ラスボス?いいえクソ雑魚幼女です~元社畜の異世界幼女生活~   作:二本目海老天マン

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06.無双!僕以外が!

 

 

 

◆ムティーニ村広場

 

 

 

「ジャ……ジャガーノート!?な、何でこんな所に―――ぐびゃっ!」

 

 

己の許可無く声を上げたのが漆黒の獣の癇に障ったのか。ジャガーノートが声を上げた男の前に跳躍すると、筋肉で構成された丸太の様な前足を振るう。野盗の一人が地面と水平に吹き飛んで民家の壁に叩きつけられる。ズルズルと壁から力なく崩れ落ちた男の姿に、野盗達の反応は二つに別れた。

 

 

「じょ、冗談じゃねえ!俺は逃げるぞっ!」

「ふざけんな!畜生が一匹だけだぞ!囲んで叩けば―――おごぉっ!」

 

 

敵わないと見て、我先に逃げ出す者。

パニックに陥りながらも武器を向ける者。

 

ジャガーノートは逃げ出す野盗には目もくれず、己に武器を向けてくる男達を次々と無力化していった。

 

 

「ぴぃっ!ぴぃっ!」

「ヴルルルルッ」

 

 

圧倒的な暴力が吹き荒れる広場に、僅かに場違いな声が混じる。

 

 

「………?」

 

 

突然の事態に、逃げ出すことも出来ず固まっていた村人達の一人が、声の聞こえてきた場所に目を向けた。

 

 

「ぴゅいーっ!ぴっぴぃっ!」

「……お、女の子?」

 

 

気が動転する余り、今の今まで気づかなかったが、ジャガーノートの背には薄緑色の羽衣を纏った銀髪の少女が跨っていた。よく見ると、ジャガーノートは少女が指差した野盗を優先的に狙って排除しているようにも見える。

 

 

「お、おお……森神様じゃ……」

「森神?」

 

 

村人と同じく、その場に座りこんでいた老人がジャガーノートの背に乗った銀髪の少女に対して、尊いものを拝むように手を合わせる。

 

 

「其れは大いなる存在。霊なるものを率いて深き森を守護する白銀の善神。ワシが子供の頃に祖父からよく聞かされた姿そのものじゃ……」

「狩人やじい様達がたまに話していたアレか……あの娘がそうだって言うのか……?」

 

 

老人の言葉に懐疑的な若者ではあったが、少なくともジャガーノートの背に乗った少女が普通の人間ではない点については同感であった。

 

 

 

 

 

「オオォヴヴヴォオオオッ!!」

 

 

「く、くそっ!槍も矢も通らねえ!奴の毛皮はどうなってんだ!?」

「というか、何で俺達だけ狙ってくるんだ!もっと喰いやすい奴らがゴロゴロ居るってのに!」

「やってられるか!お頭を回収して、とっとと逃げるぞ!」

「馬鹿!あいつは最初の一撃で死んでるに決まって―――ぶげぇっ!?」

 

 

程なくして、その場から逃げださずにジャガーノートに襲い掛かった野盗達は一人残らず地に伏していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ムティーニ村広場 戦いを終えて

 

 

 

「うわあ……あの人達(野盗)、もう死んでるんじゃないの?」

 

 

広場でのジャガーノートさんの無双現場を見て、僕は若干引きながらそんなことを呟いた。

 

 

「ご安心を。我が王の御命令でしたので、命を奪ってはおりません。まあ、死んではいないというだけですが」

 

 

手足が変な方向に曲がっているだけなら、まだ良い方で野盗達の中には骨が肌から突き出している者も少なくは無かった。本当に死んでいないだけである。襲われた村人達には悪いが、少しだけ同情してしまう。

 

 

「……何はともあれ、お疲れ様です。ありがとうございました、ジャガーノートさん」

「勿体ないお言葉です。我が身の全ては王の為に」

 

 

僕はジャガーノートさんの頭を撫でて労うと、彼の背からピョンと飛び降りる。

 

 

「……さて、どうしようかな」

 

 

僕は広場に集まった村人達を見渡した。

 

大半の人は、突然の事態に状況が呑み込めず、逃げ出すことも忘れて僕達を警戒した眼差しで見つめていた。

 

 

「……ジロジロと無礼な奴らだ。我が王の御前であるぞ」

「はいジャガーノートさんストップ!みんな野盗に襲われたり、突然僕達が現れたりでビックリしてるだけだから!」

 

 

僅かに殺気立つジャガーノートさんを僕は慌てて宥めた。

 

 

「しかし……」

「ジャガーノートさんも、ちょっと座ってください。普通の人間は貴方の姿を見たら怖がってしまいますから、少しでも穏やかそうにしてくださいっ」

「……王の御命令とあらば」

 

 

僕の言葉にジャガーノートさんがスッと"伏せ"の姿勢を取ってくれた。すると村人達が僕らの様子を見てどよめく。敵意は無いと分かってくれたのかな?

