そうこうしているうちに、私の最終出勤日は刻一刻と近づいてくる。コロナの為大々的に送別会も出来ない。社内で酒好きで知られている私には少し寂しく感じたが、それでも、人数を絞って会を開き、私を送り出そうとしてくれる先輩や同僚、後輩達がいた。そんな中で、上司も声をかけてくれた。今の上司は同期で、本当に気の置けない奴で、何度も助けられそして助け合ってきた仲だった。
「主任の送別会、ささやかながらやっぱりしたいと思ってる。係内の社員全員ではコロナのことを考えると怖いから俺と彼とで、3人でどうかな?」
純粋に嬉しく思ったし、断る理由は何一つなかった。これで最後だと思うと尚更嬉しく、こうやって皆が温かく送り出そうとしてくれていることに本当に感謝した。そして、日程は私の最終出勤日の前日となり、コロナの影響を考えて後輩の家で宅飲みということになった。
こうして、その日までの10日間のアフターは酒に溺れる毎日となったのだった。
最終出勤日、4日前。
既に退職し、OBとなった同期が私の最後の勇姿を見届けに来てくれた。
その日の晩は勿論、同期達と飲みに行くことになった。そうなると、勿論上司兼同期も参加することとなった。
私達は久しぶりの再会に酒も箸も進み、焼き肉は完食。2軒目の話が出る。すると、上司兼同期が4人全員の会計を済ませてしまった。私達は支払おうとするが、彼は受け取らない。既に世帯を持ち、子供2人を育てる彼の自由になるお金は奥さんから支給されるおこずかいだけだ。それに、まだ3日後に係での送別会が控えている。ここでの出費はやりすぎだろう。
私は心の中では様々なことを考えたが、送別される身。でしゃばるのもお門違いだ。この日はご馳走になり、この同期達と出会えた会社に心から感謝した。
心から感謝しているが、何故か嫌な予感がした。
後日、後輩が催してくれた送別会で、私はこの話をネタとして披露してみた。話題沸騰。かつてない盛り上がりを見せた。
「退職目前とはいえ、あの人が社内で事を起こしたって信じられないですね!」
「そうなの?私はてっきり、高校で卒業間際にカップルが急増するあれだと思ってあんまり本気にしてないなあ」
「どうなんでしょ!ドライブデート気になりますね~!どこ連れて行ってくれるんでしょ!」
「ドライブなんてさ、適当に晩御飯食べて、運転してるカッコいい俺みて!とかいう雰囲気出してきて夜景見に行くだけでしょ。」
そんなくだらない話ばかりが盛り上がり、お酒がどんどん進む。
「明日ですよね?係の送別会」
私は赤ワインを煽りながら頷いた。
「係長、来ない気がします」
ありえる話だと、瞬時に場が沸き立った。
「もしかして2人グルとかありえません?」
私の嫌な予感はもしやこれか。そうなると私は1人暮らしの彼の家に送別してもらうためにのこのこ行くのか。どういう構図だ!謎過ぎる。まさかそんな。
私の不安を他所に、彼女達は進展を楽しみにしていると言って帰っていく。私の不安は積もるばかり。
なんでこんなことになったんだ。
私は跡形もなく風のようにこの会社を去って行きたいだけなのに!
何をどうしようとしても明日は来る。
ラスト2日。
私は笑顔で直行から帰社した上司兼同期に挨拶をした。
「おはよう。今朝の商談お疲れ様」
「おはよう!主任早々に申し訳ないが、今日の送別会行けそうにないわ。子どもが熱出してな。帰ってやりたい。」
まぢか。
私はマスクの中で表情を失った。
こんなこと、現実に起きるものなのか。まさかそんな!嘘だと行ってくれ!私は嵌められるのか。
「え!大丈夫?私のことは気にしないでいいからね。集まるのなんていつでも出来るし。」
「ごめんな!彼には俺から言っておくから!」
南無阿弥陀。南無阿弥陀。
予言が当たっている。人智を超えた何かが起きようとしている。
とりあえず、今日、私はどうすべきかしら?
女性って、恋愛の話になるととっても饒舌になるイメージです。
そしてプライドが高い人程、本音は言わない気がします。