扉から舞い込む新風   作:ケイオース

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14 噛み締める

フェニレイドを追い、辿り着いた先は、砂が敷かれてあるコート。

その端には、エアームドを控えさせている男。

 

 

そして、フェニレイドは男に向かって飛んでいった。

その男がジムリーダーらしい。よく懐いている。

 

 

そして、コート内に入ると声をかけられる。

 

「よぉ、お前さんがチャレンジャーかい?」

 

その声に頷くと、唯一わかる口元がニヒルに笑む。

ゴーグルをずらして、目を露出させる。その男の目は風を感じさせる空色だった。

 

「おお、そうかい。一応、名乗りを入れておくか。んん、

 

俺はひこうジムのジムリーダーヘエラ!

たとえ子供相手だとしても、手加減はしねぇぜ!」

 

男は口上を述べる。そして私達にも求めてきた為、私達もそれを返す。その口上に満足したのか、頷きながら、再度話しかけてくる。

 

 

「見たところ、保有しているポケモンは一体か。なら、一対一で勝負する。…異論は無いか。

 

そして、一応言っておくと二回目以降はジムトレーナーと戦わないと俺と戦えないからな。弱いまま来られても、色々なスケジュールも有るし、相手できないから、そこのところをわかってくれ。」

 

そう言って、和風な地方のエアームドを前に出す。やる気満々な様相だ。

 

 

それに伴い、私もマキュリに前に出る様に指示する。

先程の顔をしていたポケモンとは思えないほど、マキュリは闘気に満ちている。

 

 

 

 

 

 

フェニレイドが、いつの間にか審判のポジションについており、準幅はいいか、と言うかの様にこちらを伺う。

 

 

私達は、それに力強く頷き返す。

そして、フェニレイドはコクリと首を縦に振り、鳴き声をあげる。

 

その声は美しく、私達を送ってくれる様な声だった。

 

 

 

…何もわからないが、取り敢えず、牽制目的で技を打つ。

 

「マキュリ、バブルこうせんでフィールドを整えろ!」

 

「エアームド、すかさずおいかぜだ。しっかり押し返せ。」

 

バブルこうせんを打ったが、風により押し返された挙句、逆に流れを掴まれてしまった。

 

 

やはり、経験が段違いだ。しかし、試しとはいえただで負けるわけにはいかない。

 

 

「…バブルこうせんがダメなら、オーシャンソング!地面に波を引き起こせ!」

 

マキュリが目を細め、乾いた宙から波を引き起こす歌を奏でる。

深く引き込まれるこの歌は、注意しなければ眠りに誘われてしまうだろう。

 

 

しかし、アクアフィールドは展開できたが、エアームドは苦い顔をしながらも、目の前に健在していた。

 

 

…ラムの実、或いはカゴの実か。状態異常でさえも対策済み。

これで技を二つも露見させてしまった。

 

 

しかも、オーシャンソングは体力を使う為、連発はできない。アクアフィールドが解けるまで、なんとかするしか無い。

 

 

近接戦は、明らかに不利なので、ハイドロポンプとバブルこうせんで追撃。

 

「マキュリ、ハイドロポンプで牽制しろ!(相手が避けてから、バブルこうせんで胴体を濡らせ!雫でもいいから、濡らすことが重要だ。)」

 

耳打ちしながら指示を飛ばす。ハイドロポンプを両手を掲げて打ったが、やはり避けられる。

不意打ちのバブルこうせんも、中途半端にしか当たらなかった。

 

本当に戦い慣れている…!

 

 

「エアームド、つるぎのまい。そしてはがねのつばさ!」

 

すかさず反撃が来る。

攻撃力の上がったエアームドの一撃は重く、たとえ威力が半減されている技とはいえ、

不意打ちの一撃はかなりのダメージを負わせてきた。

その痛みに思わずマキュリは苦悶の声を上げる。

 

「マキュリ、大丈夫か?!」

 

「…ああ、まだな。

…次、何すればいい?」

 

そんな事を言われた為、呼応する様に指示を飛ばす。

 

「なら、懐に潜り込み、もう一度ハイドロポンプ!(反撃時にアクアブレイクで叩き落とせ!)」

 

その指示を見て、予想通り、突っ込んできたエアームド。

指示を聞いているのならば、テレパシーを使えばいいのだ。

 

 

突っ込んだエアームドをアクアブレイクで地面に叩き落とす。

流石に予想外だったのか、ヘエラは目を丸くするが、直ぐに再起の一手を指示する。

 

