彼を可愛いと思うとき   作:延長戦

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9:最早開き直ってみようか

というわけで、私は彼の腕に収まっている。正直どうしたもんだかな。とりあえず、背中に手を回しはしたが、彼はどうして欲しいのかな?抱き締める腕に力が込められるが、これまたどうしたもんだか。

悩んだ末、私は彼の背中を優しくリズムよく叩いた。束の間そのままを楽しんだかと思うと、やっと私を放してくれたが、急に目前に彼の顔が迫る。

なんなんだ一体。

その表情は先程より和らいで見えたが、これでもかと言うほどまっすぐに私の目を見つめてくる。一体何をされているんだろう。どぎまぎする。新手の催眠術か。

兎に角この状況に耐えかねた私はニヤリと笑って見つめ返し、おでこをぶつけてさらに笑ってみた。彼も笑い返してくる。

これはなんの意思疎通だ。わからんが、同じことをやり返すというのは有効な手段の筈だ。

 

「ケーキ食べましょっか」

 

彼は笑顔で私を解放し、キッチンへと消えていく。私は安堵を胸にケーキを頬張る。そのあとは動画や映画を見ながら談笑していたが、総じて言えることは、彼の距離が近い。正直、付き合ってもあんまりイチャイチャしたことないし、こんなにひっつき虫は初めてで対応に困る。

私はトイレから帰ってきてさりげなく距離をとって座ってみた。すると彼は私の座った場所を見るなり、私の腕を掴んで引き寄せた。

 

「こっちに来て」

 

なんて可愛いお願いなんだ。

正直に言おう。私はお願いされるのに弱い。そうして、されるがままに腰に手を回され、見つめられ、再び彼の顔が迫る。キスしそうな勢いで近付いて来たかと思うと、寸前で留まる。

私はされるものと思い、彼の唇を見つめていたが肩透かしをくらった為彼を見上げると、じっと私の目を見ていた。ずっと私の様子を見ていたんだ。

え、どうしよう。なんて恥ずかしいんだ。

 

「お酒、飲みます?」

 

突然の提案に私は驚いて声をあげ、まじまじと彼を見た。そして心の中でいつも通りの口調を心掛けるよう自分に言い聞かせる。

 

「僕はいいです。ちゃんと主任のこと送って行きますから。気にしないで下さい」

 

その後私は冷静を装い何度か遠慮してみるが、結局はお酒の誘惑に勝てず1人日本酒を飲みだした。

これはもう、酔わされて…。いや、勝手に酔っ払って食われるパターンか。

彼は私を足の間に座らせ、後ろからお腹に手を回して映画を観賞しつつも私のお酌は忘れない。なんだこの至れり尽くせり。私は若者相手に何をさせているんだ。いや、されているのだ。決して私が誑かしてるわけでもないし、ここは甘えて置こう。家まで送ってくれるし、私は今日御大尽様になろう。

 

そうして、仕事や彼の同期の話をしながら私はほろ酔いとなる。

 

「そろそろ送りましょうか」

「そうだね。もう20時だし。お願いします。」

 

食われることなく、私は彼の家を後にすることができ、安堵する。だが、そこでふと考えた。

彼は何がしたいのだ。そりゃセックスだろう。公園でキスした時だって告白も何もされてないし、その状況の女性を家に連れ込んだらすることは1つのはず。

私は最近ご無沙汰なことや酔いも手伝って、だんだんその気になってきた。

 

こりゃ私が家に連れ込んじまおうか。

 

 

 

 

 




主任さんはどうも軽くとらえてますが、世間の女性はどこまて押されたら本気だと気づくんでしょうか?
どこまで後輩くんに頑張らせましょう。
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