ラスボス?いいえクソ雑魚幼女です~元社畜の異世界幼女生活~   作:二本目海老天マン

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02.雑魚キャラよりもステータスが低いんですが

 

 

 

 

◆深い森の中

 

 

「うーん……」

 

 

夜の暗闇の中、川辺で大き目の石に腰かけて唸っている銀髪幼女が一人。僕である。

 

 

「うーん、うーん……」

 

 

腰まで伸びたサラサラの銀髪をワシャワシャと掻き毟ると、僕は長い溜息を吐いた。

 

 

「……駄目だ。思い出せない……」

 

 

僕は自分の名前……いや、名前だけでなく、この世界に来る前の"男だった頃"の細かい記憶を思い出すことが出来ずにいた。

 

 

「ギャース」

 

 

不気味な鳴き声に空を見上げると、遥か上空でドラゴンっぽい生き物が闇夜を切り裂いて飛翔していた。

 

頭がおかしくなったので無ければ、僕はつい先ほどまで21世紀の現代日本でサラリーマンをしていた極々普通の成人男性だった筈である。少なくとも、あんなファンタジックな生き物が空を飛んでいる世界の住人では無かった筈だ。

 

僕は目の前の空間に念じて"ステータス画面"を再度出現させる。ちなみにステータス画面は言葉に出さずとも、心の中で念じれば自由に出し入れが出来るようである。

 

 

 

――――――――――

名前:なし

性別:女

種族:精霊

クラス:ダークロード

レベル:1

ちから:1

すばやさ:1

かしこさ:1

うんのよさ:5

――――――――――

 

 

 

名前が無かったり、種族が人間じゃないのも気になるが、一番引っかかるのは『ダークロード』なる不穏なクラス名である。響きからして、どう考えても真っ当な職業では無さそうだ。

 

しかし、そんな大仰な名前のクラスにも関わらず、この圧巻の低ステータスはどういうことか。比較対象が無いから分からないけど、どう考えても『1』は一般人の平均以下でしょ。

 

 

「……んっ?」

 

 

クイクイと羽衣の裾が引っ張られる感覚に背後を振り返る。

 

手のひら程度の大きさのスライムに手足が生えたみたいな半透明の生き物が、僕の羽衣の裾を両手で引っ張っていた。

 

 

「おうさま。こっち」

 

 

謎の生き物に話しかけられた。

 

……なんだこいつ。

僕の心の声に反応するように、推定スライムの前にウインドウが展開される。

 

 

 

――――――――――

名前:なし

性別:なし

種族:木霊(こだま)

クラス:ナビゲーター

レベル:1

ちから:3

すばやさ:5

かしこさ:3

うんのよさ:10

――――――――――

 

 

 

どうやら目の前の生き物のステータスが表示されているようだ。任意の相手の情報も確認することが出来るのか。

 

……って、おいおいおい。

ステータス完敗してるぞ僕。唯一『1』じゃなかった運すら負けているじゃないか。

 

 

「おうさま、こっち。おさ、よんでる」

 

 

人知れず己の低ステータスに打ちひしがれていると、木霊とやらが僕の移動を催促してきた。

 

……どうしようかな。

 

とりあえず、この木霊から敵意は感じられない。

 

ならば、夜明けまでこの見晴らしの良い場所で獣に怯えたり、何の情報も無く夜の森を闇雲に動き回るよりは大人しく連行された方がいいのかもしれない。

 

それにこちらが拒否しても、向こうに力づくで来られたら多分僕負けるしね。単純な腕力でも恐らく木霊は僕の3倍強い。勝てない喧嘩で怪我はしたくない。

 

 

「えーと、はい。分かりました。その、(おさ)?とやらの所まで連れて行ってください」

「おさ、あっち」

 

 

僕が立ち上がると、木霊がぽてぽてと前を歩いて僕を先導する。どうやら長とやらは森の中に居るようだ。あんまり遠くないといいなあ。裸足で森を長距離歩くのはちょっと怖いし。破傷風とか。

 

身に纏っている羽衣の裾を引き裂いて、足に巻こうかとも思ったが、僕の腕力が貧弱なのか羽衣が頑丈なのかビクともしなかった。裸足続行である。

 

 

森を歩き始めてから程なくして、僕達の姿を見た別の木霊達が木のうろや草むらからワラワラと現れると、道行に加わってきた。

 

総勢100匹ぐらいの木霊がゾロゾロとくっ付いてくるので、ちょっとした大名行列みたいになっている。

 

 

「おうさまだ」

「おうさまだ」

「けもののおうさま?」

「ほのおのおうさま?」

「ほしのおうさま?」

「ちがうよ。やみのおうさまだよ」

「やみのおうさまだ」

「やみのおうさまだ」

 

 

……"おうさま"って多分"王様"だよね。

 

木霊達がペチャクチャ喋っている内容によると、僕はどうやら闇の王様らしい。なんのこっちゃ。

 

木霊達に尋ねてみたが、要領を得ない答えしか返ってこない。まあ、知能が高い生き物には見えないし仕方ない(みんな僕より"かしこさ"値は高いけど)。疑問点については彼らの長とやらに尋ねてみるしかあるまい。

 

そんな事を考えながら、僕with木霊軍団は森を進んでいく。足裏に伝わる土のひんやりとした感触が少しだけ落ち着かないけど、木霊達が前方の石やら草やらを払って整地してくれているので、道行は思ったよりは快適であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆とある神殿にて

 

 

 

「なんということだ……」

 

 

重厚な法衣に身を包んだ老人が重々しく呟いた。老人の傍らに控えていた青年が、よろめく老人の体を支えると気づかわしげに尋ねる。

 

 

「導師様、一体どのような神託があったのですか?」

「……"獣"・"焔"・"星"・"闇"。かつて、人族を滅びへ誘おうとした四人のダークロード達の一人、"闇"のダークロードが蘇ったそうだ」

 

 

老人の言葉に青年が目を見開く。

 

 

「……闇のダークロードの復活を、速やかに陛下にお伝えせねばならん。馬車の用意を頼む」

「かしこまりました。少々お待ちを」

 

 

青年が足早に聖堂の外へと去っていくのを見届けると、老人は頭痛に耐えるように額を指先で押さえた。

 

 

「未だ人族同士の争いも絶えないというのに、ダークロードまで蘇るとは……神よ、どうか無辜の人々をお守りください……」

 

 

 

 

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