彼を可愛いと思うとき   作:延長戦

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閑話休題:意地

 

あれ、こんなとこに再来週の案件の資料が出してある。来週から準備すれば間に合うのに早くないかな。誰だろう。主任かな。とりあえず様子見とくか。

 

そう思った、朝一だった。

 

同日夕方。

 

案の定、あの資料を読む主任を見つけた。まあ異動してきて慣れるの大変だろうし、早めに把握しときたいのかな。

 

「それ、やっぱり主任だったんですね。朝置いてあったから気になっていたんですけど、今から準備するんですか?」

「準備というか…、今目を通しておくと、来週からの準備打ち合わせを月曜日に出来るじゃない?だったら時間ロスなく全員が共有出来て皆仕事がスムーズになると思うし、予想外の出来事が起こっても対応する時間がある」

 

俺はシフトをすぐに確認すると、月曜日は全員出勤となっていた。

 

「確かに」

「それに、私はこの係でまだマンネリ化してないから、気になることや改善点を見つけやすいと思うのね。それが数字上の面でも、業務の効率の面でも」

 

俺は頭を打たれたような気がした。

 

「流石ですね」

 

先の予定を考えることは当たり前だけど、それを係全体の進捗状況と繋げて考えて動ける人が、未だに主任という立場であることにも驚いた。さらに、仕事の分析だってする。完璧係長クラスの仕事だ。やっぱ係長と同期なだけある。

 

「またこれ?」

 

主任は左手の掌を右手の拳でくるくる擦る動作をした。

 

「そんなこと求めてないから、ほら、仕事してきな」

 

笑顔で俺を促す主任は、今までにいない先輩だ。

 

というわけで、俺は主任の仕事配分やルーティンを観察するようになった。いつどのタイミング、シフトの状況で、どのアンケートを進めて、どれを確認して分析して、案件の締めの業務を誰に任せてという流れを逐一。

ここで公言しておくが、ストーカーではない。

そして、このタイミングでは次にこの作業をするのではないか。そんな予想のもと動くようになり、そうなれば、自分の持っている仕事が邪魔になる。

俺は振れる仕事は後輩や部下に振るようになった。そろそろ俺だって次のステップに進べきだし、何より主任ともっと上手く、効率よく仕事をこなしていけたらと、そう考えた。つまり、仕事で主任に頼ってもらいたいと思ったんだ。

俺はいつも通り後輩に仕事を振って、さっき準備してきたデータの分析の続きをしようとした。そう、主任がやろうとしてる仕事を先回りしているのだ。が、後輩の後ろには主任が立っていた。

 

「どうしたの?忙しいなら、今日はもう手が空いてるし、私が手伝うよ」

「いや、主任の手を煩わすには…」

「でもこの子は今案件抱えてるからすぐには出来ないよ?」

「…じゃあ僕がやります」

 

俺は後輩にお礼を言って、預けた資料を返してもらいその場を後にする。ああもう!上手くいかないな!主任にバレないようにさらっとこなしたいのに。こうなったら本気だす。

 

次の日、俺がいつも通りモンスターをストローで飲んでいると眠たそうな顔の主任が出勤してきて、挨拶するとすぐに事務所へ向かった。俺は少しゆっくりしてから事務所へ行った。

 

「あ!これ!」

 

主任は昨日俺が必死になって作成した分析資料を手に詰め寄ってくる。そう、わざと分かりやすい所に置いて帰ったんだ。

 

「誰が作ったの?」

「僕です。そろそろ主任が準備する頃かと思って」

 

どうだ。俺は主任の驚いた顔に心の中でガッツポーズを決めた。

 

「やるじゃん!」

 

主任はだんだんと顔が綻んでいき、さっきの眠たげな表情は消え去った。

 

「見直したよ!ありがとう!」

 

よし!

 




昨日更新のつもりが今日になってしまいました。

今回は隣に立ちたくて、頑張りを認めて欲しい後輩くんでした。
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