ラスボス?いいえクソ雑魚幼女です~元社畜の異世界幼女生活~   作:二本目海老天マン

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04.現地幼女ちゃん(俺より強い模様)

 

 

 

◆とある少女の回想

 

 

 

「はっ……はっ……はっ……!」

 

 

足が痛い。

 

 

喉が痛い。

 

 

肺が痛い。

 

 

それでも私は駆ける足を止めなかった。

 

 

「うっ、ぐすっ……お父さん、お母さん……っ」

 

 

首都から遠く離れた小さな村。

 

退屈だけど平和な私の暮らす場所に、武器を持った怖い大人の人達がやってきたのは、皆がまだ目覚める前の早朝だった。

 

両親はせめて私だけでもと、隙を見て私を森へと逃がしてくれたけど……

 

 

「あうっ!」

 

 

地面から盛り上がった木の根に足を取られて、私は地面に倒れ込む。

 

 

「……行く場所なんて、何処にも……ぐすっ、家に帰りたいよぉ……」

 

 

一度足を止めてしまった私は、立ち上がる気力を完全に失くしてしまっていた。

 

それで何かが解決する訳ではないと分かっていても、膝を抱えてうずくまってしまう。

 

 

 

 

 

「―――ヴルルル」

 

「ひっ……!?」

 

 

そう離れていない場所から聞こえてきた獣の声に、私は慌てて近くの茂みへと身を隠す。

 

村を追われ、獣に怯えて……私は一体何をやっているんだろう。

 

恐怖と情けなさで、零れそうになる嗚咽を必死に堪えて、私は息を殺して獣が立ち去るのを待った。

 

 

「―――ぴぃ?」

「ヴォフ、グルル」

「ぴぃ?ぴゅい……」

 

 

獣の声に紛れて、何やら妙な響きが聞こえた気がした。

 

小鳥が囀るような、鈴の鳴るような清らかな響きが……

 

 

「ヴオオオオォォォオオオッ!!」

「ひぃっ!?」

 

 

そんな私の思考を掻き消すような獣の咆哮が響き渡る。生存本能を直接揺さぶるような叫びに、私は思わず悲鳴を上げて茂みから飛び出してしまった。

 

 

 

 

「……ぴぃ?」

 

 

 

 

場違いな程に綺麗な声が耳を打った。

 

地面に座り込んでいる私の顔を、輝くような銀髪を靡かせた女神のような少女が覗き込んでいた。

 

 

「ぴぃっ、ぴぃっ!」

「グルルルル……」

「ぴゅいっ」

「キューン……」

 

 

少女が何やら狼に向かって声をかけると、そばに居た二匹の狼は私への威嚇を止めた。

 

その様子はまるで少女が二匹の狼を従えているかのようだった。

 

 

「ぴぃ~……ぴぃ?」

 

 

少女が私に何やら話しかけている。

 

その響きと表情は純粋に私を心配してくれているように見えたが、残念ながら私には彼女の言葉を理解することが出来なかった。

 

 

大人ほどの大きさの体躯をした狼を従えて、人とは違う言葉を話す少女。その姿は村の老人達や狩人が話していた森を守護する"森神様"のようだった。

 

 

およそ人間離れした空気を纏った彼女は、もしやこの世のものではないのかもしれない。

 

 

「……お」

 

 

しかし、それでも私は彼女に縋りつかずにはいられなかった。

 

 

「お、お願いです。森神様……村を、私の両親を……助けてください……っ」

 

「………………ぴぃ?」

 

 

森神様は私の言葉に小首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆土下座少女と森の中で

 

 

 

「■■■■■■……■■■■■■……っ」

「ちょっ、なんでいきなり土下座してるのっ。大丈夫だよ~。取って食べたりしないから~」

 

 

突然、地面に頭を付けて僕に何か話しかける少女に、僕はアワアワとみっともなく狼狽してしまった。

 

 

「ハ、ハチっ。ポチっ。この子が何て言ってるか分かる?」

「人間の言葉。難しい」

長様(ジャガーノート)でも多分、分からない」

 

 

まさかの言語翻訳機能オフである。

 

ステータス画面に表示されてるのは日本語だし、木霊やジャガーノートさんの言葉も通じていたから、異世界言語は自動的に翻訳されているのだろうと高を括っていたら、一番重要な人語翻訳がサポート外だったとはね。

 

 

 

――――――――――

名前:アンナ

性別:女

種族:人間

クラス:村人

レベル:3

ちから:6

すばやさ:8

かしこさ:10

うんのよさ:100

――――――――――

 

 

 

何か分かるかもしれないと思い、土下座少女のステータスを確認する。"クラス:村人"ということは、以前にジャガーノートさんが話していた森の近くにあるという村の住人か。

 