「エアームド、おいかぜで体制を立て直せ!」

 

「マキュリ、それより前にバブルこうせんを直撃させろ!」

 

おいかぜで吹き飛ばされたが、何とかバブル交戦を直撃させる。

これで、一矢を報いることができるはずだ。

 

「エアームド、かりのごくいで吹き飛ばせ!」

 

「避けながら、雲に向かって全力でハイドロポンプ!」

 

かりのごくいがマキュリに向かう。当たってしまえば、きゅうしょをつかれてしまう技らしい。しかし、かろうじて避ける。

 

 

そして、ハイドロポンプも、雲に届いた。

距離が心配だったが、力を振り絞ってようやく当たった。

 

「…?雲?何を考えているかはわからんが、早めに終わらせて貰う。かりのごくい!」

 

一瞬、指示を出すのが遅れて、エアームドの攻撃が当たってしまった。

それにより、マキュリが倒れ伏す。

 

「マキュリ!」

 

「…ぐ、ま…だ、だ。まだ…やれる。し、じを。」

 

しかし、寸で耐えた。うめき声を上げながらも、立ち上がる。

 

 

…正直言って、こういった光景は見たくなかった。だから、テレビなども見ていなかったし、バトルに関しての物を見る事をやめていた。

 

 

けれども、苦い気持ちとは別の、何かが込み上げてくる。

そうそれは…、

 

 

 

勝ちたいと言う気持ち

 

 

 

届かないと分かっていても、手を伸ばし、勝利を掴まんとする気概。それが心の中に湧き出る。

 

 

 

…そして。

それを応援するかの様に、アクアフィールドが消える。

 

「…マキュリ、オーシャンソング!あと少しだ、持ち堪えてくれ!」

 

その言葉を聞いた相手のポケモンは、慌てていたが、すぐに眠りの世界へ誘われる。

 

「エアームド?!起きろ、起きるんだ!」

 

ヘエラが大声でコールをするが、起きる様子はない。

技を当てない限りは、大丈夫そうだ。

 

 

 

つまり…

 

 

 

時間稼ぎができると言うことだ。

 

 

 

…おもむろに、フィールドに影がかかる。

見上げると、暗雲が立ち込めていた。よくよく見ると、放電しているのがわかる。でも、そうじゃなきゃ困る。

 

 

その為にハイドロポンプを雲に向けて打ったのだ。

これは科学が証明している雷の起き方を元にした戦略だ。

 

 

しかも、エアームドは今バブルこうせんにて 塩水 に濡れている。

マキュリは海で育った為、バブルこうせんも海水だ。

 

 

塩は、鉄に電流を流しやすくして、結果錆びやすくさせると言う。

 

 

つまりたとえ倒せなくとも、体を錆びさせることができる。

 

「…これが狙いだったのか。…俺の不注意か。エアームド…、耐えてくれ…!」

 

 

そしてその瞬間、強大な落雷が起きる。

 

 

光り輝く稲妻が、エアームドに直撃する。

瞬時に体を焼かれるエアームド。ふらりと倒れ伏す。

 

 

雲は、一回の落雷で消え去り、青空が戻ってくる。

 

 

しかし、エアームドが、立ち上がる。体は錆びと火傷でボロボロだが、闘志を全く失っていない。瞳は鋭く、息遣いも荒い。

 

 

マキュリも、それに対応するかの様に相対するが…

 

 

「エアームド、かりのまい」

 

その一言で、マキュリが倒れ込む。

全く動きが見えない上に、音もしなかった。

 

 

 

完敗だ。

 

 

 

しかし、少なくとも、私の心は満足していた。ここまで追い詰めれたと。

 

けれども、マキュリはボロボロで、とても見れる状況じゃなかった。

 

 

よろよろとマキュリに近づき、抱き上げる。

顔は苦痛に染まっており、早めの治療を求める状況だ。

 

 

そして、それに見かねたのか、ヘエラが声をかけてきた。

 

「あー、お前さん、フェニレイドに乗って旅宿まで行くかい?」

 

早めに行きたい為、旅宿まで行く事にした。

 

 

心は満たされても、気持ちは悲しいまま。

試しとはいえ、こんなボロボロになるのがポケモンバトル。

 

 

これからはこんな風にさせない様に

 

 

そんな事を、フェニレイドに乗らながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹いていた風は、渦を巻いている。

何かを求める様に。

 

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