彼を可愛いと思うとき   作:延長戦

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5:なかなかの勢いで流れています

私がロッカーへ行くと彼はもう退社した後で、代わりにラインが入っていた。目的地の最寄り駅改札で待っているとのことで、会社からは三駅だ。人を待たせるのが嫌いな私はすぐに紙袋2つと花束を抱えて、職場を後にしようと階段を降りると、お世話になった先輩と遭遇した。先ほど挨拶に伺った人だが、どうやら話し足りなかったようでそこで暫く話し込んでしまい、腕がもげそうになりながら約束の改札までたどり着いた。

 

「ごめんね、遅くなって」

「いえ、そんなに待ってないです。…荷物、多いですね」

「明日のほうが持って帰らないといけない備品が多いから…。これでも一番重いのは置いてきたの」

 

こればっかりは仕方ない。今日でこんなに送別品を頂いて、まだ持ち帰れないものがあるのだ。なんとしても今日頑張って持って帰るべきだ。

私はそのまま階段を上がろうとする。

 

「荷物、持たなくていいんですか?」

「ああ…、じゃあ、こっちだけお願いしようかな」

 

そこは疑問系じゃなくてスマートに持って欲しい所だなあ。私はお礼を言いつつ荷物を渡し、悪態吐いた。この子は端々に上から目線が出るのよね。特に顕著なのが自分より後輩と接している時。端から聞いてると何様かと思うことが多々あり、見つける度に注意していたがこれは性格の問題もあり、すぐには治らないだろう。

 

「先、ご飯でいいですか?」

「勿論」

「なに食べます?」

「何でもいいよ。普通の居酒屋とかないかな?」

 

彼はじゃあ…と言って私を促し、近くの居酒屋に入ることにした。そこは日本酒の種類が多く、私にはもってこいの店だった。メニューには期間限定で東北企画開催中とあり、彼も日本酒が好きと前から聞いていたため、端から順に飲めるところまで二人で飲むことにした。

仕事終わりの酒ということもあり、さくさくとお酒は進み話しも弾む。お互いほろ酔いの頃、彼は私が持ち続けて離さなかった紙袋を指した。

 

「それは誰からですか?」

「ああ、いかん忘れるとこだった。これはあんたに」

 

私が紙袋ごと彼に渡すと、彼は驚きながら、でも嬉しそうに受け取った。こういう所は素直で可愛いのよね。

 

「私からのお礼。来月から、このお酒飲んで頑張ってね。」

「嬉しいです!ありがとうございます!」

 

可愛いなあ。ほんと、来月から私の穴埋めに奔走されるだろうし、心苦しいがこれでチャラにしてくれ。

 

「私のほうこそ、この係に来てあんた達の働きのおかげで随分楽させてもらったんだよ。ありがとう」

 

そう、私は仕事上においては彼を買っていた。胡麻すりが上手いだけあって、指示を出せば水を得た魚のように動き、次第には私の先回りをして係を動かすまでになっていた。これは完全に彼の長所であり、同じことを後輩に求めるあたりは短所にも繋がる。

彼は嬉しそうに笑って日本酒を煽った。

 

オーダー分の料理を平らげると、そろそろ花見にということになった。なかなかの飲酒量に2人とも出来上がっており、店をでると彼はフラついていた。

これはチャンスだ。私は彼の背中を支えて、そして肩を持った。

 

「大丈夫?今日はだいぶ飲んだし、帰ろうか?」

 

明日は最終出勤日だ。キリッと決めて行きたいところだが、連日の送別会ラッシュでそろそろ疲れが出てきている。このまま駅に行ってさよならコースだと7時間も寝れる!と思った矢先、

 

「もう、帰りたいですか?花見、行かないんですか?」

 

肩を支えていた私の手を、彼は握りしめてきた。そしてそんなに見つめてこないで欲しい。思わず目をそらした私は内心おもいっきりたじろいでいた。

おかしいぞ。ここは帰る雰囲気の筈だ!

 

「…じゃあ、ちょっとだけね」

 

ああ、流されてしまった…。

 

「じゃあお酒買いに行きます?」

 

彼は満面の笑顔で私を見下ろしてくる。

正直に言おう。可愛い。

 

そしてこの程度で流される私はなんてチョロい女なんだ。 




書ききれなかったですけど、頂き物の開封も彼主導でやってます。お酒渡したあとぐらいかな?多分。

こんなおねだりどうですか?
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