……というか妙に運だけ高いな。他のステータスはハチポチよりも劣っているが、運だけはジャガーノートさんを上回っている。ラッキーガールである。

 

そして、当然の様に全てのステータスが僕より高い。人間基準でも僕はクソザコだったようである。悲しいなあ。

 

 

 

「■■■■■■……■■■■■■……っ」

 

 

 

……しかし、どうしたものだろうか。

 

先程から、必死に同じ言葉を繰り返す少女―――アンナちゃんは、恐らく彼女が暮らす村から、この森に迷い込んでしまったのだろう。何とか親御さんの所へ送り返してあげたいところだが……

 

 

「ハチ、ポチ。ここから一番近い人間の集落の場所は分かりますか?」

「分かる。でも、長様の許可なく近づくのは禁じられてる」

「まあ、そうですよね。それじゃあ申し訳ないですけど、ジャガーノートさんを呼んできて―――」

 

 

「お呼びでしょうか。我が王よ」

 

 

僕が最後まで言葉を繋ぐ前に、上空から大地を揺らして漆黒の獣(ジャガーノート)が着地した。

 

 

「■■■■■■っ!?」

「ああっ、怖がらないで大丈夫ですよ~。ちょっと見た目は邪悪ですけど良い(ヒト)ですから」

 

 

突然、現れたジャガーノートさんにアンナちゃんがパニクっている。僕は必死に彼女を宥めすかすと、ジャガーノートさんに向き直った。

 

 

「随分とタイミングが良いですけど、もしかして僕を監視してたんですか?」

「いえいえ、木霊達が森で人間を見つけたと話しておりまして、状況を確認しに向かった先に、偶然にも王がいらっしゃったのですよ」

「はあ、そうだったんですね。……あの、この子は迷子みたいでして」

「その様ですね。今宵は我が王に肉を振舞うことが出来そうです」

「食べませんよっ!?」

 

 

突然のカニバリズム宣言に、僕は思わず声を荒げてしまう。まあ、野生動物から見たら人間の子供なんて狩りやすい獲物でしか無いのかもしれないが、流石に見過ごす訳にはいかない。

 

 

「この子は人間達の元に帰します」

「何故?食べないというのなら放っておけば良いのでは?」

「……この子を探しに、人間達に森を荒らされたら面倒でしょう?」

「なるほど」

 

 

適当に考えた言い訳だったが、ジャガーノートさんは納得してくれたようだった。

 

 

「では、木霊達に案内させましょう」

「いいえ、僕が連れていきます。人間の集落の場所を教えてください」

「……何故でしょうか。以前にもお伝えしましたが、人間に近づくのは危険です」

 

 

ジャガーノートさんが六つ有る目を細める。すげえ迫力だ。

 

 

……しかし、ここは押し通させてもらおう。

 

森での快適なニート生活も素敵だが、やはりこの世界のことについて多少は知っておきたい。

 

万が一の話ではあるが、人間……或いは別の敵対勢力との戦い……そうでなくとも天災等で森を追われることになった時、世界情勢も地理も何にも知りませんでは、クソ雑魚ステータスのダークロードさんなど三日で骨である。

 

情報は集めておきたいし、あわよくば迷子幼女(アンナちゃん)を送り届けたことで、村の人達と友好的な関係が築けるかもしれない。

 

 

 

「―――理由が無ければ、僕の命令は聞けないと?」

 

 

 

僕は精一杯の威厳のある態度を装ってジャガーノートさんに命じた。内心では死ぬほどビビってるし、手汗がヤバイのは秘密だ。

 

 

「……ふふ、ようやく王が我らを頼ってくれた」

 

 

不意にジャガーノートさんが獰猛に牙を見せて笑った。

 

 

「いいえ、我が王よ。どうか御命じ下さい。貴方に従う事こそが我らの至上の喜び」

 

 

……ふぅ、何とかジャガーノートさんの前足でポコパンされて肉片を撒き散らさずに済んだようである。

 

 

「ですが、王のおみ足では人間の集落まで多少かかります。どうぞ私の背にお乗りください」

「あっ、はい。お願いします」

 

 

ペタッとお腹を地面に付けて、僕が乗りやすいように姿勢を低くしてくれたジャガーノートさんによじよじする。

 

 

「もちろん彼女も一緒に乗せて貰えるんですよね?」

「ええ、王の御命令とあらば」

 

 

僕はジャガーノートさんの背に乗ったまま、アンナちゃんに手を差し伸べた。

 

言葉は通じないかもしれないけど、出来るだけ彼女が安心出来るようにニッコリと笑顔を浮かべて告げる。

 

 

 

「さあ、行きましょうか。ちょっと荒れる乗り心地ですけど、速さは保証しますよ」

 

 

 

 

 

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