彼女の、いやマキュリ着いていく宣言に驚いたものの、刺激の足りない毎日に退屈していた彼女にとって、私は、手軽に刺激を得られるものらしい。
少しでも着いて行って、楽しむことが目的。それを止める意味も無かった為、素直に案内されようとした。
が、
マキュリの移動方法は、スリットで海水を押し出し、まるで海を滑るかの様に動く事だ。
一応、水を貯めた泡を使えば、地上を泳げないこともないのだが、遅いらしく、これ一択らしい。
しかし、私はそんなことができない。
けれども彼女はこれが一番の移動方であり、地上では遅すぎるし、距離もある為、野宿をしなければならない。
当然、野宿等、やった試しがない為、無理だ。
…となると、
「はっはっは!海上を泳ぐのは久しぶりだ!海中より、スピードを感じられるぞ!」
…海を渡ることになる。彼女の背中に捕まって。
彼女はポケモンである為、これぐらいの重さ、何ともないらしい。
それに、ヨーギラスを持ち上げる人間もいるらしいし、大した事じゃない、と彼女は笑う。
…伝説上ではあるが。
それでも、等身大の物を背負ってスピードを出す事ができるのはさすがポケモンと言うしかない。
こう言う体験が出来るのは極めて貴重だ。サメハダーなどにサドルをつける所もあるらしいが、鍛えた人でないと、かかるGに耐えられない。
しかし人型ならばその様なことはない。私の様な一般人でも高速移動に耐えられると言う訳だ。
その様な物凄い速さで海を横断しているから当然、風切り音や水切り音などが発生する。それに釣られたのか、ポケモン達が集まって来る。
ニーダーツが跳ね、キャモメがやってきて、ギャラドスがはかいこうせんを空砲させ、サメハダーと並走し、プレッシーが目を回す。
…心無しか、陽気な音楽が遠くから聞こえる。
「ふふん、雰囲気につられてポケモン達がきたぞ!あやつらにすこし触れてみたらどうだ?こんな辺境に、人間等なかなか来ないからな、興味津々だぞ?」
楽しげに話すマキュリ。相当気分がいいのか、鼻歌を口ずさんでいる。
そして、彼女に言われるとおり、周りのポケモン達は、期待している目で私を見ている。
おずおずと手を出すと、直ぐにキャモメが止まる。
他のポケモン達も、距離をより近づけた様だ。
そして、あの一番は俺だ!と言わんばかりに、ニーダーツが海の上で加速する。
あれは…、アクアジェットか?ポケモンバトルを見たことがない為、正確には分からないが、物凄い勢いで駆け抜けていたのでその様な気がする。
Uターンして戻ってきたニーダーツは、褒めて褒めて!と体から伝わるほど、こちらを見つめる。
初めて見た技だった為、素直にすごいと褒めると、まるで矢の様に海の中に潜って、飛び出した。
それを見た皆も、今度は俺の番!と言わんばかりに技を披露する。
海の上だし、それに少し寒いけれども、自然と心があったかくなった。
ーーー
しかし、そんな事をしていると、当然騒がしくなる。
そうすると、やはり怒る者も、当然現れる。
ー辺りに、金属音が響き渡る
海中から金属質な殻を纏ったポケモンが出現する。
…アンドリラー、か?不味いな。
アンドリラーは、海中ではかなり危険な部類に当たる。
地上での戦闘を推奨され、海中での戦闘が困難なポケモンだ。縄張り意識が強い為、縄張りを侵すものに容赦しない…。
…奴の図体が大きい事を視認する。
それ即ち、縄張りが大きい事を示す。
…このまま、逃げる事は出来ないか。
覚悟を決めて、周りを見渡す。そこに居たみんなは、強弱関係なく自分を力強く見ている。
…ああ、ここまで。
この短い間に、私と一緒に戦ってくれる程、私を信じてくれて。
ーそして最後に彼女の、マキュリの背中を見つめる。
「…ふふっ、まさかここまで、世界は明るかったのか。ここまで心が躍ることがあるのか。…、ああ、戦うかどうかか?
戦うに決まっているだろう!そして、お前がリーダーだ!」
彼女が叫ぶ。
ポケモン達も叫ぶ。
本当にポケモン達には、いつも助けられる。
本当にポケモンは…
良い、隣人だ。
「全匹、突撃!」
アンドリラー戦fight!
ー闘いの音頭が風に運ばれている
主人公の性別は?
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男性
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女性
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お前ら人間じゃねぇ!