 

 

『い、今……あの娘がジャガーノートに何か命令しなかったか……?』

『あんな小さな女の子が……やっぱり、彼女はおじい様が言っていた"森神様"なの……?』

『か、仮にアイツが"森神様"だとして、一体この村に何をしに来たんだよ?まさか、野盗から俺達を助けに来てくれたとでも言うのか?』

 

 

うーん、やっぱり何を言っているのか全然分からん。

僕達を見ながらヒソヒソと話している様子を見るに、まだまだ警戒を解いてはくれないようだった。

 

 

 

 

 

……よし。ならば、もう一押しだ。

 

 

僕はザッ、と一歩彼らの前に踏み出す。

 

村人達の視線が僕に集中する。小規模な村とはいえ、100人は優に超えている人間の視線を浴びて、僕はちょっとお腹が痛くなったが、表には出さずに涼しい顔を作る。

 

 

 

今の僕は自分で言うのも何だが超絶美少女だ。失礼だが、村の人間達の容姿を見て確信した。この見た目を最大限に活用する。……まあ、美的感覚が前世の現代社会と同じとは限らないが……その時はその時である。

 

 

 

 

 

たとえ言葉は通じずとも、気持ちは伝わるはずだ。

 

 

僕は両手の人差し指と中指をピンと立てて、顔の横へ持っていくと、口角を全力でニカッ、と上方向へ持ち上げて叫んだ。

 

 

 

 

 

「コンニチハーーーーー!!」

 

 

僕渾身のアヘらないダブルピースである。

 

笑顔は万国共通の友好の証。それは異世界でも変わらない筈だ!

 

 

 

 

 

『……も、森神様が笑った?』

『何だ、あのポーズは……何かの儀式か……?』

『きれー。ママ、あのひと女神様みたいだね』

 

 

 

 

 

……何だこの空気は。

 

村人達が何やらヒソヒソと話しながら、不思議な生き物を見る目で僕を見ている。

 

 

 

 

 

……いや、本当は分かっている。

 

スベったのだ。それも盛大に。

 

 

あのジャガーノートさんですら「何だこいつ」みたいな顔で僕を見ている。

 

 

 

僕は優しい微笑みを浮かべながら、スッとダブルピースを解除すると、軽く咳払いをして何もかも誤魔化した。

 

 

というか、よく考えたら友好を示したいなら崖の上でお休み中のアンナちゃんを連れてくればいいじゃん。

 

僕はジャガーノートさんにお願いして、崖の上で待機していたハチとポチに、アンナちゃんを連れてくるように伝えてもらった。

 

 

『ひえええぇぇぇ~~~!?』

 

 

程なくして、アンナちゃんを背に乗せたハチとポチが広場へと現れた。この数時間で彼女には二回もアクロバティックな騎乗体験をさせてしまい若干申し訳ない気持ちになる。ごめんね。

 

 

『ア、アンナッ!無事だったのね!』

『あっ……お父さん!お母さん!』

 

 

村人達の中から一組の男女が、ハチの背から降りたアンナちゃんに駆け寄る。多分、彼女の両親だろう。言葉は分からないが、涙ながらにお互いに何かを話している。無事に再会出来て何よりである。

 

 

『ああ、アンナ……無事で本当に良かった……っ』

『お父さんとお母さんこそっ。私、もう二人に会えないかもって……っ』

『アンナ、もしかして貴方が森神様を連れてきたの?』

『う、うん。森で狼に襲われそうになった所を森神様が助けてくれたの。それで、村を助けてくださいってお願いを……』

 

 

アンナちゃんが何やら僕を指差しながら、両親や村人達に話しかけている。うまい具合に橋渡しをしてくれると助かるのだが……

 

 

『も、森神様……』

 

 

おっと、アンナちゃんの両親と思わしき男女が、恐る恐るといった感じで僕の前にやってきたぞ。一瞬、ジャガーノートさんが臨戦態勢に入りそうになったが、僕は片手を上げてそれを制止する。

 

 

『森神様。アンナを……私達の村を救っていただき、ありがとうございます……っ』

 

 

二人が僕の前で膝をついて深々と頭を下げてきた。土下座である。

 

あわわわっ、なになに。アンナちゃん一体僕の事をどういう説明したの?もしかして生贄を要求している邪神か何かと思われてない僕?「どうか娘だけはお許しを~」みたいな。

 

 

 

 

『なっ……ジャ、ジャガーノート!?まさか本当に人里まで下りてきているとは……!』

 

 

アンナちゃんの両親に僕のことをどう説明したものかと悩んでいると、背後から男性の声が僕の耳に届いた。振り返ると、如何にも中世ファンタジーの騎士といった感じの鎧を纏った一団が、村の入口で僕とジャガーノートさんに向けて武器を構えている。

 

 

目の前には僕に土下座しているアンナちゃんの両親。そして、そんな僕の隣にはちょっぴり見た目が邪悪なジャガーノートさん。

 

 

「……ひょっとして僕達、悪役に見えてる?」

 

 

うーん、まだまだ面倒そうな展開が続きそうである。

 

 

 

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