごくいで吹き飛ばせ!」
「避けながら、雲に向かって全力でハイドロポンプ!」
かりのごくいがマキュリに向かう。当たってしまえば、きゅうしょをつかれてしまう技らしい。しかし、かろうじて避ける。
そして、ハイドロポンプも、雲に届いた。
距離が心配だったが、力を振り絞ってようやく当たった。
「…?雲?何を考えているかはわからんが、早めに終わらせて貰う。かりのごくい!」
一瞬、指示を出すのが遅れて、エアームドの攻撃が当たってしまった。
それにより、マキュリが倒れ伏す。
「マキュリ!」
「…ぐ、ま…だ、だ。まだ…やれる。し、じを。」
しかし、寸で耐えた。うめき声を上げながらも、立ち上がる。
…正直言って、こういった光景は見たくなかった。だから、テレビなども見ていなかったし、バトルに関しての物を見る事をやめていた。
けれども、苦い気持ちとは別の、何かが込み上げてくる。
そうそれは…、
勝ちたいと言う気持ち
届かないと分かっていても、手を伸ばし、勝利を掴まんとする気概。それが心の中に湧き出る。
…そして。
それを応援するかの様に、アクアフィールドが消える。
「…マキュリ、オーシャンソング!あと少しだ、持ち堪えてくれ!」
その言葉を聞いた相手のポケモンは、慌てていたが、すぐに眠りの世界へ誘われる。
「エアームド?!起きろ、起きるんだ!」
ヘエラが大声でコールをするが、起きる様子はない。
技を当てない限りは、大丈夫そうだ。
つまり…
時間稼ぎができると言うことだ。
…おもむろに、フィールドに影がかかる。
見上げると、暗雲が立ち込めていた。よくよく見ると、放電しているのがわかる。でも、そうじゃなきゃ困る。
その為にハイドロポンプを雲に向けて打ったのだ。
これは科学が証明している雷の起き方を元にした戦略だ。
しかも、エアームドは今バブルこうせんにて 塩水 に濡れている。
マキュリは海で育った為、バブルこうせんも海水だ。
塩は、鉄に電流を流しやすくして、結果錆びやすくさせると言う。
つまりたとえ倒せなくとも、体を錆びさせることができる。
「…これが狙いだったのか。…俺の不注意か。エアームド…、耐えてくれ…!」
そしてその瞬間、強大な落雷が起きる。
光り輝く稲妻が、エアームドに直撃する。
瞬時に体を焼かれるエアームド。ふらりと倒れ伏す。
雲は、一回の落雷で消え去り、青空が戻ってくる。
しかし、エアームドが、立ち上がる。体は錆びと火傷でボロボロだが、闘志を全く失っていない。瞳は鋭く、息遣いも荒い。
マキュリも、それに対応するかの様に相対するが…
「エアームド、かりのまい」
その一言で、マキュリが倒れ込む。
全く動きが見えない上に、音もしなかった。
完敗だ。
しかし、少なくとも、私の心は満足していた。ここまで追い詰めれたと。
けれども、マキュリはボロボロで、とても見れる状況じゃなかった。
よろよろとマキュリに近づき、抱き上げる。
顔は苦痛に染まっており、早めの治療を求める状況だ。
そして、それに見かねたのか、ヘエラが声をかけてきた。
「あー、お前さん、フェニレイドに乗って旅宿まで行くかい?」
早めに行きたい為、旅宿まで行く事にした。
心は満たされても、気持ちは悲しいまま。
試しとはいえ、こんなボロボロになるのがポケモンバトル。
これからはこんな風にさせない様に
そんな事を、フェニレイドに乗らながら呟いた。
吹いていた風は、渦を巻いている。
何かを求める様に。